巨匠イ・チャンドン監督の初期2作品が公開!(『ペパーミント・キャンディー』)

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村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を独自の解釈で映画化した『バーニング 劇場版』が公開され、文化人たちから激賞を集めているイ・チャンドン監督。韓国を代表する巨匠がキャリアの初期に手掛けた名作2作品のリマスター版が、本日3月15日より公開となっているので、これをきっかけに、その見どころをチェックしていきたい!

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第44回ロサンゼルス映画批評家協会賞の外国映画賞を受賞したことも記憶に新しい最新作『バーニング 劇場版』をはじめ、『ポエトリー アグネスの詩』(10)では、第63回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。『シークレット・サンシャイン』(07)では、主演のチョン・ドヨンが第60回カンヌ国際映画祭主演女優賞に選ばれるなど、海外の映画祭で多くの賞を受賞し、高い評価を集めてきたイ・チャンドン。

彼が類稀なる才能を発揮し、注目を集め出した作品が、1999年に製作された『ペパーミント・キャンディー』だ。ある1人の男性ヨンホ(ソル・ギョング)が「帰りたい!」と叫びながら電車の前に飛び込む、衝撃的な場面から幕を開ける本作。彼が自殺を決意するに至るまでの20年間を7つのセクションに分け、初恋の女性、光州事件や劇的な民主化など、ヨンホの心に影響を与えた時代の背景と共にその半生をさかのぼっていく。

過去に戻れば戻るほど、地獄のような日々からヨンホが純朴で幸せだった時間へと物語は進んでいくが、その一方で、時代や、ある一つの人生の選択が、いかに人間を変えてしまうのかという事実を、観客の心に突きつけていく本作。一見残酷な作品であるように思えるが、その奥底には人の心にある美しさへの願いのようなものも込められており、大胆な作品の構造とメッセージ性が巧みに絡み合った1本となっている。

もう1作本日から公開されているのが、『ペパーミント・キャンディー』の3年後に手掛けられ、第59回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞するなど高い評価を得た『オアシス』(03)。同じくソル・ギョングを主演に、社会から疎外された男女の恋愛模様を描いたラブストーリーだ。ひき逃げ事件による2年半の刑務所生活を終え出所したものの、家族から快く迎え入れられない男ジョンドゥ(ソル・ギョング)。事故の被害者の息子夫婦のもとに謝罪に行き、そこで息子の妹で脳性麻痺を抱えているコンジュ(ムン・ソリ)と出会う。家族や社会からないがしろにされているもの同士、次第に強く惹かれ合うが…と、二人の純愛を軸に物語が展開していく。

脳性麻痺のため手足を動かすことができず、顔は歪み、言葉を発することが困難なコンジュだが、障害を持つ人もそうでない人と同様に、感情があり、時には怒ったり、嫌な部分も性欲もある。そんな当たり前だが、多くの人が目を背けてきた部分に、真正面から向かい合った本作は、本当の美しさとは何かということを観る者に叩きつけてくる、自分の常識にいかにとらわれていたのかを再確認させるような作品となっている。

人間の本質的な部分を容赦なく突きつけるが、同時に人間の善に対する優しい目線も感じることができるイ・チャンドンの作品。ずっと観たかったという人も、イ・チャンドン作品未体験の人も、自分の価値観が揺らぐような、滅多に出会えない衝撃の映画体験を、この機会に味わってみてほしい!(Movie Walker・文/トライワークス)