「名刺交換」や「無礼講」など日本で行われるビジネスマナーは、外国人にとって不思議に感じることが多いようです(写真:Fast&Slow/PIXTA)

前回英語での敬語の話をしましたが、今回は逆に、日本のビジネスマナーで外国人が「?」と思ってしまう習慣についてです。皆さんが外国人のゲストを会社に迎えたとき、少しでも相手の気持ちを理解する一助になればと思います。

さて、皆さんがお客様に会って最初にすることは何ですか? そう、名刺交換ですね。実はこの名刺交換が外国人にとって最初のサプライズです。日本では、名刺は相手のアイデンティティーです。以前、長野県の知事が就任の際、職員が知事の名刺を二つ折りにしたことがニュースになりましたが、あれに代表されるように相手の名刺は丁寧に扱う習慣があり、二つ折りなどぞんざいな扱いは無礼な行為とみなされます。

最近は日本に行く際、大量に持っていく人も

しかし外国人にとって名刺は、本当に相手に名前や連絡先を伝えるための紙片にすぎません。そもそも持っていない、持っていても1、2枚しかない。無造作にポケットから出して片手で渡す(もう片一方の手はポケットの中なんてことも)。揚げ句はミーティングの後、渡した名刺を置いていかれてしまった……そんな経験はないでしょうか。


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もっとも、最近は「名刺交換は大事」という情報が行き渡っていて、日本に出張に行くときに準備すべきことの1つとして名刺を大量に用意しておく人もかなりいます。外国人にとって自分の名前が外国語(日本語カタカナ)で表記されているのはちょっと「クールだろ」と自慢したくなるモノにもなりますので。

その名刺交換ですが、お互いに大人数での会議だと、はじめに大人数による「名刺交換大会」が開催されます。これは外国人の目から見るとなかなかすごいものがあります。会議の最初の5分が名刺交換でつぶれてしまうこともあるので、外国人がいてもいなくても、あそこはもう少しうまくやれたら、と思います。

しかし、これはいい!と思った点もあります。会議が始まるともらった名刺を机の上に並べて、覚えていない相手の名刺にチラっと視線を落とし、さも相手の名前をもう覚えたかのように会議を乗り切る。あれは便利だと思いました。

もう1つのサプライズが、席順です。いわゆる上座下座ですね。お客様が部屋の奥、入り口に近いところには自社の役職の下の人が座る、などなど。中国や韓国などアジア圏では日本と同じような習慣がありますが、欧米ではあまり気にしない習慣です。

相手のVIPが入り口に近い席にストン、と座ってしまってホスト役の方が困ってしまう、ということもあるようです。会議室などはまだシンプルですが、和室での会食などになると、床の間があるとかないとか、相手もこちらもグルグル回ってなかなか席につかない(その間も座布団や畳のヘリを踏んではいけないのがマナー)のは、真剣なんですけど、外国人にはちょっとユーモラスにも映ります。

さらに聞くところによると、車に乗るときにもお客様を乗せる場所が決まっていると聞いて驚き、それを新人研修で勉強すると聞いてもう1回驚きました。

欧米人であれば、すべて握手で乗り切れる

欧米では、少なくとも僕の周囲では上記のすべてが「あまり考えなくてよい」です。

ただ、デビットが言っているから名刺交換やめましょう、席順を気にするのを外国の人に見られると恥ずかしい、と考える必要はないと思っています。必ずしもどちらかの文化にどちらかが合わせる必要はありません。違いがあるのはよいもので、そうした多様性(ダイバーシティー)が共存できることが今の時代のよさなのです。

その点であまり失敗がないのが、万国共通のビジネス上でのあいさつでもある「握手」ですね。相手の目を見てニッコリ、少し力を込めてグッと握ると、こちらのやる気、相手への積極的な気持ちが表現できていいかもしれません。名刺交換して握手はもちろんですが、会うたびに握手、別れ際に握手、とにかく握手、握手、握手で乗り切れます。

一方で握手を拒否するというのは論外ですが、時々「僕は風邪を引いているから」という理由で握手を辞退する場合があります。ミーティングが始まってせきや鼻水が出ている人を見て「あの人とさっき握手しちゃった、風邪がうつらないといいな」と思わせては申し訳ないですから、やはりスキンシップは最低限の衛生面として気を使う必要はあります。

外国人との信頼関係が進み、しばらくぶりの再会となった場合、待っている次のステージが「ハグ」ですね。ハグは、特に異性に対して行う場合はちょっとためらってしまうかもしれません。これも前回のファーストネーム問題と同じく、どの瞬間からハグをしてよいのか、一概には言いにくいものがあります。

無難なところでは相手が求めてきたら応じる、かと思いますが、例えばかなりお酒を飲んで盛り上がった別れ際などはハグしてよいと思います。1回ハグした経験のある相手ならば、再会のとき、しばしのお別れの際などはハグすると相手への友情を示すことができると思います。

無礼講がよくわからない!

さて、かなりお酒を飲んで、と書いて思い出した最高難度の日本のビジネス習慣がありました。「無礼講」です。

無礼講については皆さんに説明の必要はないと思いますが、むしろ改めてお聞きしたいことがあります。今日は無礼講だと言って飲みます、騒ぎます、すっごく仲が良くなります。上の人も、若い人も。

ちなみに、海外にも「一気飲み」のように仲間内でショットグラスを一斉に空けることがあります(主に若い人ですが)。これは一緒に飲んで仲良くなろうよ!というもので、ああ日本でもこういうところは一緒なんだなー。これはすばらしい! よかったよかった。

……と思って翌日オフィスに行きますよね。そうすると昨晩あんなに意気投合した若い人が「デビットさん、おはようございます」と、なんだかまた他人行儀な距離感に戻っているんですね。昨日の記憶をなくしているわけではありません。どうしてこうなるのでしょうか。

オフィスでの立ち振る舞いと、お酒の席での盛り上がりに非常に大きなDiscontinuity(不連続性)を感じます。広報担当のS君から「デビット、それはハレとケだよ」と言われましたが、うーん難しい。無礼講に参加して、日本文化の奥深いところについて自分がいかに無知であるかを再確認することになりました。

なお、聞くところによると「あいつは無礼講で部長に無礼なことをした」として怒られるケースもあるそうですね。ますますわからなくなってきました。

ちょっと話をビジネスに戻します。

足をドンと机の上に投げ出すのは割と普通

映画などでご覧になったことがあると思いますが、ミーティング中に机にドンと足を乗せる外国人がいます。さすがに取引先相手にあれをやる人はいないと思いますが、社内で同僚と話すときなどであれば結構普通にやる行為です。

おそらく室内で靴を履く習慣と関連があるのかもしれませんが、あれは普通に日本や東洋の常識からすると、ずいぶん失礼な振る舞いですよね。

自分とは違う習慣に触れると「失礼だな」と感じることもあるかもしれません。ただし多様性というものはつねに無意識のうちに存在するものなので、ここで相手を悪く言っても何も生まれてきません。互いの違いを知るということはとても意味のあることです。

冒頭の名刺交換大会についても、デビットのコラムを読んだから外国人には名刺を渡すのはやめよう、ではなく、日本のビジネスの習慣でここが海外の人からみると珍しいんだな、とわかってやれば、それを説明することでうまいアイスブレイクになるかもしれません。

今回のポイント。名刺交換は効率的に。あいさつはまずは握手で乗り切ろう。ちょっとギャップを感じたら、そのギャップをネタに相手と近づくきっかけにしよう。無礼講で本当に無礼なことは、どうやらしないほうがいいらしい。

それではまた次回!