米中間で激しい覇権争いが展開される中、習近平政権が掲げる「一帯一路」に協力的とも思える姿勢を見せる安倍政権。目先のカネに目が眩んだかのようなこの動きの先には、どんな未来が待っているのでしょうか。AJCN Inc.代表で公益財団法人モラロジー研究所研究員の山岡鉄秀さんは今回の無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』で、日本が中国に利用されることが目に見えているとした上で、その行きつく先は「中国の属国化」という悲観的な見方を示しています。

忘れないで、一帯一路の終着点は日本属国化

全世界のアメ通読者の皆様、山岡鉄秀です。

昨年、あるパーティーでスピーチを依頼されたとき、私は次のように言いました。

「日本は必然的に米中覇権戦争の狭間に立たされるが、間違っても関ヶ原の合戦における小早川秀明のように振る舞ってはいけない。そんなことをしたら、どちらが勝っても潰されるだけだ」

でもやっぱり、日本政府は心配した方向に進んでいるようですね。

昨年10月の日中首脳会談で、安倍首相が第三国インフラでの日中協力を打ち上げたとき、「一帯一路に協力させてください!」と懇願しているように見えました。

それを否定するかのように日本政府は「第三国協力は開放性、透明性、経済性、財政健全性の4条件で進める」「一帯一路への協力ではない」などと言っていました。

それでどうやって中国とビジネスをやるんでしょうか?

それらの条件が揃うプロジェクトに限定すればよい、とまじめな顔でいうシンクタンクの方もいらっしゃるようですが、相手の本質が変わるはずもありません。

スティーブン・バノン氏が警告するように、一帯一路、中国製造2025、5G制覇はセットで世界覇権を目指す中国の大戦略であることは疑う余地がありません。日本政府の4条件をまじめに考慮する中国ではありません。理解したふりをして、日本を絡め取ってから利用しようとするでしょう。

と思っていたら、案の定、「3月6日、全人代の経済関係に関する記者会見で、中国政府は日本が“一帯一路”に協力していると断言した」というニュースが飛び込んで来ました。

中国ウォッチャーの遠藤誉さんや福島香織さんは、これは中国が「一帯一路=債務トラップ」というネガティブ・イメージを払しょくするために、日本を利用しているのだと指摘します。

3月6日の中国共産党機関紙である「人民日報」の海外版は、「宣言!中日が共同建設する“一帯一路”がタイ国に決まった意義は深遠である」とまで書いているそうです。

実に予想通りの展開です。

当たり前です。日本がどんな建前を並べようと、たとえ、マシな事業を選んだつもりでも、相手は最初から利用する気でいるんですから、日本との合意なんて最初から気にしていません。日本政府は国民の知的水準をかなり低く見積もっているようです。

遠藤誉さんによれば、中国はさらに、欧州を中国5Gに取り込んでしまおうと目論んでいるといいます。「日本も参加する一帯一路は健全です。だから、5Gも大丈夫ですよ」というわけです。

日本が長年築き上げてきた国際的信用が、まんまと利用されるという、予想どおりの展開です。

するとなんと、イタリアが一帯一路に参加することを正式に表明したとのこと!日本、役立っていますね。

ここで思い出すのが中学や高校で習った歴史の授業。

「第二次世界大戦は、ドイツ、日本、イタリアを中心としたファシズムの枢軸国と、アメリカ、イギリス、などを中心とした自由主義陣営の連合国の対決だった」と教わりました。

自由主義陣営と言ったって、世界中に植民地を持つ帝国主義国家群です。国内的には民主主義を標榜していても、対外的には帝国主義政策を取り得るのです。政治体制は違っても、帝国主義国家群の覇権争いが本質です。

そこで、誰と組むのか?必死で中立を保つのか、極めてクリティカルな判断と決断が必要になります。

あの時、ナチスドイツと組む選択をしたイタリアと日本。

今は中国がナチスドイツの立ち位置をとり、ドイツはあの頃と同じで中国にべったり。イタリアも乗ってしまう。フランスはフラフラ、そして日本も?

なんだか、いつか見た光景に酷似しています。結局こうなってしまうのでしょうか?

この30年、日本経済の負けっぷりは見事なものがありました。

なにしろ、世界のGDPに占める割合が18%から6%に低下したのです。あらゆる分野で負けまくりの日本企業は、大局的な国家の行く末よりも、目先のビジネス獲得に必死です。「中国に選んで頂ける会社にならねば!」と言った日本を代表する企業の社長の表情にそれがよく表れています。

でも、この場を借りて断言しておきます。もし、中国のAIや5Gが勝利して、自動運転が中国のシステムで動くようになった暁には、中国は日本車を走らせようなんて毛ほども思っていません。

また、日本が中国にこんなにすり寄ってもアメリカが文句を言ってこないのは、何かウラがあるんじゃないかとか、深慮遠謀があるんじゃないかとかおっしゃる方もいますが、私はそう思いません。

基本的にはアングロサクソン国家でアメリカの同盟国であるオーストラリアも随分ふらついて醜態をさらしました。

でも、それぞれの国には経済運営上の都合があって、どこの国でも経済人はビジネス優先で、長期的な国益など考えない傾向があるものです。

それはアメリカも同様だから、いちいち苦言を呈するわけにはいかないのです。まして、公に嫌味を言えば、仲間割れの印象を与えてしまいます。

しかし、アメリカではすでに安倍政権の中国擦り寄りを厳しく批判する論文も出されています。

アメリカが嫌味を言おうと黙っていようと、自国の運命は自国の判断に委ねられているのです。難局に際して誰と組むかは自主的に決めなくてはなりません。

目先のビジネスで一帯一路に色気を示しても、利用されるだけされて、行きつく先は「終わった国」として属国化です。

スティーブ・バノン氏は私に、安倍首相は中国の脅威を深く理解していると語りました。

それが本当かどうか、結果はすぐにわかるでしょう。

山岡鉄秀 Twitter:https://twitter.com/jcn92977110

image by: 首相官邸

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