旧iPhoneにはない「XS / XR」だけの新機能「eSIM」がスペインでも活躍:週刊モバイル通信 石野純也
米サンフランシスコで開催されたサムスンのUNPACKEDを駆け足で取材しつつ、日本で飛行機を乗り継ぎ、はるばるスペインのバルセロナまでやってきました。Mobile World Congress改め、MWC2019 Barcelonaを取材するためです。

この原稿を執筆しているのは、会期2日前ですが、さっそくOPPOが発表会を開催するなど、5Gの商用化に向けて各社が例年以上に熱い火花を散らしています。それはさておき、海外取材のお供といえば、毎回この連載でも取り上げているeSIM。今回も、iPhone XRでeSIMを試してみました。

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スペインでもiPhoneのeSIMを試した


アップルのサイトを見ると、スペインでは主要3キャリアともeSIMに対応していることが分かります。ただ、少々微妙なのが日本で契約できないところ。スペイン語に苦戦しつつ各社のサイトを調べてみたところ、どうやらeSIMの発行は店頭でというのが基本のようです。筆者はOrangeの物理SIMを持っているため、これをeSIMに交換することはできそうですが、プリペイドプランが対応しているかどうかは不明。せっかく持っている物理SIMの利便性を捨てるのも惜しいので、今回はeSIM化を見送ることにしました。

その代わりに契約したのが、フランスのTransatelが運営する「Ubigi」というMVNOのeSIMです。Transatelは早くからIoTやeSIMに取り組んできた会社で、PC用のeSIMを提供するキャリアとしてもおなじみ。昨年12月に、NTTコミュニケーションズが同社を傘下に収めることを発表しているため、実は日本とも深いつながりがあります。ブランドは冠していませんが、資本関係でいえばNTTグループというわけです(笑)。NTTグループ(になる予定)のeSIMを使ってみない手はありません。

▲TransatelのUbigi。同社はNTTコミュニケーションズに買収された

本連載でも何度か書いてきたとおり、iPhoneのeSIMには2通りの契約方法があります。1つは設定からQRコードを読み取る方法。この場合は、Webなどでキャリアのアカウントを別途作り、契約はそちらで行います。もう1つはアプリを使う方法で、こちらの場合、ワンストップでアカウントからeSIMの書き込みまで行えます。Ubigiが採用しているのは前者のQRコード方式です。

手順は簡単で、まずUbigiのeSIM用サイトにアクセス。ここで「GET MY FREE PROFILE」というボタンをクリックして、名前やメールアドレスを入力すると、数分後にQRコードが送られてきます。これをiPhoneで読み込むと、eSIMの情報が書き込まれます。Ubigiはデータのみのため、iPhone上では「モバイルデータ通信にのみ使用」をタップしましょう。


▲eSIMのページにアクセスし、「GET MY FREE PROFILE」をクリック


▲名前やメールアドレスなどを入力


▲QRコードがメールで送られてきた


▲iPhoneでQRコードを読み込み、eSIMを設定する

まだアカウントも作っておらず、支払いの情報も渡していないうちから通信できるようになってしまい、少々戸惑うかもしれませんが、手順的にはこれでOK。Ubigiはローミング経由で同社のサイトに接続でき、そこからアカウントを作ってプランを購入する仕組みになっているからです。サイトにはブラウザからアクセスできますが、アプリがApp Storeで公開されているため、今回はそれを利用しました。アカウント作成はUbigiの回線経由でなければできないため、Wi-Fiは切断しておきましょう。


▲Ubigi回線でアカウント作成用のサイトかアプリにアクセス

あとはサイトかアプリからアカウントを作り、プランを購入するだけ。プランは国別とザックリした地域別に分かれていますが、どちらかというと、国別の方が安く設定されています。今回訪れたスペインの場合、500MBが3ドル、3GBが9ドルといった具合で、欧州の複数国をカバーするプランに比べると割安な設定になっています。国別の料金を見てみると、欧州内でも特にスペインは安め。実際、キャリアの料金もドイツやフランスなどと比べて安いため、それが反映されているのかもしれません。


▲プランを選択。今回は3GB、9ドルのスペイン用プランを購入した

メインのSIMカードは別途あり、そちらは10GBのプランを契約していましたが、会期中、そこそこ通信したかったので、Ubigiも3GBプランを購入することにしました。有効期間は30日支払にはクレジットカードのほか、PayPalも利用できます。支払いが完了すると、アカウントにデータプランが追加されます。データ通信の総量と残量も、ここで確認でき、足りなくなったらプランの追加購入も可能。作りとしては非常に分かりやすいといえるでしょう。これなら、1月にT-Mobileの契約で失敗したときのようなことは起こらなそうです。


▲支払いが完了すると、すぐに3GBが補充された

実際に契約してみて感心したのは、やはり初回のアカウント作成をローミングで行うところ。仕組み的にTransatel側がローミングの費用を持っていることになりますが、プランを選択するために別回線を用意しなくてもよくなり、分かりやすいと感じました。eSIMの情報さえiPhoneに書き込んでおけば、移動しながらでもプランを選択できるので、ユーザーフレンドリーな仕組みといえるでしょう。

実際、スペインについてデータ通信をUbigiに切り替えたところ、すぐに通信することができました。端末に表示された情報を見ると、Orangeにつながっているようです。宿のあるカンプノウ付近で速度を測ってみたところ、下りは27.1Mbpsとなかなかの速さで、ブラウジングもスムーズにできました。


▲速度も速く、ネットがスムーズに使える

1点だけ注意したいのは、テザリング。デフォルトの状態だと、APNが空になっています。この状態でもデータ通信はできますが、インターネット共有がオンにならなかったため、APNを手動で入力しました。APNは「mbb」で、これを「モバイルデータ通信」と「LTE設定(オプション)」、さらには「インターネット共有」に設定する必要がありました。


▲APNの設定は忘れずに。入力する文字列は「mbb」

Ubigiはいわゆるローミングキャリアのため、料金的に見ると、スペインのキャリアと直接契約した方が割安です。筆者が今回、メインで使っているOrangeのSIMカードは、10GBで15ユーロだったため、3GBで9ドルのUbigiよりも高いものの、データ容量は3倍以上。データ容量が3GBでよければ、料金はさらに抑えられます。また、国別のプランがないところは、どうしても割高になってしまいます。

一方で、日本で簡単に契約でき、現地に着いたらすぐ通信できるのは大きなメリット。日本のキャリアのローミングと比べれば料金も安くなるため、利用価値は十分あります。日本向けのプランも500MBで4ドルに設定されているため、月の途中で"ギガ不足"になった人が契約するのにもよさそうです。