ステップは、目標としていた横浜翠嵐高校の合格者数トップを2019年入試で達成した(撮影:尾形文繁)

2019年入試の学習塾「神奈川冬の陣」が決着した。

川崎、横浜、三浦半島以外では、神奈川県立の上位高校の合格実績で圧倒的な強さを持つ学習塾大手・ステップ。横浜地区の有力9高校の合格者数合計でトップを目指すと宣言したのは3カ月前、性急すぎないかと思われていたが、ふたを開けてみると、ステップの圧勝だった。

県立高校の旧入試制度は、16学区に分かれていて各学区にトップ校があり、16のトップ校に神奈川総合、横浜サイエンスフロンティアハイスクール(YSFH)、横浜国際の3校を合わせた19校の合格者数実績が塾の力の目安となる。

ステップが横浜地区の首位奪取

県立高校受験塾としては、ステップと臨海セミナー、湘南ゼミナールの3つがしのぎを削っている。9校の合格者数合計は、湘南ゼミナールが19年連続でトップ、2018年は湘南ゼミナールの765人に対しステップは731人で2位だった。それが2019年は湘南ゼミナール673人に対し、ステップ899人と、226人の差をつけて首位を奪取した。 

「9校の合計でトップ」がステップの2019年の目標で、2020年は、9年連続で横浜翠嵐高校の合格者数トップを守る湘南ゼミナールを抜いて、首位になることが目標だった。ステップの横浜翠嵐高校の合格実績は、臨海セミナーの後塵も拝しており、2年ががりの計画は妥当な線。しかし、1年前倒しでこの目標をあっさり達成してしまった。

ステップが前年比46人増の123人だった一方、湘南ゼミナールは31人減らして101人。臨海セミナーは23人減らして97人だった。ライバルが合格者数を大きく減らしたことが大きいが、1番は1番だ。

結局、ステップは9校すべてで合格者数を伸ばし、2018年も合格者数トップだった希望ヶ丘、柏陽を含む6校(ほかは横浜翠嵐、横浜緑ヶ丘、神奈川総合、横浜国際)でトップに。川和、YSFHで2位(トップの湘南ゼミナールとの差はそれぞれ12人、9人)、光陵で3位(同臨海セミナーとの差は31人)だった。横浜以外では臨海セミナーが強い多摩(川崎市)、横須賀でそれぞれ3位、2位だったため、県下19校のトップ校では14校で1位となった。

この結果に対し、ステップのIR担当、池永郁夫顧問(前常務)は「生徒たちと講師陣の頑張りの賜物」と言う。それはそうだが、精神論だけでは旧日本軍と変わらない。もちろん今日に至る布石は打ってあった。

2018年9月期までの4年間でステップは高校受験塾を15校開校してきた。年別の内訳は次の通りだ(カッコ内は所在地で市名なしは横浜市)。


湘南ゼミ、臨海セミナーは巻き返しに

15校中14校が横浜と川崎だ。横浜の11校のうちステップが強いといえるのは上大岡のある港南区くらいで、残りは競合に負けている地域だ。「新規出校しても派手な宣伝はせずに着々と生徒数を増やしていく」というのが業界のステップ評で、それを弱点地域で意識的に実施し、それが実ったということだろう。今回トップを逃した川和、多摩は東急田園都市線のほぼ1駅ごと開設した教室(宮崎台、鷺沼、たまプラーザ、江田、市が尾)が、同じく光陵は保土ケ谷区の新教室が、それぞれ合格者数増に寄与する可能性がある。

2年計画を前倒しで達成したため、2020年は19校すべてでの1位が目標になるのかと思いきや「単位制高校の神奈川総合や、やはり単位制で国際科を持つ横浜国際のような個性の強い学校は、年によって受験者数が増減する。受験は誘導できないので、1位を維持できるかどうかは生徒次第。来年は何とか今年の結果を維持できればと思う」(池永顧問)と謙虚な姿勢を貫く。

確かに、競合も黙ってはいまい。ステップが横浜、川崎を重点地域としていることは、新規出校を見てわかってはいたはずだが、トップ奪取宣言までは想像していなかったろう。いわば不意を突かれた形だ。巻き返し策に打って出るのは必至。もちろんステップは今年の成果をうたって対抗するだろう。合格率を開示しているのも強みだ。例えば、横浜翠嵐における今年のステップ生の合格率は82%で、ステップ生を除く合格率46.2%(受験者数509人、合格者数235人)を大きく上回った。

受験が終わり、新年度生の獲得競争は始まっている。新年度は競争がさらに熾烈になりそうだ。