『口臭列島』(森本哲郎/幻冬舎)

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 ある調査結果によると、日本に在住している欧米出身者100人のうち、約7割が「ビジネスシーンで日本人の口臭を感じたことがある」と回答したそうだ。また、同じく約4割は「日本人とキスしたくないと感じたことがある」、約8割が「オーラルケア(口の中のお手入れ)を徹底してほしい」とさえ答えている。

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 なかなかショッキングな内容ではないだろうか。私たち日本人は、どちらかというと香りやにおいに敏感で、清潔感を大切にし、歯磨きだって毎日しているはずなのに、なぜこのような印象を持たれているのだろう。『口臭列島』(森本哲郎/幻冬舎)は、日本人の口臭の原因やその背景、そして効果的な対策について、現役の歯科医がわかりやすく説いてくれる1冊だ。

■口臭の原因=歯周病がもたらすもの

 気になる口臭の大きな原因は、歯ぐきの病気である“歯周病”にあるという。日本人の歯周病罹患率は高く、20代で約7割、30〜50代では約8割と推計されているという。通常、私たちの口の中には約1000億もの常在菌がいるが、口の中が不衛生になると、悪玉菌である歯周病菌の活動が活発になり、歯ぐきに慢性的な炎症を起こすのだ。

「私は1日何度も歯磨きをしているから、口の中が不衛生なわけがない」と思う人も多いだろう。しかし、油断は禁物。著者によると、日々の歯磨きだけでは、歯についた歯垢(しこう)を完璧に取り除く事は難しいという。

 そこで定期的に歯科を受診し、歯科衛生士による歯垢や歯石の除去といった“口腔ケア”を受ける事が推奨されるのだが、日本人で定期的に通院して口腔ケアを受けているのは1割にも満たない。医療保険制度の違いや予防意識の差はあるものの、アメリカ(受診率約8割)やイギリス(受診率約7割)の場合と比べると、かなり低いと言えるだろう。

 そして歯周病は、ただ悪臭を発するだけではない。一般的には「歯周病が進むと、歯の根っこが生えている歯槽(しそう)が溶けて、最終的に歯を失う」と言われるが、それだけでもない。

 歯周病は、動脈硬化の進行に関わることで心臓病の発症リスクを高めるという。また、認知症の進行や、高齢者の死亡リスクのひとつである誤嚥性肺炎とも関連しているのだそうだ。

■口臭は健康のバロメーター。口腔ケアを十分に行い、健康を保とう

 本書では、私たちがいつも行う歯磨きなどの口腔ケアが正しいかどうかのチェックリストや、望ましい歯磨きのタイミングなどについて丁寧に説明されている。詳しくは本書を手に取って確認していただきたい。

 本書は、セルフケアだけでは十分に行えない口腔ケアのために、定期的な歯科受診を強く薦める。「虫歯にでもならない限り、歯科には行かない。歯医者は苦手で…」という人もいるだろう。しかし、十分な口腔ケアは、口臭につながる歯周病の予防という「口の中の健康」だけでなく、生活習慣病などの予防という「全身の健康」にも必要なのだ。

 情けは人のためならず。他人へのエチケットとして口臭を予防するだけでなく、“自分自身の健康のため”に、十分な口腔ケアを実践していこう。

文=水野さちえ