日本株にもようやく春が訪れるのだろうか(写真:active-u / PIXTA)

日本の株式市場は、代表的な指標である日経平均株価が2万1500円前後で推移、一進一退が続いている。

5Gはスマホよりも「新分野」で威力を発揮

そんななか、市場では「3つのG」が注目されている。1つ目は、5G(第5世代移動通信システム)だ。2020年春をめどに、日本国内でも5Gの商用化が始まる。携帯電話の歴史を振り返ると、およそ「10年サイクル」ごとに進化している。1980年代にスタートした第1世代(1G)はアナログ方式であったため、音声通話サービスのみだった。それでも移動しながら電話できることは革新的だった。

1990年代の2Gでは、デジタル方式に切り替わった。国内大手通信会社によるインターネットサービス「iモード」が始まり、文字(メール)のやりとりが簡単になった。2000年代の3Gでは、「iPod」による音楽配信サービスが始まり、楽曲のやりとりもできるようになった。そして2015年頃から4Gが普及し、動画まで比較的「サクサク」観られるようになった。

正直なところ、未だにスマホすらうまく使いこなせない「デジタル音痴」の筆者は、今の通信環境でも十分すぎると感じている。4Gから5Gになると、通信速度がさらに約100倍も速くなり、その容量は1000倍近くに拡大という。例えば、2時間の映画をダウンロードする場合、5Gなら2〜3秒で完了する。ところが、一般的なスマホユーザーにとって、本当にそのスピード感は必要だろうか。5Gは「高速大容量」、「低遅延」、「低コスト」、「省電力」、「多接続」と、いいこと尽くめだ。しかし、クルマに例えると、年配のドライバーへ対してF1(フォーミュラカー)を提供しているようなもののようにも思える。

それはさておき、どちらかというと、5Gは「スマホ」というより、次世代インフラにつながる「クルマ」や「医療」等の新しい分野で威力を発揮しそうだ。自家用車の完全自動走行には時間を要しそうだが、行き先がルーティン化された「無人バス」や「無人トラック」等は近い将来、公道を自動走行しているだろう。

また、都心の医師が地方の手術現場に対して、手術用ロボットを介してサポートする遠隔医療も可能になりそうだ。2025年までに一気に拡大する5G関連のビジネス規模は、1300兆円を超えるとの試算もある。これは中国における名目GDP(国内総生産)のおよそ1年分に相当する大きさだ。

こうした高い期待もあって、5G関連銘柄株は堅調だ。5Gの根幹となる通信装置や計測器等の世界シェアが高い企業が、国内にはいくつか存在する。息長く恩恵を受けられる「オンリーワン企業」は、長期的な物色の柱として続きそうだ。

さて2つ目は、GC(ゴールデンクロス)だ。3月上旬、日経平均株価は需給好転を示唆するシグナルが点灯した。チャート上では、25日線(短期線)が75日線(中期線)を上回るGCとなっており、しばらく上げ相場が続きそうだ。もともと例年春には、日米株は堅調となることが多い。まず、海外勢が4月の日本株を18年連続(2001〜2018年)買い越している。また2018年の海外勢は年間5.7兆円も大きく売り越したものの、2018年4月は2000億円超買い越した。また、4月のNYダウは13年連続(2006〜2018年)で上昇している。

これらの一因としては、投資家の資金フローが挙げられそうだ。つまり、海外企業の大半は、12月期決算だ。3〜4月に入ってきた配当金や還付された税金を、投資家が株式市場へ再投資することが春の株高につながっているようだ。

GW前後以降に出遅れ修正も?

さらに3つ目は、GW(ゴールデンウィーク)だ。まず、メリットは国内消費の押し上げへの期待だ。2019年4月1日、政府から平成に代わる新元号が公表される。天皇即位の祝賀ムードが広がるなかで、4月27日から10連休を迎える。民間データ会社の調査によると、国民の4人に1人が10日間休暇できるとのことである。

実際、2018年におけるGW期間の総旅行者数(約2440万人=国内約2380万人+海外約58万人)に対し、2019年は史上最多更新が見込まれる。なお、例年GW期間中の総旅行消費額は1兆円前後に達することから、国内景気の下支えにつながりそうだ。

一方、デメリットは国内金融市場の長期休場だろう。日本株において約7割の売買シェアを握るのは海外投資家。その売買は、コンピューターを駆使したHFT(高頻度取引)による短期の値幅取りが多くを占める。したがって、海外勢は一定期間、市場流動性が止まる日本市場を敬遠しているようにも映る。また注目されていた米中首脳会談は4月以降に繰り下がった。ただ両者の歩み寄りがなくとも、交渉決裂が回避されれば、日本株の下値は限られよう。もし、「GW前の手仕舞い売り」にともない、一時的に相場が緩む場面があれば、そこは押し目買いの好機とみている。

3月19日の日経平均株価は2万1566円で引けた。今後の日本株の見通しは、3つのGを計算式のように並べると、「5G+GC-GW」だろうか。つまり、4月下旬には国内企業が2019年度業績見通しを発表してくる。投資家に安心感を与えられる内容であれば、GW前後から海外勢による日本株の見直し買いもありそうだ。そこに海外マネーの買いが加われば、日本株の出遅れ修正も期待できそうだ。その際は、長期投資家の損益分岐点といわれる200日線(長期線)や下げ幅に対する3分の2戻し水準となる2万2000〜2万2500円前後まで戻る可能性もある。

今後の日経平均株価における重要な節目をあげておく(3月19日時点)。
2万4270円 2018年10月高値
2万2565円 3分の2戻し(高値2万4270円→安値1万9155円の下げ幅に)
2万1974円 200日線(長期線)
2万1713円 半値戻し(高値2万4270円→安値1万9155円の下げ幅に)
2万1566円 直近値(3月19日終値)
2万1401円 25日線(短期線)
2万1057円 75日線(中期線)
2万0860円 3分の1戻し(高値2万4270円→安値1万9155円の下げ幅に)
2万0617円 2018年3月安値(米中貿易摩擦懸念)
2万0014円 2018年末値
1万9155円 2018年12月安値