先日、僕の地元の同級生たちが同窓会をしたという。「したという」と書いているのでお分かりかと思うが、僕は参加していない。っていうか呼ばれてもいない。後日メールで「何で来なかったの?」と同級生の1人から連絡があり、そこで初めて自分がハブられていたことに気付いた次第だ。

まあ、いいさ。馴れ合いは泣いて歯軋りをして悔しがる程度には嫌いだ。

ところでその同窓会で、ちょっとした事件がいくつか発生したらしい。その事件とは、お金にまつわるものであった。(文:松本ミゾレ)

一人ひとりにビールを注ぎ「今の年収は?」と聞き回る姿に唖然


社会人になって数年後辺りの同窓会では、下世話なテーマながら年収マウント合戦に発展することはよくある。このときの同窓会もそうだったようで、年収やボーナスの額を自慢する連中(主に県外在住)がチラホラいたそうだ。

中にはマウント合戦の挙句、殴り合いに発展した血気盛んな奴らもいたらしい。うん、元気があって大変によろしいではないか。

しかし、そういう面々をも一撃で黙らせる参加者が存在した。かつてクラスの女子の間でも、ルックスは中の中程度に位置していたこの女性、仮にDとしておこう。Dは30代半ばにしては見た目が若く、同窓会に参加した女性の中でも群を抜いて輝いて見えていたという。

が、このDときたら美しさと引き換えに、デリカシーを失してしまったようだ。ある程度場が和んできた段階で、Dは男性一人ひとりに「久しぶり〜」と言いつつビールを注いで回っては、開口一番「今の年収は?」と聞いたというのである。これには流石にみな唖然。会場には妙なムードが流れてしまった。

そもそもは年収マウント合戦が招いた悲劇?

聞くところによるとDは最近、自治体が主催する婚活イベントに頻繁に出向いているという。"一人婚活パーティー"に興じたのは、婚活パーティーのノリが同窓会でもつい暴走したためと考えられる。しかし、その暴走を引き起こしたのは前述の年収マウント合戦ではないだろうか。

これは僕の想像だが、Dは当初、純粋に同窓会を楽しもうとしていた。が、クラスメイトが繰り広げる醜い年収マウント合戦を目にし、今最も重視し興味を持っている案件だったからこそ、普段のノリが復活してしまったのではないか。その結果、同窓会でありながら不躾に、普段どおり男性に接する態度になってしまったのではないかと推察する。

この見解を、僕に同窓会での一部始終を教えてくれた同級生は「さすがだな。そういう穿った見方が簡単にできちゃうから、呼ばれないわけだ」とカラカラ笑っていた。

ともかく、僕らはもう四半世紀前に同じ学び舎で過ごした旧友なのである。そんな同級生の集まりで、年収フィルターを通してしかクラスメイトを見られなくなってしまったDには、ちょっと寂しい思いを抱いてしまう。