鉄道や飛行機と比べて座席数が少ない高速バス。連休やお盆、年末年始などは、予約が取りづらいことが懸念されますが、発売開始日前に予約したり、キャンセル待ちを狙ったりする裏ワザもあります。

「公式予約サイト」「外部の予約サイト」「比較サイト」違いは?

 ゴールデンウイークやお盆、年末年始などの長い連休は、交通機関や宿泊施設の予約を取りづらいことが懸念されます。しかも、予約制の高速バスでは、事前に満席となってしまえば乗車できません。始発駅で早くから並べば自由席を確保できたり、立席で乗ることもできたりする鉄道とは対照的です。とはいえ、混雑する日でも高速バスを予約できる確率を上げる“コツ”はあります。


バスタ新宿。2018年のゴールデンウイーク期間中は1日最大1673便が発着した(2018年2月、中島洋平撮影)。

 毎日およそ1万5000便が運行されている高速バスのうち、所要時間がおおむね2時間を超える路線で予約制が導入されています。以前は電話予約が一般的でしたが、現在ではウェブ予約がほとんど。ただし、ひと口にウェブ予約といっても様々なサイトがあります。

 予約制路線では、バス事業者は業務用の座席管理システムを導入して予約管理を行っています。そのシステムと直結し、乗客自らがウェブ上で予約できるサービスが「公式予約サイト」と呼ばれます。老舗の「既存事業者」と呼ばれる私鉄系やJR系などの高速バス事業者では、ほとんどの路線が「発車オーライネット」「ハイウェイバスドットコム(座席管理システムの名称は「SRS」)」「高速バスネット」のいずれかを採用。ウィラーなど新しく乗合バス事業へ参入した事業者では、各社の自社(直営)サイトがそれに当たります。

 一方、「高速バスドットコム」「楽天トラベル」などのサイトは、役割が異なります。サイト自身が積極的に高速バスの需要を掘り起こし、送客実績に応じて各事業者から手数料を受け取る「外部の予約サイト(他社サイト。OTA=Online Travel Agencyともいう)」なのです。さらに、「バス比較なび」など、各予約サイトを横断的に空席検索する「比較サイト(メタサーチともいう)」も存在します。

繁忙日の予約、ほぼ確実に取る方法

 予約サイトをうまく活用し、座席を確保するコツを紹介しましょう。

「往復割引」を狙え!

 どのサイトでも、最も確実に席を確保する方法は、当然ですが予約開始直後に予約することです。予約開始日は「乗車日の〇日前」と路線ごとにバス事業者が決定し、その多くが1か月前または2か月前です。ただ、「1か月前」といっても、前月の同じ日(4月27日乗車分の予約開始は3月27日)のほか、「前月の同じ日の翌日」というケースもあるので注意しましょう。また路線やサイトによって、予約開始日の「0時」「4時」「9時」など開始時刻も異なります。

 この際、往復割引が設定されている路線では、その適用条件(「〇日以内に往復乗車。往復分を同時に予約」など)を満たせば、往路便の発売日に復路便も合わせて予約することができます。つまり、復路便が本来の発売開始日より早く予約でき、ほぼ確実に座席を確保することが可能になるのです。


バスタ新宿の発車案内(2016年9月、乗りものニュース編集部撮影)。

「公式予約サイト」には空席があるかも!

 それでは、混雑日にはどのサイトが最も予約を取りやすいでしょうか。以前はバス事業者の担当者が、「自社の予約サイト」「外部の予約サイト」それぞれに座席数を振り分けていました。そのため、予約サイトのいずれかに「売れ残り」座席もありましたが、いまではほとんどのシステムとサイトのあいだでデータ連携が行われており、各サイト上に最新の空席状況が反映されています。

 ただ、バス事業者としては、満席が確実な便を「外部の予約サイト」経由で販売すれば手数料を外部業者に支払うことになります。このため「外部の予約サイト」では、そこで販売可能な座席数の上限を設定する機能も設けられており、その機能を活用している路線では、「『外部の予約サイト』では満席だが『公式予約サイト』には席が残っている」というケースがあるのです。

 また、既存事業者の高速バス路線では複数社による「共同運行」が一般的で、普通は路線単位で座席予約システムを統一しますが、共同運行先どうしで別々のシステムを採用している例があります(長距離夜行路線の一部など)。その場合、「持ち席管理」といって、1台のバスの座席を約半分に分けて別々に管理します。バス事業者のウェブサイトから複数の「公式予約サイト」にリンクが設定されている場合がこのケースです。片方の予約サイトが満席でもあきらめずに、他方を確認すると、空席が残っていることもあります。

「キャンセル狙い」にもコツがある

「旅行の予定が決まったときには、すでにどの便も満席だった」という場合でも、払い戻し(キャンセル)の席が出ることがあり、これを狙うコツもあります。

深夜0時、早朝にサイトをチェック!

 長距離の夜行路線を中心に、発券(支払い)期限が決められている路線が存在しますが、こうした路線では、その期限日の深夜に自動キャンセルが行われ、直後に空席が生まれることがあるのです。

 支払い期限の設定は「予約後〇日以内」というケースと、「乗車日の〇日前」というケースがあり、既存事業者の「公式予約サイト」では後者を採用している路線が多めです。これは座席管理システムを導入する以前、紙の台帳で予約管理していた時代に、「乗車〇日前になって未発券(未支払い)の予約はすべてキャンセル」という運用しかできなかったことの名残り。たとえば、「発車オーライネット」は深夜にサービスを停止するので早朝のサービス再開直後、「ハイウェイバスドットコム」は24時間稼働なので、翌0時が狙い目です。

 一方、「高速バスネット」使用の路線と、ウィラーら新規参入事業者の「公式予約サイト」、ならびに楽天トラベルなど「外部の予約サイト」は、ほとんどが「予約後〇日以内に発券(支払い)しないと自動キャンセル」のパターンですので、毎日、少しずつ自動キャンセルが発生している可能性があり、地道にチェックするしかありません。自動キャンセルが行われる時間帯も、サイトごとに異なります。


左から東北急行バス「ままかりライナー」、小田急シティバス「ルミナス号」。いずれも東京〜岡山線で、繁忙日にはそれぞれの共同運行先による続行便(2号車)も運行(2019年3月、中島洋平撮影)。

キャンセルが増える「乗車日の10日前」

 新規参入事業者を中心に一部の事業者では、乗車日が近づくにつれ払い戻し(キャンセル)時の手数料が増えていきます。その手数料は国土交通省が決めた「標準運送約款」に基づき、「乗車日の10日前から運賃の20%が発生」(それ以前は100円。乗車日が近づくにつれ高くなり当日の払い戻しなら50%)というのが一般的です。したがって、10日前が近づくとキャンセルが増える傾向にあり、狙い目だといえます。JRバス各社が運行する多くの路線では、乗車日の前日より(早期購入割引乗車券の場合は11日前より)払戻手数料が、100円から一気に運賃の20%へ上がるので、同様にその直前でキャンセルが出る可能性があります。

 なお「比較サイト」は、すべての事業者、すべてのサイトの空席を一括して検索してくれるので、ふだんは大変便利な存在です。しかし、データ連携にタイムラグが発生する場合があることから、「繁忙日のキャンセル発生席」のようなわずか数席を探している場合は、空席がサイト上に反映される前に、ほかの乗客の予約が入り満席となってしまう可能性があります。やはり、「公式予約サイト」でこまめにチェックするほうが、確率は高いのです。

長〜い連休でも「お得に予約」する方法

 最近では高速バスにおいても、航空やホテルと同様に運賃が時期により変動するようになっており、繁忙日には予約を取りづらいだけではなく、運賃も高くなってしまいます。特に夜行路線の場合、乗車日を1日ずらすだけでお得な運賃で乗車できることも。できれば、予定を調整しピーク日を外して移動するのが賢い使い方だといえます。

狙い目は「連休初日の前々日」「連休の中ほど」

 連休時におけるピークは通常、昼行便であれば連休前日の18時以降と初日の午前中ですから、前日の昼間や連休初日の午後に出発する便が狙い目です。夜行便であれば、連休が始まる前の日の夜(2019年のゴールデンウイークでいえば4月26日〔金〕)がピークに当たるので、その前日か翌日ということになります。

 2019年のゴールデンウイークは10日間とあまりにも長いお休みなので、高速バスの混雑度合いに毎年と違う流れがありそうです。海外旅行では、10連休をめいっぱい活用するため、初日(4月27日〔土〕)に出国し、最終日かその前日(5月6日〔月〕か5日〔日〕)に帰国する人が多くを占めます。しかし、高速バスを使って国内で旅行や帰省をする場合、通常は旅行期間がさほど長くありません。なるだけ連休の中ほどで往復するようにすれば、比較的容易に、またお得に予約できる見込みです。

 特定の日に移動が集中すると、鉄道や航空に比べ座席数が少ない高速バスは、早々に満席になるという傾向があります。しかし2019年のゴールデンウイークは、休みが長いぶん、特に復路のピーク(Uターンラッシュ)が分散しそうです。例年のゴールデンウイークや通常の3連休などに比べると、日程には多くの選択肢がありますから、各予約サイトで空席状況や運賃を確認すれば、上手に旅行や帰省を楽しむことができるでしょう。

【図】高速バス関連の予約サイトは3種類に大別


予約サイトには自社予約サイトと外部の予約サイトがある。比較サイトはバスの情報を提示し、様々なサイトに送客する(乗りものニュース編集部作成)。