香川真司の代表復帰は日本にとって喜ぶべきニュースなのか。否定的な意見はあまり聞かれない。

 この冬にレンタル移籍したベシクタシュでは、出場機会を得られるようになっている。先発に完全に定着したわけではないが、交代出場を含めれば、ほぼ毎試合、ピッチに立てている。

 だが、彼は30歳だ。2022年カタールW杯時に33歳になっているベテラン選手(しかもアタッカー)をいま呼ぶには、それなりの理由が必要になる。人格的に優れていたり、キャプテンシーを備えていたり、プレーヤーとしては下り坂に入っていても、実力プラスアルファが見込める選手である必要がある。

 とはいえ、個人的には香川に関して確認しておきたいことがある。2018年ロシアW杯で彼はこちらの予想を超えるプレーを見せた。代表チームでのプレーを長年見てきた中で最も好感度の高いプレーをした。それが日本がベスト16入りした要因のひとつであったことは間違いない。

 だが、W杯後もドルトムントで評価されず、ほとんど出場機会を得ることがなくベシクタシュに放出された。その間、日本代表に呼ばれることもなかった。香川に関しては2018年6月から時間が止まった状態にある。あのロシアW杯のプレーは何だったのか。偶然の産物なのか。それとも一皮抜けた状態にあるのか。

 そのベシクタシュへのレンタル移籍だが、ドルトムントが強力なチームならば仕方がないと慰めたくなる。都落ちの印象を抱くことはない。しかし、チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦で、トッテナムホットスパー(スパーズ)相手にレベル差を痛感させられるような敗退劇(通算スコア0-4)を見せられると、残念ながらそうした気持ちは消える。それは、ブンデスリーガのレベルが高くないことを証明する試合でもあったのだ。

 ドルトムントに完勝したスパーズは、FWにソン・フンミンを擁していた。韓国代表のアタッカーがその先頭を引いていた。ドルトムントはそれに手を焼いた。香川とソンフンミンの差が一目瞭然になった試合でもあった。

 少なくとも選手としての格は2レベル違う。

 クリスティアーノ・ロナウド、リオネル・メッシのバロンドール級を10とするならば、ネイマール、ルイス・スアレスは9。かつてのロッベンもこの辺りに属する準バロンドール級だ。ソン・フンミンのレベルはそれより1歩半程度低い7.5という感じだろうか。

 CLの決勝トーナメントに出場するチームでスタメンを張るアタッカーとなれば最低7前後は欲しい。そこから香川は2ランク落ちるというこちらの見立てが正しければ、5.5レベルの選手になる。

 日本人にレベル7を示すCL級のアタッカーが他にいるなら特段、ソン・フンミンが眩しい存在に見えないが、今季のCLに満足に出場した選手は長友佑都(ガラタサライ=-441分)のみだ。香川に28分、CSKAモスクワの西村拓真にも2分間の出場時間があるが、これは日本が世界に誇れる数字では全くない。ロシアW杯で収めたベスト16がマグレではなかったのかと、怪しまれかねないデータになる。

 日本では「半端ない」と称賛されている大迫勇也もCL級とはいえないし、売り出し中の堂安律もしかり。7レベルにはまだ到達していない。最も近そうに見えたのは中島翔哉だが、ご承知のように彼は現在、欧州を離れ、カタールリーグでプレー中だ。今後が見通しにくい状況にある。ソン・フンミンのレベルにあるかといわれると難しいといわざるを得ない。

 そうした中で5.5レベルにある30歳が日本代表に復帰した。CLの決勝トーナメント1回戦を見た直後にこのニュースを聞かされると、先述の通り香川に対する関心はあるけれど正直、喜ばしい気にはなれないのだ。