東日本大震災から8年。東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で放射性物質が付着し、高濃度で汚染された稲わらや牧草など指定廃棄物の処理が、事故発生当時から進んでいない。最終処分場が決まらないためだ。福島県は指定廃棄物の処理を始めたが、まだわずか。福島を含む11都県では事故発生当時のまま保管されている。
 
 原発事故によって大気中に放出された放射性物質は焼却灰、土、下水汚泥、稲わらや堆肥などに付着し、汚染された廃棄物が発生した。そのほとんどは放射能濃度が低く、一般の廃棄物と同様の方法で安全に処理できる。一方、1キロ当たり8000ベクレルを超えた廃棄物(指定廃棄物)の処理は国が責任を持ち、各都県で処理する方針だが、最終処分場が決まらず処理が進んでいない。

 農水省によると、原発事故で放牧地が汚染された岩手、宮城、福島、栃木、群馬の各県(約3万5000ヘクタール)では、2018年までに約9割(約3万3000ヘクタール)の除染が完了した。ただ、指定廃棄物の多くは、当時のまま11都県で保管され、処分を始めるめども立っていない。

 唯一、指定廃棄物の処理に着手するのは福島県だ。16年1月から指定廃棄物の処理が始まり、発生した汚染稲わら約2400トンは18年8月1日時点で400トンの処分が進んだ。同県によると、21年には「稲わらに関しての処分は終わる見込み」(環境保全農業課)だ。

 一般廃棄物として処分可能な1キロ当たり8000ベクレルを下回る廃棄物でさえも処理が進んでいない。宮城県内では17年7月時点で約3万6045トン(うち稲わら1906トン)保管している。4県域では17、18年度から試験焼却処分が始まり、そのうち1県域で本格焼却が始まったばかりだ。

 環境省は「高濃度、低濃度にかかわらず、汚染されたものの処分について地域住民の理解が得られない。焼却する施設、埋め立てる最終処分場の確保が進まない」と話す。