仏パリで写真撮影に応じる中国人亡命作家の廖亦武氏(2019年4月2日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】中国・北京の天安門広場(Tiananmen Square)で1989年に起きた「天安門事件」をテーマに「大虐殺(Massacre)」と題した詩を発表して投獄された、詩人で作家の廖亦武(Liao Yiwu)氏(60)が5日、AFPのインタビューに応じ、祖国・中国は「世界全体にとって脅威」であるため、分裂する方が人類のためになるとの考えを語った。

 反体制派の作家として、「中国のアレクサンドル・ソルジェニーツィン(Alexander Solzhenitsyn)」の異名を取る廖氏は、自分の夢は中国が「10ほどの国々に分裂」することだと語り、「今日の中国は、世界全体にとって脅威になっているからだ」と説明した。

 フランスで刊行された廖氏の最新作「銃弾とアヘン(原題:Bullets and Opium)」は、北京での民主化運動の最中、軍隊によって大勢の人々が殺された1989年の事件の際、犠牲になった人々の詳細を記した作品。だが天安門事件の大虐殺は中国では大きなタブーとされ、同作も発禁処分を受けている。

 2011年以降、独ベルリンで亡命生活を送り、音楽家でもある廖氏は、「中国に帰国すること自体にはそれほど関心はない。(だが)故郷の四川(Sichuan)省には帰りたい。四川省が独立したときに。それなら喜んで帰郷する」と話す。

 中国の貧困層の生活を伝える著作を持つ廖氏は、人権団体によれば、刑務所の中で拷問を受け、釈放に際しても警察からの嫌がらせを受けた。獄中生活について記した「証言(原題:Testimonials)」は、ソルジェニーツィンの作品「収容所群島(The Gulag Archipelago)」にも例えられ、中国の民主活動家でノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)受賞者でもあり、2017年に警察の留置下で末期がんにより亡くなった劉暁波(Liu Xiaobo)氏にも称賛された。

■祖国について「非常に悲観」

 習近平(Xi Jinping)国家主席の権威主義的支配が強まる祖国については、「非常に悲観している」と廖氏は言う。

「30年前、私たちは(中国は)民主化に向かっていくかもしれないと考えた。だが今は金もうけのことばかりだ。「(天安門で)大虐殺が起きた後に中国を非難した欧米諸国が今では皆、あのときの死刑執行人たちと商売するため、互いに争っている。市民の逮捕と殺害は今も続いているにもかかわらずだ」

 廖氏は、習主席の娘や、中国共産党指導部の子女が米ハーバード大学(Harvard University)に留学していることを皮肉り、「良心の呵責(かしゃく)がある人々は脇に追いやられ、党を批判せずに金もうけをしている人々はやりたい放題だ」と話す。

 だが、天安門事件は中国の近代史において大きなターニングポイントとなったと廖氏は主張。「私にとって、全国民にとって、大変動となる瞬間だった」

 人権団体は、北京を取り囲むために人民解放軍の兵士20万人が動員された後で犠牲になった人々の数は2600〜3000人と推計。また2017年に機密指定を解除された英国の外交公電では当初で、死者は1万人前後に上ると推測されていたことが明らかになった。

 このとき、人民解放軍の戦車の前に立ちはだかり、平和的な抗議活動のシンボルとなった若い男性について廖氏は、「今も彼の名前も、その運命も分かっていない」と述べた。

「中国では、あの大虐殺のことを口にできない。タブーとされている。私は何とかして、あのときに起きた真実をできるだけ多くの人に知ってもらおうとしている」

【翻訳編集】AFPBB News