by NASA's Marshall Space Flight Center

ブラックホールを利用して別次元や他の時空へ移動する「超空間旅行」は、2019年時点ではまだ創作の中にしかありえない話ですが、研究により、実現の可能性が増加しているそうです。

Rotating black holes may serve as gentle portals for hyperspace travel

https://theconversation.com/rotating-black-holes-may-serve-as-gentle-portals-for-hyperspace-travel-107062



マサチューセッツ大学ダートマス校の物理学教授であるGaurav Khanna氏は、ブラックホールを利用した超空間旅行について、「炎の近くに手をかざすと熱いけれど、手を素早く動かせば熱があまり気にならないのと同じように、ブラックホールを通過して反対側に出られる可能性はある」と説明しました。

Khanna教授は同僚のLior Burko准教授とともに20年以上にわたってブラックホール物理学を研究してきました。そんなKhanna教授の教え子であるCaroline Mallaryさんは、クリストファー・ノーラン監督による映画「インターステラー」を見て、マシュー・マコノヒー演じる宇宙飛行士・クーパーは、どうやって作中に登場する巨大ブラックホール「ガルガンチュア」の奥深くまで落ちても生き残れたのかということを考えました。

タイムトラベルの理論自体は、20年前に物理学者のAmos Ori氏が提唱していたため、Mallaryさんはその理論をベースとして、宇宙船が巨大ブラックホールに飲み込まれたときのコンピューターモデルを作成しました。

Mallaryさんの研究でわかったのは、回転するブラックホール(カー・ブラックホール)に落ちた物体は「事象の地平面」を通過したとしても影響を受けることはないということでした。以下のグラフは回転するブラックホールに落ちた宇宙船が受ける物理的な負荷を示したもの。左上に挿入されているグラフは一部分を大きく拡大したもので、ブラックホールに近づくにつれて負荷は劇的に増大するものの、無限に増大するわけではないため、宇宙船とその乗組員は無事旅を続けられるとのこと。



by Khanna/UMassD

ただし、このシミュレーションは条件をかなり単純化していて、完全に独立したブラックホールを想定した内容となっています。実際には近くにある星や放射線源などによって環境が乱れるため、Mallaryさんにはより現実的な条件下の場合の研究が期待されています。