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カー用品販売「オートバックス」の店舗で正社員から嫌がらせをされ、「不安障害」で自宅療養を余儀なくされたのに、休職が認められず雇い止めにあったのは不当だーー。

こう訴える元アルバイト店員の男性が3月19日、運営会社を相手取り、解雇が無効であることの確認や未払い賃金の支払い、慰謝料などを求める裁判を、東京地裁に起こした。

男性は、正社員には認められる休職が非正規に認められないのは、労働契約法20条が禁じる「不合理な格差」だと主張。東京・霞が関の厚生労働省で同日開いた会見で「努力を正当に評価してほしい。非正規だからといって、使い捨てられていいわけはない」と述べた。

●個人成績はトップクラスなのに

訴状などによると、原告男性は田島才史さん(52)。店舗は「オートバックス加平インター店」(東京都足立区)で、運営会社は「ファナス」(東京都港区)。

田島さんは2006年4月から1年更新のアルバイトとして、同店でカーオーディオなどの販売業務を担当していた。雇用契約は13回にわたって更新され、正規社員も合わせた個人売上成績で月間トップとなり表彰されたことも複数回あったという。

2013年6月ごろ、生活費に困っていた同僚の従業員から相談を受けた田島さんは、当時の店長に相談。「店長という立場のためえこひいきはできない」「協力できる人間で協力してやってほしい」「何かあれば最終的に自分が責任をとる」などと言われたという。

そこで、他の同僚3人とお金を出し合い、205万円を従業員に貸し付けた。ところが、この従業員は返済しないまま退職し、督促にも応じなかった。このため、田島さんは会社に何らか補てんしてほしいと要望し、2014年7月には、会社幹部からこの問題で事情を聴かれた。

その後、会社は補てんなどの対応はしない一方で、「やめるなら50万円払う」などと田島さんに対し退職勧奨をするようになった。応じずに2015年4月の最初の出勤日に出勤すると、当時の社長から「契約できないから帰ってくれ」と雇い止めを宣告されたという。

●「非正規差別を是正したい」

直後、田島さんが相談した「東京都労働相談情報センター」が間に入り、会社は雇い止めをいったん撤回。ただ、朝礼への参加を認めないほか、他の正社員やアルバイトに割り当てているロッカーを田島さんには割り当てないなどの「ハラスメント」が行われたとしている。

こうしたことから、田島さんは心身に不調をきたすようになり、2018年5月に「不安障害」のため1カ月の自宅療養が必要と診断された。自宅療養をする田島さんに対し、会社は非正規であることを理由に、休職規定の適用を拒否。2018年11月に田島さんを解雇した。

正社員なら、私傷病休職期間が6カ月〜24カ月にわたって認められていた。代理人の笹山尚人弁護士は「合理的な理由がないまま、一方的に不当な差別が行われている」と指摘した。

同じく代理人の今泉義竜弁護士は「非正規労働者による戦いをさらに進めたい。企業が、使い捨てをして『ブランド』を維持していいのかが問われている。社会的問題だと捉えており、社会全体で非正規差別を是正したい」と語った。

●フランチャイズ本部「必要なら指導」

ファナスの担当者は取材に対し「対応できる者が全て不在」とした。

フランチャイズ本部のオートバックスセブンは取材に対し、「会見の内容を把握しておらずコメントできない。ただ、事実関係を確認して、必要があればフランチャイズ本部として指導していく」(広報担当)と答えた。 (弁護士ドットコムニュース)