岩手県矢巾町は丁寧な住民合意で水道料金値上げの理解を得ることに成功

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 先の臨時国会で「審議時間の短さ」が大問題となった「改正入管法」と「改正水道法」。安倍政権の国会運営は問題だらけだが、意外にも改正水道法にはいいことも……!?

◆推計では21年後に1か月で2万円の例も! どうする?

 昨年12月6日、国会で改正水道法案が可決された。審議時間の短さなどで批判も多いが、一方、日本の水道が危機に瀕しているのも事実だ。

 日本の1263の水道事業者(’16年度/自治体が多数)の多くが事業収入を減らしている。節水技術の発達(かつてトイレの流し水は一回20ℓだったが、今では4ℓ)や人口減で水使用量が減少。老朽化した水道施設の更新費用もかさむ。

 となると、水道料金の値上げは避けがたい。昨年3月、「EY新日本有限責任監査法人」と「水の安全保障戦略機構事務局」が自治体ごとに’40年度の水道料金を推計したが、このままでは9割が’15年度比で平均36%上がる。最大の値上げ幅は福岡県みやこ町の約5倍だ。

◆自治体主導で健全経営を達成した例も

 法案では自治体単独では採算が取れない以上、ごみの収集・処分と同様に、複数の自治体での広域化を行うべしと謳った。だが、同時に水道事業の「官民連携」も打ち出され「民営化のノウハウを持つ外資が日本の水道を乗っ取り、水道料金が高騰する」と法案に反対の声も多かった。だが、水ジャーナリストの橋本淳司さんは語る。

「法律が謳う『官民連携』には、包括委託や第三セクター設立、そして水道施設を自治体が保有したままその運営を民間に任せる『コンセッション』などがあります。コンセッションでは世界の多くの地域で水道料金が高騰しましたが、国内外の民間企業がターゲットにするのは給水人口20万人以上の水道事業だけで、日本の給水人口の約3割。つまり、日本の多くの自治体は自分たちで水道事業の破綻を食い止める必要がある。それには、今後の人口動態を見据えたうえで、同じ流域にある複数の自治体と連携して広域化とダウンサイジング(施設の廃止や規模縮小)を進める必要があります」

 現時点でも、民ではなく官が「適正な水道料金での運営」を実現した例はある。

 ’14年に設立された「岩手中部水道企業団」は日本の水道事業改革の先駆けだ。岩手県の花巻市、北上市、紫波町3市町の水道事業を一括で広域運営している。菊池明敏局長は北上市役所職員だった’04年から「このままでは上下水道とも破綻する」と予測し、3市町の職員たちと協議を重ねた。3市町が単独で事業を続ける場合の右肩上がりの水道料金と、広域化した場合の安定した水道料金のシミュレーションに、最後は3人の首長も頷いた。

 そもそも、日本の水道施設は水需要の減少で稼働率が50〜60%台にまで落ち込んでいる。だが、「自治体の財産」の廃止は難しい。

「でも、広域化すれば遠慮なく無駄な施設をつぶせます。以前は3市町で34あった浄水場は29に(将来は21)、取水施設も36から32に減らしました(将来は23)」(菊池局長)

 同企業団は設立後、すぐにダウンサイジングを実施。施設稼働率を80%台にし、水道料金も20㎥で3186円と安定供給している。

 2例目は’16年に設立された「群馬東部水道企業団」だ。’12年に3市5町(太田市、館林市、みどり市、板倉町、明和町、千代田町、大泉町、邑楽町)の首長たちが広域化に合意した。浄水場は22から10に、配水池も47から33に減らす予定で、人員も設立時の97人から68人まで減った。その結果、群馬東部水道企業団での水道料金は値上げゼロを実現している。

 この2例は企業団を設立しての水道事業改革だが、自治体が独自で改革をした事例もある。その先駆けは神奈川県川崎市だ。節水技術発達の影響で、’06年には給水能力100万㎥弱を持つ3つの浄水場が、実際に配水した量はその5割台。施設能力のダブつきは市の内部で課題視され、外部監査でも「給水原価を押し上げる要因」と指摘された。局職員は振り返る。