文在寅大統領

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 徴用工問題にレーダー照射事件……日韓対立が深まる中、今度は韓国の文喜相(ムンヒサン)国会議長(73)が、天皇陛下に慰安婦への直接謝罪を要求した。2012年には当時の李明博(イミョンバク)大統領による「天皇土下座要求発言」がきっかけで「嫌韓ブーム」が巻き起こったが、今回の文議長の発言は同じような事態を招くのか――。

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 そもそも、文議長が天皇陛下に謝罪させて片をつけようという慰安婦問題は、15年に朴槿恵(パククネ)前大統領との間で日韓合意を結び、「最終的かつ不可逆的」に解決したはずだった。

 ところが、文在寅政権が誕生すると、国と国との約束を反故にし、あらためて蒸し返してきたのはご承知の通り。

文在寅大統領

「韓国人の日本人に対する“恨(ハン)”は、400年前の豊臣秀吉の朝鮮出兵まで遡るのに、わずか4年前の日韓合意は忘れ去っているのです」

 とは、『悪韓論』の著者で、元時事通信ソウル特派員の室谷克実氏である。

「本来であれば、日韓基本条約とともに結ばれた請求権協定でケリがついているにもかかわらず、日韓合意に基づき、『和解・癒し財団』が設立されると、日本政府は10億円を拠出しました。そこから、元慰安婦や遺族はすでに4億円以上を受け取っています。ところが、文政権は一方的に日韓合意を反故にした。これはもう、国家的なネコババというほかありません」

歴史ファンタジー

 しかも、韓国の「歴史ファンタジー」はより一層、過激さを増しているという。

あの国に学ぶことなど一つとしてない! 虚飾にまみれた隣国の実態に迫る。『悪韓論』室谷克実[著]新潮社

「振り返ってみれば、慰安婦問題は韓国発ではなく、日本発で始まりました。元日本軍人を自称する吉田清治なる人物が、“軍の命令で朝鮮人を慰安婦とするために暴力で狩り出した”などとでっち上げの証言を行った。それを鵜呑みにした朝日新聞が折に触れ、慰安婦問題を追及するようになったのです」(前出・室谷氏)

 挙げ句、韓国は慰安婦問題を政治のカードとして使い始めたのである。

「韓国では、元慰安婦という女性が次から次へと現れました。でも、その証言は二転三転した。最初、慰安婦になったのは親戚の女性に連れて行かれてと言っていたのに、そのうち日本兵に銃剣で追い立てられてに変わったり、日本軍が持っていなかったジープで誘拐されて慰安所に押し込まれたという女性もいて、信憑性に欠けるケースがほとんど。しかし、韓国の主張はますますエスカレートし、いまでは20万人以上の慰安婦が強制連行されたと言い出しています」(同)

 3年前には、慰安婦を主人公にした映画「鬼郷」が韓国で大ヒットしたという。

「少女たちは日本兵に攫(さら)われ、慰安婦として性の労働を強いられている。脱走を試みたり、病気になったりしたら銃殺されたり、あるいは生きたまま穴に放り込まれ、ガソリンで焼き殺されてしまう。でも、彼女たちの魂は蝶々になって空を飛び、故郷に帰っていくというストーリーです」(同)

 日本軍が慰安婦を虐殺したとの歴史的な証拠はなく、荒唐無稽な作り話というほかない。ところが、あり得ない話を史実であるかのように描いているのである。

「そのうえ、この映画の監督は記者会見で、“慰安婦として20万人が強制連行され、生きて帰ってきたのは二百余人であり、現在生きておられるのは44人です”と述べました。いわば、韓国における“南京大虐殺”を捏造しようとしているのです。もうこれ以上、ご都合主義の歴史ファンタジーには付き合ってはいられません」(同)

丁寧な無視

 困った隣人相手に、日本はどう対処したらいいのだろうか。

 元通産官僚で徳島文理大学の八幡和郎教授が語るには、

「これまでの大統領は支持率が下がってきたところで、反日パフォーマンスに走りました。ところが、文大統領は最初から、日本との関係をご破算にしようと動いている。そのうえで、中国、北朝鮮との結びつきを強めようとしているようにしか見えません」

 そんな文政権に対し、日本政府としては、小野寺五典前防衛大臣が主張するように「丁寧な無視」が最良の方法ではないかという。

「要するに、韓国が理不尽な要求をしてきても、まともに取り合わず、国際世論に正当な情報を提供し、韓国がどれだけのウソを言っているかを知ってもらうのです。今後、日本がどんなに謝罪をし、賠償金を支払っても、韓国はさらに要求をエスカレートさせてくるだけ。日韓友好を実現しようと躍起にならず、淡泊につき合うのがいいのではないでしょうか」(同)

 仮に、天皇陛下が慰安婦に謝罪したとしても、それで済まさず次にはきっと、「日本列島のかたちが悪い」などとイチャモンをつけてくるような国柄なのである。

 城内実元外務副大臣は、憤慨した様子でこう語る。

「文議長は、よくぞここまで言ったなと。例えば、イギリスの旧植民地であったインドが、エリザベス女王に“謝罪しろ!”などと要求しますか? もし、そんな発言をしたら、国交断絶は間違いなしです。確かに日本は過去、韓国には不愉快なことをしました。それには頭を下げたし、反省もした。日本は戦後、他の敗戦国とは比較にならないくらい手厚い対応を朝鮮半島出身の労働者や慰安婦らに行ってきました」

 むろん、天皇の直接謝罪など文議長もありえないことは百も承知のはず。陛下を「外交カード」として持ち出して、日韓問題のハードルを上げ、別の形でのさらなる譲歩を狙っているにすぎない。

 これまで、謝罪を繰り返してきた日本。日韓合意の前にもアジア女性基金を立ち上げ、慰安婦らに「償い金」を支払っている。しかも、橋本龍太郎から始まり、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎までの歴代4人の首相はお詫びの手紙も送っていたのだ。

「日本政府には、韓国の甘えに応じ続けてしまったという面があるわけです。私は友好を図る目的で日韓議連に入りましたが、いまでは後悔している。文議長の非常識極まりない発言によって、その尽力が踏みにじられたからです。しかし、万一にも謝罪してきた場合、日本は恨の国とは違い、許す度量があることを示したらいいのではないでしょうか」(同)

 肝要なのは、国家間の約束も外交ルールも平気で破る度し難い国と同レベルで争わないことのようである。

「週刊新潮」2019年2月21日号 掲載