毎回さまざまなビジネス戦略を紹介してくださる無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の著者で人気コンサルタントの佐藤きよあきさん。今回佐藤さんは、メディアでも話題となる「一斉休業」の裏を深読みするとともに、既存のイメージをがらりと変えることに成功したとある企業の試みを記しています。

「一斉休業」の裏を読む

スシローに続き、しゃぶしゃぶの「木曽路」が、2日間の一斉休業を実施するようです。働き方改革の一環として、従業員がゆっくりと休むことができるようにする、というのが主旨です。

消費者もこうした動きには理解を示しています。

しかし、私は裏を読んでしまいます。

従業員が休みを取りやすくするためなら、従業員を増やせば良いこと。数が多ければ、働く環境としても改善されるはず。ところが、お店の休業というカタチで、待遇を改善しようとしています。

人材が集まらないという現実問題はありますが、本当の理由は別にあります。人件費の増大は、経営面からみて非常に厳しいものなので、たとえ休業分の損失が出たとしても、そちらの方が得策なのです。

休業は1年に1回程度の一時的なもの。継続的な人件費に比べれば、“小さな損失”なのです。しかも、消費者からは「従業員を大切にしている企業だ」という印象を持たれます。

従業員の確保が難しくなっているという現況からすると、休業も仕方のないことですが、従業員が多く、休みが取りやすい環境なら、人材も集まると思うのですが…。

変貌するフェリー

フェリーと言えば、どんなイメージをお持ちでしょうか。

車ごと海上を移動する手段。トラック運転手がたくさん乗っている。エンジン音のうるさい船室で、大勢が雑魚寝。“船旅気分”はないものの、安く目的地に行くことができる。レストランはなく、軽食程度しか食べられない。

長距離航路のフェリーは別として、これまであまり良いイメージではなかったはず。

しかし、四国開発フェリーが運行する「おれんじフェリー」は違います。営業航路のひとつ「おれんじおおさか」は、新造船を導入し、豪華フェリーとして再出発しています。全室個室となり、多様な要求に応えています。スイートルームやシングルルーム、バリアフリー、ペット可などの客室を作り、サイクリング客用には自転車スタンドも用意。

また、トラック運転手だけではなく、旅行客を呼び込む手段として、ビュッフェ形式のレストランをオープンさせています。和洋中約40種類の料理を用意し、旬の味覚を楽しめるようになっています。特に、四国周辺の海鮮に力を入れています。

「食」は人を惹きつけます。美味しいものがあるなら、そこが船の上でも、人びとは集まってくるのです。これまでの問題点を解決し、利用者の望みを叶えていった結果が、業績回復に繋がったのです。

移動の手段でしかなかったフェリーが、いま“船旅”へと変貌を遂げたのです。

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