新卒採用面接で企業の採用担当者が悪い印象を抱く学生にはどのような共通点があるのだろうか(写真:polkadot/PIXTA)

今年は4月30日に天皇の退位、5月1日に新天皇の即位があり、4月27日から5月6日まで10連休になる。新卒採用にも影響が出て、4月の採用日程は慌ただしいものになり、面接を実施する企業は例年以上に増えるだろう。

そこで4月に入る前の段階で、自分の面接について点検してもらいたい。まず知ってもらいたいのは、「どんな学生が面接で落とされるのか」である。HR総研が採用担当者を対象に、昨年12月に実施した「新卒採用に関する動向調査」の中から、「悪い意味で印象に残っている学生」についてのコメントから、落とされる原因を見ていきたい。

こんな学生は落とされる

面接の定番質問は、志望動機、自己PR、ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)だが、最も重要なのは志望動機である。


志望動機の形成には、業界研究+職種研究 → 業種・職種の絞り込み → 企業研究 → 志望企業選び、というプロセスがある。

この過程の中でそれぞれの学生の志望動機が練り上げられていく。その思いを面接で語ればいいのだが、できない学生が多い。

「業界、職種に対する理解が低い」(従業員数301〜1000人・商社・流通、以下人数は従業員規模を表す)

「企業研究不足」(1001人以上・メーカー)

「志望動機が甘く、どの会社にも当てはまる回答の学生」(300人以下・情報・通信)

「当社志望度の低い学生。受験している業界がまったくバラバラな学生」(301〜1000人・メーカー)

「とりあえず就職活動をしているように見える学生」(1001人以上・サービス)

これらの学生は面接ですぐに落とされる。業界研究、企業研究が足りないので、自分独自のストーリーが話せないからだ。

面接では志望の強さも確認される。エントリーしている他社の選考状況を聞かれ、「内定が出たらどうするか」といった質問もある。

正直な学生は口ごもり、目が泳いでしまうかもしれない。なかには「御社は第1志望ではありません」と口走る学生もいるだろう。正直は美徳だが、こういう学生が内定を得るのは難しい。企業が抱える採用課題の1つに「内定辞退」があり、そういうリスクのある学生を避けたいと考えているからだ。

面接で当社への入社意思が5割以下と発言されると、正直採用しにくい」(300人以下・サービス)

「自社が第1志望でない場合に、それを素直に言ってしまう。または、態度で表してしまう学生」(300人以下・情報・通信)

これらの質問に対して明確な意思を示す必要はない。なぜなら「〇〇になったらどうするか?」という仮定の質問だからだ。仮定の質問に対しては「いま一生懸命就職活動をしており、内定をもらったことがないのでわかりません」くらいの回答でいいはずだ。

準備不足で回答がずれている学生

面接は質問と回答で成立する会話である。会話はキャッチボールに似ており、一定のテンポで進行する。ところが、会話が成立しない学生がいる。面接官の質問を正しくキャッチできないので、トンチンカンな方向に言葉を返してしまう。

「質問内容に対しての回答内容がずれている、または自信なく曖昧な回答が多い」(300人以下・金融)

「こちらの質問に対し、回答がずれている学生や、礼儀に難のある学生」(1001人以上・情報・通信)

「こちらからの質問に対して、ズレた回答をする学生。自分の学んだことに拘泥しすぎる学生」(301〜1000人・商社・流通)

回答がずれる原因は焦りや上がり、慣れない面接で落ち着きを失っていることなどが考えられる。しかし、人事のコメントを読むと、そういう心理面の動揺ではなく、就活の準備不足が大きな原因のように思える。

社会人に必要な能力は、主体性、規律性、ストレスコントロールとさまざまだ。しかし、「働く」ことは、つねに人と一緒に行動することだから、根底にあるのはコミュニケーション力と言ってもいいだろう。面接官は学生との面接を通じてコミュニケーション力を測っている。

学生のコミュニケーション力が高ければ、面接ルームは快活な雰囲気に包まれる。反対にこの能力が低いと評価の対象から外される。

「コミュニケーション力が低い。人柄が悪い。暗くて、後ろ向き。企業・業界研究が甘い」(300人以下・マスコミ・コンサル)

「話が長いだけで、中身が伝わってこない」(301〜1000人・メーカー)

「簡潔・明瞭に話せない(コミュニケーション能力不足)。自分自身が成長していきたいという、成長意欲が乏しい」(1001人以上・情報・通信)

コミュニケーション力は総合的な能力なので、筋トレと違って、それ自体を鍛えるのは簡単ではない。相手の話をよく聴き、内容を理解し、相手の立場を自分の立場に置き直して考え、言葉を見つけなくてはならない。

しかし、上記のコメントに挙がった学生は主体性に欠け勉強不足だといえる。ダラダラと話し、適切な語彙が使えない。コミュニケーションの基本ができていないので落とされる。

面接官の重要な評価ポイントに「意欲」というのがある。意欲のある人物は、物事に主体的に取り組み、目的を立てて行動しようとする。こういう人材は入社後にリーダーとして成長できると見ている。面接官はそれを自己PRやガクチカの内容を聞いて判断する。そして、受け身の学生は落とされる。

「打ち込んできた事がない。自信を持っていない。前向きでない。具体的な働き方がイメージできない。やりたいことがない」(1001人以上・メーカー)

「特に何かに打ち込んだ事のない学生。サークル等の代表や役職に就いたというだけで、そこから具体的な本人の取り組みが感じられない学生」(1001人以上・メーカー)

人事コメントに「具体的」という言葉が使われているが、「〇〇をやってきました」だけでは評価されない。やったことで何が得られたのかを具体的に語る必要がある。

ウソの自分は見抜かれる

人事は演技が見え透いた学生を評価しない。見え透いた学生を形容する言葉はたくさんある。「作る」「ウソをつく」「盛る」「過剰」は誇大強調タイプ。「想定問答」「暗記」「抽象的」「無反応」などは三文役者タイプ。どちらもすぐに見抜かれる。

「作った自分しか見せない学生」(300人以下・マスコミ・コンサル)

「嘘・大げさ、作られた受け答え、自信過剰」(300人以下・サービス)

「ウソとわかるはったりをかましてくる」(301〜1000人・メーカー)

これらは誇大強調タイプ。自信たっぷりな学生は、少しくらい話を盛ってもばれないと思っているだろうが、話の盛り方にはパターンがあるので見破るのはそれほど難しくない。

「暗記した内容をそのままそらんじる学生」(1001人以上・メーカー)

「反応が薄い、横柄な態度。面接のときだけよい印象を取り繕う学生」(1001人以上・メーカー)

「通り一遍の決まった回答しかできない学生」(301〜1000人・サービス)

キャリアセンターでの模擬面接の影響なのか、面接の正解はマニュアルだと信じ、そのマニュアルどおりに演じれば好感、高評価を得られると誤解している学生がいる。こういう学生に遭遇すると、面接官はとても退屈になる。下手な役者が演じる舞台を見ているようなものだからだ。

問答に個性がなければ評価されないが、学生がそのレベルに達するには経験が必要だ。

「身だしなみが整ってない」ことも、多くの人事が印象の悪い学生の特徴として挙げている。


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もしかすると学生は「身だしなみ」という言葉の意味を理解していないかもしれない。「身だしなみ」は身の回りに関する心がけを指しており、キャリアセンターで指導する服装やマナー、姿勢、言葉づかいのすべてを含んでいる。

身だしなみは相手に与える印象に強い影響を与える。清潔で健康そうな身だしなみとは、髪や服装だけでなく、表情、声質、話し方も含んでいる。

「身だしなみが整っていない。話がだらだら長く、要点をまとめていない。元気、覇気がない。志望動機が明確でない」(301〜1000人・メーカー)

「姿勢が悪い。面接官に目線を合わせない。質問に対して、自分の考えを簡潔にわかり易く説明できない。志望動機が曖昧」(301〜1000人・メーカー)

「ロジカルに話せない。声が小さい。企業研究が不足している(志望動機が曖昧)」(301〜1000人・メーカー)

コメントにあるとおり、身だしなみが整っていない学生は、おどおどした自信のない印象を与えてしまう。そして、声は小さく、志望動機も曖昧だ。面接官の中にはこういう学生に対して「かわいそう」という感想を漏らす人もいるが、面接を通過させることはない。

無断欠席と遅刻は絶対NG

人事が評価しない学生のタイプを紹介してきたが、絶対にNGなのは無断欠席(キャンセル)であり、かなりアウトに近いのは無断での遅刻である。人事関係者は感情コントロール能力に長けていることが多いが、こういうマナー違反に対する批判ワードは短く、その短さに怒りを感じる。

「無断欠席」(300人以下・マスコミ・コンサル)

「遅刻、キャンセル」(300人以下・情報・通信)

なぜ人事が怒るのか。面接では人事以外の部署の部課長や取締役も登場する。無断欠席があるとそういう役職者に迷惑をかけるので、無礼な学生を怒るわけだ。もっとも欠席した学生も覚悟はできているはずだが、行けないなら行けない旨の連絡をするのが礼儀である。事前に連絡さえすれば、別日程に組み替えてもらえることだってある。

遅刻は無断欠席に比べると罪は軽いが、面接の順番や時間を狂わせてほかの学生にも迷惑をかける。いまはスマホで簡単に連絡が取れる。数分程度の遅刻でも連絡するのが礼儀だと思う。

こうした採用担当者のコメントを参考にしながら、「悪い印象を与えない面接」を心がけてほしい。