「世界初」の称号が欲しいだけ。韓国こじつけ「5G」開始の不毛さ

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4月3日に急遽、米・韓で始まった「5G」(第5世代移動通信システム)サービス。この「5G」を世界で初めて開始したという「称号」欲しさに不毛な争いがあったと語るのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、米・韓で開始された5Gサービスに関する話題とともに、日本で今後「Apple Card」が普及するためにクリアすべき課題についても論じています。

アメリカと韓国が5G開始で不毛な「世界初」争奪戦

今週、アメリカと韓国で相次いで5Gサービスがスタートした。

当初、韓国が4月5日、アメリカが4月11日にサービス開始とアナウンスしていたが、アメリカ・Verizonが急遽、4月3日に前倒してサービスを開始。その動きを察知した韓国キャリア勢が、慌てて4月3日深夜にサービスを開始したと言い始めた。韓国は、すでにショップの営業が終わっている時間にもかかわらず、「世界初」の称号が欲しくて、無理やり深夜にイベントを開いて、5Gサービス開始をこじつけたに過ぎない。

まさに「世界初」を争う、不毛な5G開始イベントだったように思う。

日本は、3G開始のときに、NTTドコモが世界の先頭を走りすぎて、大失敗したという苦い経験がある。4G開始のときは「先頭ではなく先頭集団を走る」(NTTドコモ幹部)として、世界初を狙うことはなく、世界から置いていかれない程度の距離を保っていたが、なぜか「Xi(クロッシィ)」という意味不明なブランド名をつけるという、マーケティング的に下手をこくという、これまた失敗を犯している。

過去の教訓を活かしたというわけではないが、今回は2020年の東京オリンピック・パラリンピックに焦点を当てすぎて、免許割当でもたついている間に、世界に置いてきぼりをくらった感がある。

しかし、アメリカと韓国の5Gは、エリアや対応端末も限定的であり、サービスも通信速度が速くなっただけに過ぎない。

日本のサービス開始は2020年春であり、他の国に比べて1年近く遅れることになるが、焦る必要はないだろう。 ただ、2019年9月にプレサービスを提供した上で、商用サービス開始が1年間、遅れるのだから、日本ではしっかりと準備をした上で、5Gのサービスを始めてほしい。

いよいよ来週(4月8日の週)に、5Gの免許割当が決まるとされている。用意されている枠は10枠。3.7GHzが5枠、4.5GHzが1枠、28GHzが5枠といった具合だ。

これを楽天を含めた4キャリアで分け合うとするならば、3.7GHzと28GHzはすんなりと4社に割り当てられるのが自然な流れだろう。では、果たして、3.7GHzと4.5GHzの2枠の行方はどうなるのか。 理想を言えば、3キャリアに比べて、所有する周波数幅が極端に少ない楽天に割り当ててあげるのがいいような気がするのだが、果たして、そんな事が可能なのかどうか。 総務省がどのような采配をするのか、注目だ。

アップルが「Apple Card」で決済サービスに参入━━日本上陸する際、果たして誰がパートナーになるのか

3月25日(現地時間)、アップルが本社内にあるスティーブ・ジョブズシアターにてスペシャルイベントを開催。主に新サービスの発表を行った。

なかでも注目だったのが、決済サービス「Apple Card」だ。 ゴールドマン・サックスと組み、支払状況などを管理できるアプリを配布。バーチャルのクレジットカードだけでなく、チタン製の物理カードも発行。カードには名前のみが記載され、クレジットカード番号や有効期限などは印刷されないというシンプルなデザインとなっている。

これにより、店頭で決済した際、店員にクレジットカード番号を盗み見られる心配がない。もし、クレジットカード番号が必要なときには、アプリで確認する仕組みだ。

スペシャルイベントを現地で取材し、帰国後、決済サービスに携わっている業界関係者に「Apple Card、どうっすか」と聞いてみたが、いずれも「日本でそのまま展開するのは不可能だろう」という見解であった。

当然のことながら、アメリカは銀行がクレジットカードを発行するのに対し、日本はほとんどの場合、クレジットカード会社がカードを発行している。日本が毎月、返済するのに対し、アメリカでは自分で支払うタイミングを決めたりする。クレジットカードに関する使われ方が異なるため、Apple Cardがそのままのスキームで入ってくることは考えにくい。

しかし、業界関係者のなかには「日本の企業で、どこかアップルからの厳しい条件を飲むところが出てきてもおかしくはない」とささやく。

アップルとしては、世界の中でも日本は重要なマーケットだ。過去を振り返っても、なんだかんだでアメリカ向けのサービスは日本でも展開されている。アップルとしては、今回のスペシャルイベントはハードを新たに普及させるのは厳しくなっているからこそ、サービス面を強化するとのメッセージでもある。 

アメリカだけでサービスを展開しても、成長には限界があるわけで、世界中で、iPhone上で自社サービスを広げなくてはいけないはずだ。 アップルは日本のニーズを捉えようと、iPhoneでFeliCaを対応させてしまう会社だ。そう考えても、Apple Cardの日本上陸は、すぐとはいかないまでも、数年中にはありえる話なのではないか。

果たして、その時、アップルはどの会社と組んでサービスを提供するのか。アップルから条件を飲める会社が存在するのか、興味深いところだ。

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