「尊敬婚」は自身のアピールが決め手となります(写真:Pangaea/PIXTA)

結婚相談所の経営者として婚活現場の第一線に立つ筆者が、急激に変わっている日本の婚活事情について解説する本連載。今回は、近年目立ってきた「尊敬婚」について説明します。

結婚に関する価値観は時代とともに変わっています。女性は「自分より年収が高い男性がいい」という考え方が根強いですが、男性も「自分と同じ年収、あるいは上でもよい」という人が6割くらいを占めます。若い層は特にこの傾向が顕著で、5年前くらいからこうした声をよく聞くようになりました。

そこで、ここ2〜3年で目立つようになったのが、女性のほうが年収が高いカップルの成婚です。男性が女性に対してリスペクトするから、「尊敬婚」と呼んでいます。年齢は男性が上の場合も、女性が上の場合もあります。

「社会的に成功している」かどうかが判断基準

尊敬婚の軸となるのが、女性が「社会的に成功している」かどうか。従来専業主婦に求められていた「料理がうまい」といったことではなく、仕事での評価が高く、収入もあることに対する尊敬なのです。


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医学部入試で女性差別の問題がありましたが、実際出産を機にやめてしまう女医さんもいますよね。親御さんに協力してもらって仕事を続ける例もありますが、結婚が遅ければ親も高齢なため、体力的に孫の世話を頼むのも難しい。ところが、尊敬婚の場合は、男性が積極的に家事に参加してくれる例が多いのです。

36歳の女医のYさんの場合もそうです。彼女は38歳の公務員Kさんと結婚しましたが、年収は彼女のほうが2.5倍多かった。Yさんは大学病院で働いていて、手術もするし当直もある。論文も書かなければいけない。一生涯その仕事を続けたいと思っています。ただ、仕事を続けるのであれば、家で夕食を作るなど家事をフルにこなすのは難しい。

一方、公務員のKさんは夕方6時に保育園に子どもを迎えに行くことができるし、ご飯も作ってくれます。家を守ってくれる、主夫のような夫が家にいると、安心して働けるわけです。最近は自転車に子どもを乗せて、保育園に送り迎えをする男性も増えましたよね。

昭和の結婚観をひきずっていると、どんなに女性の仕事が忙しくても、「女性が家事をやるものだ」という感覚がお互いにあり、結局女性の負担が増えるという状況に陥りがち。これに対して、尊敬婚の場合は、女性は家事をせず、男性がするという前提もありです。第一、自分より2.5倍稼いでいる女性にキッチンにも立ってもらうなんて、なかなかできないですよね。

ただ、尊敬婚が実際に増えてきても、親が70代、80代だと、「男性が家事をするのは情けない」「うちの息子をキッチンに立たせるなんてけしからん」という声もあります。昔は紅白歌合戦に出た国民的な女性歌手でさえ、「おせち料理を作ってから家を出なかった」というのが原因で、離婚したというニュースがあったほどですから。

尊敬婚に大事なのはアピール力

婚活をしている女性の側でも、初めから尊敬婚の発想を持っている人は1割ぐらいです。9割は「年収が自分と同じか、高い男性」を望んでいます。ところが、その考え方では相手が限られ、マッチングできるのは5〜10歳年上の人たちばかり。

また、男性側も「自分と同じ年収、あるいは上でもよい」と考える人であっても、初めは年齢的に若い女性を好みがちなため、36歳の女性医師が、38歳前後の男性医師100人にお見合いを申し込んでも会ってもらえる可能性は高くありません。その年齢の男性医師の場合、25歳くらいの女性とのマッチングを望んでいる場合が多いからです。

そういう現実に直面したら、女性は「何であの人たちは若い人を選ぶのだろう」と憤るのではなく、現実として受け止めたほうがいい。素直で賢い女性なら「自分には出番がなかった。もう1回、出会う方法を教えてください」という反応になります。それに対してのアドバイスは、「25歳を過ぎたら、女性は待っていてはだめ。男性にどんどん働きかけていかないと」。

尊敬婚を決めるのはアピール力です。「自分はこうやっていきたい、稼ぐ力もこれだけある」ということをしっかり相手に伝えることができれば、尊敬を得やすいのです。

もちろん尊敬婚は年収が高い、医者などのプロフェッショナルに限ったことではありません。アピール次第で、いくらでも「社会的にしっかりしている人だ」という尊敬を男性から得ることができます。

最近、こんな例がありました。40歳の女性Bさんは、48歳の男性公務員のSさんと交際中です。Sさんには同僚やその奥さんの年金がわかりますし、自分の退職金もはっきりしている。ところが、Bさんは最近まで音楽業界にいて、ここ数年整体の仕事をするようになり、貯金がありません。年金も、社会保険を支払っていた期間が短いので、月5万ほどしかありません。

この2人が付き合うようになって、Sさんは「退職金はいくらですか」とBさんに聞きました。Bさんは退職金など考えたこともない。「ありません」と返すと、Sさんはがっかりしてしまいました。「そんな世界があったのか」と。

退職金がない仕事をしている人を知らなかったのですね。Sさんがドン引きした姿を見て、Bさんは「私と結婚するのはハードルが高いのだと気がつきました」と意気消沈。

Bさんは振られたわけではなかったので、こうアドバイスしました。「もっと違うことをアピールしなさい。私は手に職があり、定年がないので長く働けます、と伝えたら」。整体の仕事を現役で続けられれば、年金もいりません。「富裕層の老人ホームで整体をする」とか、いろいろな戦略があるでしょう。事業計画を次々に出して、何となく「この人稼げそう」という雰囲気を出していけばいいんです。

男性は「男は女を食わせるもの」とは思っていない

そういったアピールを経て、Bさんは今、Sさんの中で存在感が大きくなっているようです。この例でわかることは、男性側の意識の変化。かつては男が食べさせるのが普通だったわけですが、Sさんには、「女性を食べさせなければいけない」という発想がすでになかったわけです。相手の女性は「年金も、退職金もあるだろう」「同じような収入がある者同士で結婚するのだろう」と思い込んでいる。

実は、婚活市場は一般的な感覚や、世間の常識よりも早く変化しています。この価値観の変化にぴったりはまったのが、前出の女医Yさんのような尊敬婚ですし、Bさんのように貯金がなくても、「こうしたい」というアピールがしっかりできれば尊敬が得られ、パートナーシップを築くことができるのです。

Bさんの場合は美容に気を遣っているので、「毎日電車に乗って、身ぎれいにしていつまでも若くいられる」と、もっとアピールしなさいともアドバイスしています。「自分の奥さんはいつもキラキラしている」というイメージになるので、年齢よりも若めの服を着るように言っています。

これまでの結婚という生活の場では、「外での社会的評価」が女性に求められることはありませんでした。母親世代は家にいて、働いたことがないという人も多いから、子どもにアドバイスもできない。誰かに教えてもらって女性が外で働き、結婚すればいいのか、難しいところです。

ですから、今こそ結婚に対する考え方を変えてほしいのです。仕事で成功していてバリバリ活躍している女性は、折れなくていい。自分が下がらなくていい。むしろ、自分がもっといい生き方をするためにパートナーを見つけるんです。

「結婚によって人生がもっと楽になる」という感覚でいればいい。男性の胃袋をつかむことなんて、考えなくてもいいんです。つかみたかったら1カ月に1回でもいい。自分が食べたいものがあったときに作る。あるいはそれを作ってもらう(笑)。自分主体でいいのです。

どんなパートナーを求めているのかを見極めるには

今の時代、誰もが無理に結婚をする必要はまったくない。ただ、したい場合は、なぜしたいのか、どうしてパートナーが必要なのか、どういうパートナーだといいのかきちんと考えるべきでしょう。それを見極めるために、結婚相談所の会員には、1年間にわたって毎日、手帳に「今日、何が嫌だったか」を1〜3個、書いてもらうようにしています。自分の「気持ちカード」みたいなものです。

例えば、「重いペットボトルを2本買って持って帰って手が痛かった」であれば、自分の相手は家事を手伝ってくれる男性がいいのだな、となる。自分の不満やストレスを明確に文字にすれば、今の自分の生活に何が足りていないか、それを補ってくれるにはどんなパートナーが必要なのか見えてくる。

働く女性の場合、「お金がなくて困りました。欲しいコートが買えませんでした」とは書かないでしょう。でも、「旅行したいけれど、友達と休みが合わない」と書くかもしれない。そうしたら、有給がたっぷり取れる男性がいいかもしれません。自分が必要としている人は、今のライフスタイルに必要な人なのです。

ですから、婚活で出会う相手には自己開示をしていくのがいいでしょう。「自分はこういう人間で、こういう生き方をしている。こういう日常を送っている」という内容を伝えることが大切です。それで相手にも、「あなたは?」と聞く。

ライフスタイルにどんな相手が必要なのか、自分の気持ちを見つめ、相手とコミュニケーションを取ることで自ずと答えが出てくるものなのです。

(構成: 斉藤真紀子)