ASUS最新スマホに電波法違反の恐れ ZenFone Max Pro(M2)が製品回収(石野純也)
ASUSが、3月15日に発売していた「ZenFone Max Pro(M2)」の出荷を停止しました。すでに購入しているユーザーには、交換もしくは返品の対応を取るとのこと。利用者は、ASUSコールセンター(03-5642-2688)もしくはサポートサイトに問い合わせることをオススメします。ASUSでは、交換もしくは返品は必須と呼び掛けており、事実上の回収に近い状況といえそうです。
▲ZenFone Max Pro(M2)に不具合が発覚、販売を停止した
ASUSが交換・返品を呼び掛けているのは、実機の対応バンドが、本来予定していたものと異なっていたためです。原因は本来と別のパーツが組み込まれてしまっていたことで、ハードウェアに由来するため、ソフトウェアアップデートでは修正ができません。結果として、広範な周波数帯が利用できなくなっています。
具体的には、未対応のバンドは、FDD-LTEのB2/B4/B12/B17/B18/B19/B28と、TD-LTEのB38/B41。3GはBII/BIV/BVI/BXIXが利用できない状態になっていました。3キャリアで利用されるLTEのB1などには対応しているため、通信自体はできましたが、上記の抜けがあると大きな問題も生じてしまい、端末の魅力も半減してしまいます。
▲中国の工場で組み込まれたパーツが実際のものとは異なっており、幅広い周波数帯が利用できなくなっていた
特に影響が大きいのが、LTEのB18とB19。前者はauの800MHz帯、後者はドコモの800MHz帯で、いわゆる「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯域になります。各社とも、その他のバンドも使ってエリアを拡充しているため、都市部だと電波が入ってしまい、気づきにくいかもしれませんが、逆に地方や山間部だと、800MHz帯に頼っているエリアも増えてきます。
そのため、ZenFone Max Pro(M2)を持って地方に行くと、最悪の場合、電波が入らないという事態になることが想定されます。データ通信ができないだけならまだしも、ZenFone Max Pro(M2)はVoLTEにも対応しているため、特にauやそのMVNOのSIMカードを使っていた場合、音声通話まで不通になってしまいます。SIMフリースマホ黎明期にはそんな端末がなかったわけではありませんが、2019年現在では、さすがにこれを受け入れることはできません。
▲ドコモのエリアマップ。薄紫がB19の800MHz帯を使うエリアで、ZenFone Max Pro(M2)が圏外になってしまう可能性がある
また、B41はいわゆるTD-LTEで、日本ではUQコミュニケーションズがWiMAX 2+、Wireless City PlanningがAXGPとして展開している周波数帯になります。前者はauが、後者はソフトバンクがMVNOとして借り受けており、WiMAX 2+に関しては、auを介する形でau系のMVNOでも利用できます。
このB41は、2.5GHz帯で、800MH帯より高く、エリアが狭い代わりに収容端末が少なくなり、さらに帯域幅も広いため、通信速度が速いという特徴があります。都市部のように混雑するエリアで、この周波数が重宝されるのはそのためです。ZenFone Max Pro(M2)は、このB41に未対応だったため、人口密集地で十分な速度が出ない可能性もあります。
▲人口密集地をカバーし、高速化に役立つB41にも未対応だった。画像はUQコミュニケーションズのエリアマップ
単に電波が入らない、速度が出ないというわけならまだいいのですが、この端末をそのまま使用し続けていると、法令に違反してしまうおそれもあります。ASUSもこれを理由に、冒頭で述べたとおり、端末の使用中止を呼び掛けています。端末には技適マークを表示することができるため、一見すると合法のようにも見えますが、これは間違い。
スマートフォンのような製品向けの技適は1台1台全数検査して取得しているわけではなく、「工事設計認証」や「技術基準適合証明」と呼ばれる方式を採用しています。前者は、端末ごとに設計図などとサンプルを使って検査をする仕組みのこと。後者は全数でない場合、サンプル調査が必要になります。技適を取得した際には、本来出荷する予定だったモデルを使っていたため、こうした試験をパスできたわけです。
逆にいえば、実際に販売されたパーツを誤って組み込んだ製品は、本来同一型番で扱うものではなく、技適を取っていないということを意味します。提出した設計図やサンプルと、中身が違うものを出荷していたのはNG。意図的ではないにせよ、その製品に技適マークを表示するのは、厳しくいうと虚偽になってしまいかねません。
電波法違反に問われるのはあくまで使用者になるため、ASUSとしては、交換・返品を受け付ける必要があるというわけです。なお、ASUSに確認したところ、現時点では総務省から何らかの指摘があったわけではなく、自主的な判断でこのような対応を取っているとのこと。
ただ、過去には総務省からのお叱りがあったケースもあります。直近では、ソースネクストの「ポケトークW」が国内利用の認められていないWi-Fiの周波数を出したとして、総務省から厳重注意を受けています。今回の事態が判明したのが4月1日だったため、現在は対応を検討中とのことですが、今後、総務省に対しては何らかの報告が必要になってくるかもしれません。
▲電波法に違反すると、総務省からおしかりを受けることも......。
ASUSにとって、このタイミングでZenFone Max Pro(M2)が販売できないのは、打撃になりそうです。というのも、同モデルは、春商戦で同社の売れ筋になっていたからです。3月15日と春商戦の終盤に発売されたZenFone Max Pro(M2)でしたが、Snapdragon 660を搭載しながら、価格は3万後半と、コストパフォーマンスのいい製品に仕上がっていました。
▲SIMフリースマホ市場で好調だったZenFone Max Pro(M2)
▲バッテリーが大容量なだけでなく、AIに対応したカメラを搭載するなど、過去のMaxシリーズよりバランスがよくなっていた
ミドルハイのZenFone 5が昨年5月に登場してから、久々のど真ん中を狙える端末で、価格もZenFone 5より抑えていたため、反響も大きかったといいます。実際、家電量販店などでは人気が高く、BCNランキングの日次集計データによると、発売日を含む3月11日から17日のランキングでは、ZenFone Max Pro(M2)がSIMフリーモデルでは1位に輝いていました。翌週の3月18日から24日も5位をキープしており、売れ筋になっていました。
▲3万円台後半ながら、Snapdragon 660を搭載し、コストパフォーマンスが高かった
この価格帯ではファーウェイの「P20 lite」が強く、SIMフリー市場でシェア2位のASUSが一矢報いた格好ですが、まさかの不具合と販売停止で、自滅してしまった感が否めません。ASUSによると、販売の再開は、交換の対応を済ませたあと、早ければ4月下旬を予定しているとのことですが、約1カ月の販売停止は、かなりのダメージ。販売数の多い3月分の一部が返品になる可能性もあるため、手痛い失敗といえそうです。
▲ZenFone Max Pro(M2)に不具合が発覚、販売を停止した
具体的には、未対応のバンドは、FDD-LTEのB2/B4/B12/B17/B18/B19/B28と、TD-LTEのB38/B41。3GはBII/BIV/BVI/BXIXが利用できない状態になっていました。3キャリアで利用されるLTEのB1などには対応しているため、通信自体はできましたが、上記の抜けがあると大きな問題も生じてしまい、端末の魅力も半減してしまいます。
▲中国の工場で組み込まれたパーツが実際のものとは異なっており、幅広い周波数帯が利用できなくなっていた
特に影響が大きいのが、LTEのB18とB19。前者はauの800MHz帯、後者はドコモの800MHz帯で、いわゆる「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯域になります。各社とも、その他のバンドも使ってエリアを拡充しているため、都市部だと電波が入ってしまい、気づきにくいかもしれませんが、逆に地方や山間部だと、800MHz帯に頼っているエリアも増えてきます。
そのため、ZenFone Max Pro(M2)を持って地方に行くと、最悪の場合、電波が入らないという事態になることが想定されます。データ通信ができないだけならまだしも、ZenFone Max Pro(M2)はVoLTEにも対応しているため、特にauやそのMVNOのSIMカードを使っていた場合、音声通話まで不通になってしまいます。SIMフリースマホ黎明期にはそんな端末がなかったわけではありませんが、2019年現在では、さすがにこれを受け入れることはできません。
▲ドコモのエリアマップ。薄紫がB19の800MHz帯を使うエリアで、ZenFone Max Pro(M2)が圏外になってしまう可能性がある
また、B41はいわゆるTD-LTEで、日本ではUQコミュニケーションズがWiMAX 2+、Wireless City PlanningがAXGPとして展開している周波数帯になります。前者はauが、後者はソフトバンクがMVNOとして借り受けており、WiMAX 2+に関しては、auを介する形でau系のMVNOでも利用できます。
このB41は、2.5GHz帯で、800MH帯より高く、エリアが狭い代わりに収容端末が少なくなり、さらに帯域幅も広いため、通信速度が速いという特徴があります。都市部のように混雑するエリアで、この周波数が重宝されるのはそのためです。ZenFone Max Pro(M2)は、このB41に未対応だったため、人口密集地で十分な速度が出ない可能性もあります。
▲人口密集地をカバーし、高速化に役立つB41にも未対応だった。画像はUQコミュニケーションズのエリアマップ
単に電波が入らない、速度が出ないというわけならまだいいのですが、この端末をそのまま使用し続けていると、法令に違反してしまうおそれもあります。ASUSもこれを理由に、冒頭で述べたとおり、端末の使用中止を呼び掛けています。端末には技適マークを表示することができるため、一見すると合法のようにも見えますが、これは間違い。
スマートフォンのような製品向けの技適は1台1台全数検査して取得しているわけではなく、「工事設計認証」や「技術基準適合証明」と呼ばれる方式を採用しています。前者は、端末ごとに設計図などとサンプルを使って検査をする仕組みのこと。後者は全数でない場合、サンプル調査が必要になります。技適を取得した際には、本来出荷する予定だったモデルを使っていたため、こうした試験をパスできたわけです。
逆にいえば、実際に販売されたパーツを誤って組み込んだ製品は、本来同一型番で扱うものではなく、技適を取っていないということを意味します。提出した設計図やサンプルと、中身が違うものを出荷していたのはNG。意図的ではないにせよ、その製品に技適マークを表示するのは、厳しくいうと虚偽になってしまいかねません。
電波法違反に問われるのはあくまで使用者になるため、ASUSとしては、交換・返品を受け付ける必要があるというわけです。なお、ASUSに確認したところ、現時点では総務省から何らかの指摘があったわけではなく、自主的な判断でこのような対応を取っているとのこと。
ただ、過去には総務省からのお叱りがあったケースもあります。直近では、ソースネクストの「ポケトークW」が国内利用の認められていないWi-Fiの周波数を出したとして、総務省から厳重注意を受けています。今回の事態が判明したのが4月1日だったため、現在は対応を検討中とのことですが、今後、総務省に対しては何らかの報告が必要になってくるかもしれません。
▲電波法に違反すると、総務省からおしかりを受けることも......。
ASUSにとって、このタイミングでZenFone Max Pro(M2)が販売できないのは、打撃になりそうです。というのも、同モデルは、春商戦で同社の売れ筋になっていたからです。3月15日と春商戦の終盤に発売されたZenFone Max Pro(M2)でしたが、Snapdragon 660を搭載しながら、価格は3万後半と、コストパフォーマンスのいい製品に仕上がっていました。
▲SIMフリースマホ市場で好調だったZenFone Max Pro(M2)
▲バッテリーが大容量なだけでなく、AIに対応したカメラを搭載するなど、過去のMaxシリーズよりバランスがよくなっていた
ミドルハイのZenFone 5が昨年5月に登場してから、久々のど真ん中を狙える端末で、価格もZenFone 5より抑えていたため、反響も大きかったといいます。実際、家電量販店などでは人気が高く、BCNランキングの日次集計データによると、発売日を含む3月11日から17日のランキングでは、ZenFone Max Pro(M2)がSIMフリーモデルでは1位に輝いていました。翌週の3月18日から24日も5位をキープしており、売れ筋になっていました。
▲3万円台後半ながら、Snapdragon 660を搭載し、コストパフォーマンスが高かった
この価格帯ではファーウェイの「P20 lite」が強く、SIMフリー市場でシェア2位のASUSが一矢報いた格好ですが、まさかの不具合と販売停止で、自滅してしまった感が否めません。ASUSによると、販売の再開は、交換の対応を済ませたあと、早ければ4月下旬を予定しているとのことですが、約1カ月の販売停止は、かなりのダメージ。販売数の多い3月分の一部が返品になる可能性もあるため、手痛い失敗といえそうです。