「電話にでるのが若手の仕事」も今は昔(写真/AFLO)

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 かつて固定電話の加入権は立派な財産とみなされており、高額でもあったために加入権のレンタル業者も存在した。最近では逆に、固定電話は必要なのかという問いかけが普通になってきた。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、固定電話不要論について考えた。

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 昨今ネット上で「電話」の扱いが散々なものになっている。曰く、「電話してくるヤツは無能」「電話は他人様の時間を奪う暴力的ツール」といった形だ。そして、中高年サラリーマンによる「若者は電話に出ず、LINEで『何かあったのですか?』と聞いてくる」という嘆きがセットになる。

 ただ、「電話派」は2019年、終わっただろう。というのも、メディアを席巻する電話絡みの話題がもはや「オレオレ詐欺」や「アポ電強盗」だらけで、自宅の固定電話は害悪しかもたらさない、との空気が醸成されているからだ。「登録した番号以外からの電話はかからない電話」や「通話を録音することを事前に伝える電話」なども販売されるようになったが、ここまで来ると「どんだけ危険な家電なんだよ」と思ってしまう。

 私自身は、2001年、会社を辞め独立した時に固定電話を契約し、「これでワシも一国一城の主だ」と誇らしい気持ちになった。しかし、度重なる支払い遅延により2006年にはNTTから強制解約をさせられた。

 マズい……。オレ、信用失うかも……と思ったものの、どうってことはない。携帯電話さえあれば何も困らない。収入も増え2010年、株式会社を作り登記をした際は役所から「固定電話はないのですか?」と言われ、「携帯で十分です」と返したら驚かれたが、あれから9年、固定電話ナシで困ったことは一切ない。FAXは「パソコンに取り込んで送ってください」と言えば良いだけだ。

 人間なんてものは、「自分が連絡したい時に都合よく連絡できる」方が心地よいに決まっているのである。相手から連絡が来た時は、その人物が何か困っているか、あなたに何かをやらせたいだけである。「株で1億円儲かったから1000万円あげる。明日、会おうよ!」なんて事態はあり得ない。

 街中で声をかけてくる人間は、キャッチセールスやら風俗店のスカウトなど、「そいつら」が儲かるための声掛けだ。電話にしても同様である。携帯電話が普及して以降、固定電話にかかってくる電話など、証券会社の営業、意識調査、マンションの販売に関するものばかり。

「忙しいんで、あなたの相手している余裕ないです」と不機嫌に言おうものなら、「なんだバカ野郎、死ね!」なんて、どこの会社だかも分からん男から言われ、こちらは「グヌヌヌ」と不快になるだけだ。固定電話を解約すれば、それが一切なくなり実に快適だ。

 というわけで、固定電話の存在価値が減っている今、企業にとっては千載一遇のチャンスである。というのも、企業のコールセンターはいたずら電話や暇人の相手に疲弊をしている状況がある。あるいはまったく学ばぬバカに同じことを何度も説明せねばならない。

 本当に困った人への対応は必要なものの、今こそ日本の企業は電話番号の公開とコールセンターを廃止し、ネット中心で対応してみてはどうか。健康被害等本当に困っている人には、電話で対応するべきだが、とりあえず、雑音の多過ぎる一般的な電話窓口は廃止するチャンスがこの「固定電話逆風時代」になり、ようやく到来したのだ。「健康被害電話窓口」「不良品電話窓口」だけを作ればいい。ただ、仕事相手の電話には出た方がいいと個人的には思う。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など

※週刊ポスト2019年3月29日号