対北強硬派のボルトン氏(左)は満面の笑み(C)ロイター/Leah Millis  

写真拡大

 世界中に衝撃を与えた米朝首脳会談。トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が見せた「蜜月関係」にヒビが入った決定的要因は何だったのか。ひもとくカギは、拡大会合の場にいた、ひとりの男の存在だ。

米朝決裂で安倍政権警戒 小沢一郎氏「電撃訪朝」に現実味

「(米大統領補佐官の)ジョン・ボルトンが土壇場で北朝鮮に対し、核兵器だけでなく保有する生物・科学兵器についても報告義務を課すと言いだしたため、合意に至らなかった」

 1日付のニューズウィーク電子版によると、交渉の舞台裏について韓国統一部元長官は、韓国CBSラジオの取材に対して、こう怒りをあらわにしたという。

 この報道が事実であれば、ボルトンが北に無理難題を突き付けたために物別れになったとも読み取れる。

■水面下では“手打ち”の可能性

 昨年4月に大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に就任したボルトンは、積極的な対外軍事行動を唱える“主戦論者”。特に対北朝鮮に強硬なネオコンの代表格だ。元海兵隊で「狂犬」の異名を取ったマティス前国防長官でさえ、ボルトンと初対面した際、「あなたは『悪魔の化身』であると聞いている」と評していた。

 米朝会談2日目の拡大会合終了後、正恩はブ然とした表情で車に乗り込み、トランプも終了後の会見で険しい表情を崩さなかった。約4300キロに及ぶ道のりを経て、あとは合意文書に署名するだけだったはずの交渉が突然、ひっくり返ったのだから当然だが、ボルトンの存在が何らかの影響を与えたのだろうか。

 米国事情に詳しいジャーナリストの堀田佳男氏がこう言う。

「ボルトン氏には複数回、インタビューしていますが、とにかく発言が過激だった印象があります。とりわけ北朝鮮に対しては『先制攻撃を取ることも戦略のひとつ』と公言していたほど。トランプ大統領やポンペオ国務長官が同席していても、構わずに物申すタイプですから、米朝会談の場で金正恩委員長に強硬な要求を突き付けてもおかしくはありません」

 ただ、ボルトンは最近、ロシア疑惑などでグラつくトランプ政権のことを考え、過激発言を封印していたとされる。中央日報(韓国)の報道によると、ホワイトハウスが公表した米朝会談の「随行者名簿」にも当初、ボルトンの名前はなかった。それが突如として会合に出席したのはなぜなのか。

「ロシア疑惑のダメージが深刻なトランプは、国内世論の批判を抑えたい。そこで『北には譲歩しない』との強い姿勢をアピールするために、あえてタカ派のボルトンを会合に同席させたことが考えられます。そんなトランプの苦しい事情を知っている正恩氏が『ならば今は合意文書の署名を見送ろう』と考えても不思議ではない」(米国人ジャーナリスト)

 2日目の拡大会合終了後、トランプと正恩は満面の笑みで握手を交わしていたから、ケンカ別れじゃないのは間違いない。実は、とっくに“手打ち”している可能性だって十分あるのだ。