ダニエル・ベルトラ(Daniel Beltrá)

「近づいてみよう」。小型飛行機に乗ったフリーカメラマンのダニエル・ベルトラ(54)は、眼下に赤い雲のようなものが動いているのを見つけた。操縦士が機体を急降下させると、1000羽ほどの鳥の群れだった。ブラジル北部アマパ州の冠水した低地に、南米固有のショウジョウトキが降り立っては飛び立つ。「目の覚めるような画になる」。小さな窓から夢中でシャッターを切ると、レンズの端から端まで模様のように赤い鳥が散らばった。

国際環境NGOの企画で2017年1月から1カ月かけて、上空からアマゾン川流域の写真を撮った。森林は一時、回復傾向にあったものの、開発に伴って16年に再び急激に破壊が進んでいた。農地に囲まれ小さくなった熱帯雨林や、ダム建設で冠水し枯れた樹木などを撮影する中で、偶然目にした自然美だった。

自然が好きで大学で生物学を学び、地元スペインの通信社でカメラマンとして働き始めた。1990年代に参加した環境保全の企画で、写真の伝えるメッセージは自然を守る強い力になると気づいた。

生活も変えた。アマゾンの森林破壊の原因の一つは、世界2位を誇るブラジルの牛肉生産だ。2001年からほぼ毎年通うアマゾンで、肉牛を育てるため森林が切り開かれるのを見て、元々は食べていた肉をほとんど口にしなくなった。

「知識は苦痛をもたらすものだ。知れば知るほど、言行を一致させなくてはならないからね」と冗談でよく言う。だが、大好きな自然を守るためなら話は別だ。「美しい世界をいたわるために出来る限りのことをしないと」。情熱を注ぎ込む。

アマゾンの熱帯雨林

「地球の肺」とも言われるアマゾンの熱帯雨林は世界最大の炭素吸収源の一つで、毎年何十億トンもの二酸化炭素を吸収して気候を調整する働きをしている。だが、2017〜18年の1年間に静岡県の面積とほぼ同じ7900平方キロの森林が失われた。過去10年で最悪のペースという。

今後の見通しも明るくない。今年1月にブラジルの大統領に就任したジャイル・ボルソナーロ氏は慢性的なエネルギー不足対策としてアマゾン地域に原子力や水力の発電所を増やす方針を掲げている。就任早々、アマゾン流域の土地の権限を先住民から事実上奪う大統領令を出し、先住民や環境保護活動に携わる人たちの反発を招いている。