(左から)INAC神戸のMF吉田凪沙、MF八坂芽依【写真:井上智博】

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日ノ本学園高で黄金時代を築いた2人が、別々の道を歩んだ4年間を経てINAC移籍で再会

 なでしこリーグ(日本女子サッカーリーグ)1部のINAC神戸レオネッサは、6年ぶりのリーグタイトルを目指す2019年シーズン、新加入選手7人を迎えた。

 そのなかで、偶然にも5年ぶりに共闘することになったのが、MF八坂芽依とMF吉田凪沙だ。かつて高校女子サッカーで日本一に輝いた2人は、今度はトップリーグで優勝の喜びを分かち合うべく、新たなスタートを切った。

「また一緒にやれるとは、思っていませんでした」

 吉田は少し恥ずかしさを滲ませながら、胸中を明かす。

 遡ること7年、八坂は大分トリニータレディース、吉田は地元のリベルタ徳島FCから兵庫県・姫路の日ノ本学園高に進学。1年次にMF伊藤美紀(現INAC)が在籍した常盤木学園高を破ってインターハイ女子初代日本一に輝くと、そこから3連覇の偉業を達成。2年・3年次には高校女子サッカー選手権で2連覇を果たすなど、2人は黄金時代を築いた一員としてその名を刻んだ。

 その後、八坂はなでしこリーグ1部のアルビレックス新潟レディースへ。吉田は岡山の吉備国際大に入学し、なでしこリーグ2部、チャレンジリーグ(3部相当)で戦ってきた。別々の道を歩んできた2015年からの4年間、カテゴリーが違うこともあり、「全然連絡を取っていなかった」(八坂)という。そんななか、奇しくも成長とチャレンジという同じ理由でINAC移籍を決断した結果、再び兵庫の地でチームメートになった。

「移籍は最後の最後まで、すごく悩みました。でも、今の自分に足りないものを見つけたいと考えた時に、個の力をつけたかったので、自分の成長を考えて決断しました。もちろん、アルビでもつけられたとは思いますが、新しい環境で、新しい選手たちと攻撃の幅を広げたい。チームに貢献したいがために来ました」(八坂)

「いくつかのチームに練習参加させていただいたなかで、どうしようかと迷いました。ただ、INACのようなレベルの高いチームから声をかけていただくチャンスも簡単には巡ってこない。今の自分のレベルでどこまでやれるのかチャレンジしたい、という思いが決め手です」(吉田)

八坂はサイドアタッカー、吉田はボランチとして激しいポジション争いに挑戦

 豊富な運動量と縦に速い攻撃を持ち味とする八坂は、左右両サイドでの起用が見込まれている。MF仲田歩夢や韓国代表MFイ・ミナ、FW増矢理花など実力者がひしめく激戦区だが、自分が勝負すべき道はイメージできているという。

「独自のテンポで中間ポジションを取って、ゴールに近づいていくのが私の得意なプレー。(鈴木俊)監督からは、それをしっかり生かせられたら攻撃の良い起点になれると言われています。INACには上手い選手が多い分、私も積極的にならないと良いテンポにならない。チャンスメイクするのが仕事なので、サイド突破でも流れを変えていきたいですね」

 一方の吉田は、今季が自身初の1部挑戦となる。トップリーグ、しかも強豪INACとあって、スピードやプレーの質の違いは大きいという。それでもボランチとして身長166センチのサイズは大きな魅力だ。キャプテンのMF中島依美やMF伊藤美紀、MF杉田妃和が立ちはだかるポジションで、武器とする守備での貢献を誓う。

「昨季まで大学でプレーしていたので、日本一を目指すチームのレベルの高さを感じています。スピード感も全然違うので、まずはそこに早く慣れないといけませんが、毎日学ぶことも多くて良い刺激をもらっています。自分は他の選手に比べると上背があるので、ヘディングや球際に激しく行って相手の起点を潰す守備でチームに貢献したいと思います」

「ずっと上を目指してきた仲」(吉田) 「切磋琢磨すればお互い上手くなる」(八坂)

 新天地での挑戦で目まぐるしい日々を送るなか、旧知の仲であるお互いの存在は大きい。練習の合間には頻繁にコミュニケーションをとるという。

「芽依とは、高校3年間ずっと上を目指してきた仲。雰囲気を和ませてくれる天然キャラですが、自分をしっかり持っていて、サッカーに対して真摯に向き合っている。このタイミングで同じチームになって戦えるのは嬉しく思います。自分がどういった役割、立場になってもチームの勝利のために貢献したいです」(吉田)

「凪沙は卒業後、会う機会がほとんどなかったので、久々に会った感じ。言えばライバルでもあるので、切磋琢磨すれば、お互いに上手くなれると思います。一緒に日本一を獲ったメンバーなので、INACでも日本一を獲りたいですね」(八坂)

 かつて高校で栄光の喜びを分かち合い、トップリーグで再会して優勝を果たす――。そんなドラマティックな展開を目指す2人が、INACに新たな風を吹かせてくれそうだ。(Football ZONE web編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)