H&M(18年11月期)に続いてインディテックス(19年1月期/ZARAが主力)も18年度決算を発表したが、インディテックスが既存店も伸びて増収増益だったのに対し、H&Mは増収ながらも既存店割れで減益と明暗が割れた。今期のみならずファストファッションが絶頂期だった10年度からの推移で見ると、両者の明暗は一段と開く。

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18年度決算に見る明暗 

 H&Mは総売上げが5.2%増の2104億クローネ(2兆6900億円/1SEK=12.8円)だったが、EC売上げ300億クローネを差し引いた店舗売上げと店舗数の伸び率から推計した既存店売上げは96と4期連続で前年を割った。商品回転は2.79回と前期から0.02回低下しているから過剰在庫が解消されたわけもなく、荒利益率も52.7%と同1.3ポイント低下し、経費率は同1.6ポイント上昇して営業利益率は7.4%と同2.9ポイント低下した。

 

 インディテックスの総売上げは3.1%増の261億5000万ユーロ(3兆4100億円/1EUR=130.4円)と伸び率はH&Mを下回ったが、EC比率の高い欧米で不採算店を閉店するなど店舗布陣の効率化を進めたためで(H&Mの229店増に対し15店増)、既存店売上げの伸び率は104とH&Mを8ポイントも上回る。商品回転は4.20回と前期から0.03回低速化したもののH&Mより1.5倍も速い。荒利益率は56.7%と同0.4ポイント上昇したが経費率が0.7ポイント上昇し、営業利益率は16.7%と同0.3ポイント低下してもH&Mより9.3ポイント、2.26倍も高い。

 

 ファストファッションといいながら、22%伸びて売上げの14.5%を占めるECに救われても、H&Mの商品回転は2.79回と在庫消化の限界を割っている。インディテックスを上回る店舗網の整理が必要なはずで、18年11月期の売上伸び率は増店による無理な水増しだったと推察される。インディテックスもECが27%伸びて売上げの12%を占めるが、EC注文の店在庫引き当てや店出荷が本格化するのは今期からで、前期は在庫回転の底上げ効果は限られたと思われる(店発注のSMIを基本とするインディテックスはEC向けDC在庫と店舗在庫を分離している)。

 在庫回転は売上原価を期首期末の在庫平均で除したものだから、在庫の計上手法によって大きく振れる。事実、国内ユニクロは17年8月期まで店舗在庫(国内倉庫から出荷した時点)だけの計上だったから上振れていたが、18年8月期から国内倉庫在庫まで含めた(海外から国内倉庫に到着した時点)計上に変更したため坪当たり在庫が2.4倍に膨らみ、計算上の在庫回転は17年8月期の4.91回から18年8月期は2.17回に急落している。

 インディテックスは「スルー物流」でEC向けを除けば本国も各国もDC在庫を持たないが、H&Mやユニクロは「ダム型物流」でDC在庫の比率が高く、H&Mもユニクロも店頭在庫の1.5倍程度を消費地DCに積んでいると推計される。SPAの場合、商社経由と直貿、製品買い上げと工賃払いで計上のタイミングや項目が異なり、インディテックスでは製品在庫/仕掛かり在庫/原材料在庫と分けて計上しているが、H&Mの場合は決算書にその明記がない。

格差は加速度的に開いていった

 ファストファッションがピークだった10年度からの推移を比較すれば、両者の格差が加速度的に開いていったことが分かる。

 8年間でH&Mの売上げは1.94倍、インディテックスの売上げは2.09倍と大差ないように見えるが、この間にH&Mの店舗数が2.25倍に増えたのに対し、インディテックスの店舗数は1.48倍にしか増えていない。この間にH&Mの1店当たり売上げが14%減少したのに対し、インディテックスの1店当たり売上げは41%も増えている。

 既存店売上げもこの間、インディテックスが1期も前年を割ったことがないのに対してH&Mは6期も前年を割っているから、H&Mが効率を落とす無理な増店で売上げを伸ばしてきたことが分かる。郊外SC店舗を増やして売上げを積み増してきた日本国内H&Mではさらに顕著で、この8年間に坪販売効率は半減してユニクロの4掛けまで落ちている。

 在庫消化を推計できる在庫回転と荒利益率は、この間にH&Mの在庫回転が3.70回から2.79回と25%減速し、荒利益率も62.9%から52.7%と10.2ポイント低下したのに対し、インディテックスは4.62回から4.20回と9%の減速に抑え、59.3%から56.7%と2.6ポイントの低下に留めている。H&Mの期末在庫はこの間に3倍近く肥大しており、売上対比でも1.5倍に積み上がっている。

 H&Mの営業経費率がこの間に40.2%から45.3%と5.1ポイントも肥大し、営業利益率が22.7%から7.4%と15.3ポイントも下落したのに対し、インディテックスの営業経費率は41.0%から40.0%と1.0ポイント改善され、営業利益率は18.3%から16.7%と1.6ポイントの低下に抑えている。

 前期の売上げが300億SEK(3840億円)に達したH&MのECはフルフィルが多地域に分散しているとはいえ営業経費率は店舗販売の半分程度に収まっているはずで、14.5%というEC比率から全体の営業経費率を3ポイント強引き下げていると推計される。ならば店舗販売の営業経費率は48.5%程度と経費倒れ寸前まで悪化しており、営業利益率は4%強まで落ちているはずだ。それはEC売上げが32億EUR(4170億円)に達したインディテックスとて同様で、12.0%というEC比率から全体の営業経費率を2.5ポイント程度引き下げていると推計される。ならば店舗販売の営業利益率は14%強ということになるが、H&Mより10ポイントも高い。

両者の格差は縮まらない

 今後、EC比率を高め、C&Cなオムニコマース体制を確立していけば在庫効率も営業経費率も改善されていくと期待されるが、両社の格差が縮まることはないだろう。それは店舗運営の経費率と在庫の消化回転というベースの格差が縮まらないからだ。その背景には、タイトな需給均衡を図って調達ロットを抑え、DCに在庫を積まないスルー物流に徹するインディテックス、調達原価抑制を優先する大ロット調達でDCに在庫を積み上げるダム型物流のH&M、というビジネスモデルの根源的違いがある。

 両社のEC比率が30%まで拡大した場合の営業経費率を推計してみたが、両社の格差は前期の5.3ポイントから6.0ポイントとむしろ開いてしまう。荒利益率の格差4.0ポイントも縮まる要素は見当たらないから、前期の営業利益率格差9.3ポイントは10ポイント以上に開いていくのではないか。

 EC比率を高め、C&Cを推し進めても、AI装備で店舗運営を効率化しても、サプライとロジスティクスの基本体制の格差は埋まらない。収益力とキャッシュフローの格差もデジタル投資のスピードに響くから、デジタル化でも逆転はあり得ないだろう。デジタル化以前のアナログな事業体制の優劣がどれほど決定的なものか、両者の格差は物語っているのではないか。