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高級食材や豪華家電が実質タダでもらえたと思ったら、突然税務署から電話が来て、こってり絞られてしまった。他人事かと思うかもしれないが、誰にでも起こりうる、まさかの落とし穴が存在する。

追徴課税を求められる

2018年は、かつてないほどにふるさと納税熱が激化した年だった。

実質2000円の負担で、A5ランク和牛や北海道産の毛ガニ、取れたての高原野菜などが手に入るふるさと納税。返礼品は年々高額化し、管轄の総務省は返礼率が30%を超える品物には税金の控除を取り消す、という規制案まで検討しているほどだ。

こうした「ふるさと納税狂騒曲」のなか、年末にはじめて駆け込み納税したという人も多いだろう。

だが、一見メリットしかないように思えるふるさと納税にも「落とし穴」が存在する。

「意外と知られていないことですが、ふるさと納税で受け取った返礼品は所得とみなされ、課税対象になりえるのです」(税理士の落合孝裕氏)

制度に「納税」という名前がついている以上、返礼品自体は非課税の「贈り物」だと認識しているかもしれない。だが、じつは立派な「所得」にあたる。

スーパーではとても手が伸びない高級肉や、都心ではなかなか食べられない海の幸が、タダ同然で手に入るとあれば一家全員大喜びだ。

だがこの返礼品が原因で、税務署からおっかない追及を受け、追徴課税を求められる事態にまで至ってしまったら、元も子もないので注意が必要だ。

「ふるさと納税の返礼品は、税制上は『一時所得』に区分されます。一時所得は、仕事に対する給料や手当ではない、臨時的に入った所得のことです。

返礼品をもらった場合、それがいくら相当の所得になるかを確定申告の一時所得の欄に記載しなければなりません。要注意なのは、この所得は、寄付によって得られる所得税及び住民税の控除とは関係なく発生することです」(落合氏)

ちなみに、一時所得には控除枠が設定されていて、その額は50万円だ。オーバーした分は、そこに50%をかけた金額が所得課税の対象となる。もし税務署に50万円相当以上の返礼品を受け取っていると指摘されれば、ただちに納税義務が生じるのだ。

「ウチが申し込んだのは、家族で食べたシャインマスカットだけ。関係ない話でしょう」

「欲張ってiPadやダイソンの掃除機まで申し込んでしまった。大丈夫だろうか」

過去のふるさと納税を振り返り、色々と思うところがあるかもしれない。ただし、ふるさと納税の返礼品だけで50万円を超えてしまう人は、そうはいないだろう。

税務署は知っている

だが、現実にはまったくの他人事ではない。というのも、ふるさと納税のほかにも、一時所得とみなされる意外な収入源は数多くあり、それを合算した金額が50万円をオーバーすれば、税務署が追いかけてくるからだ。

ふるさと納税の返礼品のほかには、どのような一時所得があるのか。気づかないうちに控除の上限を超えてしまい、肝を冷やすことになった東京都に住む会社員の小枝健氏(57歳・仮名)の例を参考にしてみよう。

「ここ数年、急に財テクにこだわるようになったんです。ふるさと納税は毎年欠かさずに限度額(収入によって異なる)の16万円まで行い、牛肉や米など、市場価格で10万円相当の返礼品を受け取ってきました。

このほかにも、クレジットカードのポイントを還元率の高い商品券にしたり、マイルを溜めて国内旅行に出かけたりする生活を続けていました。そして、昨年('17年)は私が入っていた満期の保険を解約し、家計の負担をさらに軽くできたと喜んでいました」

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それからしばらくしたある日、小枝さんのもとに税務署から電話がかかってきた。

「あなたの一時所得について、少々お聞きしたい点があります。一度税務署までお越しいただけませんか」。会社員の小枝さんは税務署に出向いたこともなく、動揺を隠せなかった。

小枝さんが税務署から修正申告の要請を受けたのは、件の一時所得に該当する部分だった。ふるさと納税は前述のとおりだが、クレジットカードのポイントや旅行会社のマイルも、税務署に一時所得と判断されることがある。

カウントされるタイミングは、ポイントを商品券として引き換えたり、マイルを使って航空券を発券したときだ。

そして小枝さんが失念していたのが、保険の満期返戻金だ。

「実務の面で一時所得が大きいのは、生命保険の一時金や満期返戻金でしょう。たとえば加入していた掛け金500万円の生命保険が、満期を迎え、利息込みで530万円が戻ってきた場合、差額の30万円が一時所得とみなされます」(元国税OBで税理士の松嶋洋氏)

満期返戻金を受け取った場合、税務署は確実にそのことを知っている。保険会社は保険金や満期返戻金を100万円超支払った場合、支払調書を作成し、税務署に提出しなければならない決まりがあるからだ。

また、最近の終身保険では、一定期間無事故・無病気だった場合に、「生存給付金」や「健康祝い金」といった名称の給付金がもらえる商品が増えてきている。これは満期返戻金にくらべて少額であっても、全額申告が必要になる場合があるので注意しておきたい。

「せっかく上手い具合に財テクを駆使して儲けていたのに、追加で納税するハメになりました。今年はふるさと納税をやめておけばよかったなあ、と後悔しています」(小枝さん)

一時所得に該当する意外なものは、ほかにもたくさんある。競馬や競艇など公営競技の払戻金をはじめ、町内会で行われる福引や雑誌の懸賞もそうだ。

これに加えて、ボーナス以外で会社から贈与された金品、建て替えなどで受け取った立ち退き料なども一時所得に該当する場合がある。

また、リサイクルショップやネットオークションで家にあるモノを売り、売却益が出た場合も一時所得とみなされることがある。自宅に書画や骨董品が眠っている場合、売却益も高額になりがちだ。

ふるさと納税の高還元率な返礼品に加え、ちょっとした臨時収入が積み重なり、合計金額が1年間で50万円を超えてしまうのは、決して珍しくないことがわかるだろう。

こちらとしては悪気がなくとも、知らず知らずのうちに申告漏れ扱いされ、修正申告や追徴課税を求められる可能性があるのが、ふるさと納税の要注意ポイントだ。

言い逃れはできない

まさか税務署も、個人の細かいおカネの出入りまで見ていないだろうと、甘く考えてはいないだろうか。一度疑いの目を向けたら、徹底的に調査をするのが彼らのおそろしさである。

アレース・ファミリーオフィスの油良俊寛氏はこう言う。

「入金の履歴が残るような小遣い稼ぎを繰り返し続けていると、税務署に狙われる可能性があります。

また、個人の場合、返戻率が極端に高いふるさと納税などの財テクを周囲に自慢していると、それをよく思わない第三者が税務署に伝え、それがきっかけで問い合わせが来る、というケースはじゅうぶんに考えられます」

ワンストップ特例を使った場合、納税額はマイナンバーで紐づけされる。当然、税務署が個人の納税をチェックすることは朝飯前で、「返礼品はもらっていない、使ってしまったので価値がわからない」と言い訳しても意味がない。

元統括国税調査官の佐川洋一氏は語る。

「通常、調査対象の目星を付け、指令を出すのは統括国税調査官の仕事ですが、さすがに個人の細かな出納までは目が行き届きません。そこで近年では収入や課税所得に関する膨大なデータが収められたシステムを活用し、調査先を選定しています。

そのほか、高額の申告漏れの疑いがある対象者について、銀行の取引を照合する場合もあります。その際、調査外の人のおカネの流れがたまたま目に入り、これが思わぬ追及につながることもあるのです」

こうして申告漏れの疑いが発覚した場合、先述の小枝さんのケースのように、税務署から突然電話がかかってきたり、書面が届くことがある。

そうすると職員と面談しながら、1年間で給料や年金以外の収入がどれだけあったか、事細かに思い出し、証明しなければならなくなる。

ふるさと納税に関してはごまかしがきかないし、あまりにもずさんな計算では修正申告にとどまらず、税務署側が問答無用で追徴額を指定する「更正処分」に陥る可能性もあるから恐ろしい。

ふるさと納税がおトクな制度であることには変わらない。ただ、毎年のように納税をしている人も、これからやってみようと思っている人も、思わぬ損をすることがあることに気をつけよう。

「週刊現代」2019年1月5日・12日合併号より