ニュージーランド南島のクライストチャーチで発生したモスクの銃乱射事件を生き延び、家族や友人たちと取材を受けるファリド・アフマドさん(中央、2019年3月17日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】ニュージーランド南島のクライストチャーチ(Christchurch)で15日に発生したモスク(イスラム礼拝所)の銃乱射事件で、妻を殺害された男性が銃撃犯に対する憎しみはないと述べ、許しこそが前に進む最善の方法だと訴えた。

 事件では、白人至上主義者のブレントン・タラント(Brenton Tarrant)容疑者(28)が信者で満員だった金曜礼拝中のモスク2か所で銃を乱射し、50人が死亡。ファリド・アフマド(Farid Ahmad)さん(59)の妻、フスナさんも犠牲になった。

 AFPの取材に応じたアフマドさんは、タラント容疑者を「一人の人間として愛すると彼に伝えたい」と語った。また、タラント容疑者を許せるかとの問いには「もちろんだ。最善なことは許し、寛容であり、愛情と思いやりを持ち、前を向くことだから」と答えた。

 銃撃が始まったモスクで、フスナさんは女性と子ども用の礼拝所にいた人たちの避難を手伝った。フスナさんは「早くこっちへ、急いで」と叫びながら子どもや女性たちを安全な庭に誘導してから、車いすのアフマドさんの無事を確かめようと戻ってきたところを、入り口の手前で撃たれたという。

「妻は自分自身のことは顧みずに、他の人たちの命を救おうと奔走していた」(アフマドさん)

 アフマドさんは、ソーシャルメディアに投稿されたフスナさんの遺体を見せられて、初めてフスナさんの死を知ったという。

■「銃撃犯のために祈る」

 1998年に飲酒運転の車にはねられて以来、車いす生活を送っているアフマドさんは、自分が降り注ぐ銃弾を免れられたのは、銃撃犯が他の標的に執着していたためだと考えている。

「銃撃犯は標的1人に2、3回も銃弾を撃ち込んでいた。既に死んでいる人まで撃っていた。おそらく、このために私たちは外へ逃げる時間が稼げたのだと思う」(アフマドさん)

 もしも、タラント容疑者とじっくり話し合えるなら、アフマドさんはタラント容疑者に人生観について考え直すよう勧めたいという。

「寛大な心を持ち、他者を思いやって助け、人類を破壊するのではなく救う人になれる大きな可能性が、彼自身の中にあると伝えたい」(アフマドさん)

 さらにアフマドさんは、「そうした前向きな素質を自分自身の中に探してみてほしい。いつの日か彼が素晴らしい市民となれるよう望み、そう祈っている」と述べ、タラント容疑者に対する恨みは「全くない」と付け加えた。

【翻訳編集】AFPBB News