2019年2月22日の埼玉新聞朝刊に、「翔んで埼玉公開記念特集」と題した特別紙面が登場した。


この紙面が埼玉県民のもとに届く

見開きのフルカラーで、通常の紙面をラッピングする形。チラリと見ただけで、かなり熱の入った特集であることが分かる。だが、映画ではディスられる側である埼玉県民にこれを配達して良いものなのか。

翔んで埼玉」の公開日に起こった「珍事」を少しだけ紹介しよう。

県知事も「悪名は無名に勝る!」

念のためだが、「翔んで埼玉」は埼玉県人を盛大にディスった漫画として話題になった作品で、この度まさかの実写映画化。22日に封切られた。

本来であれば、埼玉県民はディスられる側――。怒りをあらわにして公開を取り下げるような運動が起こっても何ら不思議ではない。しかし、そこは我らの埼玉なのだ。なんと県内の主要メディアである埼玉新聞が堂々の特集号を制作したのだ。

「埼玉を冠した映画が公開されるのに、何もしないわけにはいかない!!」

なんとも熱い思いを抱いている埼玉新聞。ならば、中身も相当なことになっているはず。さっそく、紙面を見てみると――。


「すべての埼玉県民に告ぐ」

監督を務めた武内英樹さんと原作の魔夜峰央さんのインタビュー。そして映画に出演した埼玉出身の島崎遥香さんと埼玉育ちのブラザートムのインタビューが掲載されている。

これだけでも相当なパワーがあるが、目を疑ったのは紙面の真ん中だ。

埼玉の頂点に君臨する上田清司知事、魔夜さんが作品発表時に住んでいた所沢の藤本正人市長そして埼玉県人会の会長までがコメントを寄せている。

「悪名は無名に勝る!」

上田知事も相当な気合を入れているようだ。

そして見逃せないのが広告欄。地元の有名企業が名を連ねているではないか。官民問わずオール埼玉体勢で映画を「受け入れる」準備は万全だ。

この紙面は2月22日の埼玉新聞朝刊だけでなく、埼玉新聞社と映画サイドの「埼玉の動員数を全国1位に!!」との思いから県内の上映劇場でのみ、先着プレゼントとして配布される。

トキタ種苗(さいたま市見沼区)提供の「『そこらへんの草』の種・・・・・・ならぬ、埼玉県民が愛する『高級野菜の種』」とセットで先着1万人にプレゼントされる。


埼玉県の上映劇場でのみもらえるプレゼント

ここまで埼玉県民が厚遇されたことがかつてあったのか。ディスりではなく「可愛がり」にも近いもてなしを受けられるのは埼玉に生まれ育ち、住んでいるからこそ。

いまこそ「埼玉愛」を解放しようではないか!