日々振り回される「ムダ」をなんとかしたい(写真:foly/PIXTA)

上場会社の社長時代、利益8割増、時価総額2倍、残業1/4を達成した川島高之氏。
サラリーマン時代からファザーリング・ジャパン理事、コヂカラ・ニッポン代表などの複業や小・中学校のPTA会長をこなしてきた。また「元祖イクボス」としてイクボス企業同盟の輪を広げるため尽力し、加盟企業は200社を超えた。
商社勤務や会社社長(Work)、家事や育児(Life)、PTA会長やNPO代表(Social)という3つの視点から、企業や自治体、教育機関に年300回以上、講演活動を行っている川島氏。2018年には『職場のムダ取り教科書』を上梓した。
日々全国各地を飛び回り、多数の企業事例を見聞きしてきた経験からわかった、働き方改革を阻む「上司」の問題とは――。

「会議・資料・メール」をなんとかしたい

職場には、さまざまなムダがあふれている。

とことん長引いた挙げ句に結論も出ない「会議」。何に使うのか意味不明なままに作らされ積み上がっていく「資料」。周囲を埋め尽くす吹雪のように舞う「メール」の嵐。

私の経験上、これこそ職場の三大ムダ要因だ。

キモチよく仕事をしたい、そして私生活も充実させ、よりよいワークライフバランスを実現したいと思ったら、まずは「会議・資料・メール」をなんとかする必要がある。しかし、ムダ取りをダメ上司に阻まれるケースも実に多い。

ここでは、ムダ取り改革を阻む“守旧勢力”ともいえるダメ上司の類型を、「ダメ課長の3タイプ」として簡単にまとめてみた。

脱力が避けられない「ダメ課長」の3類型

【類型1】口うるさい! 小姑タイプの「マイクロマネージ課長」

右を向けと言ったら右だ、今度は左だ、1やれといったら1だけでいい、余計なことまで首を突っ込むな、お前はオレの言ったとおりに動けばいいんだ――。

何から何まで事細かに指示をして、そのとおりに動かないと怒り出す。部下に自律性など最初から求めていない。というより、部下に思考能力など余計だと考えている気配さえある。部下は自分の手駒、というよりも手足か、もっと言えばただの道具扱い。それがこのタイプ、「マイクロマネージ課長」だ。

あなたの傍にもいないだろうか。次のような“症状”が出ているようなら要注意だ。

・事細かに日々の業務日誌を書かせる。しかも夜中になろうが当日中に提出させ、翌朝8時からそれを見て説教(細かい指示)。
・資料作成に関して、手取り足取り指示。内容についてならまだしも、誤ってもいない単語の使い方や「てにをは」に至るまで、自分の好みでダメ出し、書き換えさせる。
・部署内の会議で自分が主導権を握ってしゃべり続け、部下に発言の機会を与えない。会議ではなく、ほとんど独演会。

某商社では、ポンと決裁してくれればすぐにでもスタートできる事業計画書が、書き直しに次ぐ書き直しで、いつの間にやらバージョン30。

状況が変わったのに「オレが最初に決めたとおりにしろ」と軌道修正が許されず、取引先との関係が修復不可能なほど悪化。

「言うだけ無駄」と部署内には無気力が蔓延……。「マイクロマネージ課長」が大活躍する職場は、かくも哀れだ。

神経質な「マイクロマネージ課長」の最大の特徴は、「部下を信じていない」ことだ。

信じていないから、育てることもない。課長本人がすべてを背負い込んで、たとえば10人分のパフォーマンスを発揮できるというならまだマシだが、そんなことはほとんどない。

結局、「チームワークによるプラスアルファの力」を封じているだけ。「全体でよりよい成果を上げるには」という大局観にも欠けている。

【類型2】上には絶対服従! 太鼓持ちタイプの「イエスマン課長」

ハイ、ハイ、おっしゃるとおりです。さすがは部長! それでもうバッチリですね。もちろんそれで異存はありません。

――長いものには巻かれろということか、上の言うことには、100%逆らわない。社内のお偉いさんの指示、本社や親会社からの通達、あるいはお得意先からの要望。

とにかく、「上からの指示や命令」には唯々諾々と従うだけ。もちろん泣くのは、そんな「イエスマン課長」の部下たちだ。

こんな例に心当たりはないだろうか。

・課内の会議でさんざん議論して決定した方針にもかかわらず、部長にひと言違うことを言われたら、あっさり転換。これまでの作業は全部ムダ。
・現場の事情を知らない上層部の“無理難題”“夢物語”な事業計画をあっさり受諾。自分はそれを可能にする腹案も何もないのに、「高い目標を掲げることに意味があるんだ」と、なぜか得意げ。
・お得意さんからの無理な納期の注文を何の交渉もなく受け、担当に丸投げ。無理だと言っても「もうできると言っちゃったから」と、撤回を求める糸口さえもつかんでくれる気配がない。「ボクはつねにお客さんのほうを向いて仕事してるから」って、それで間に合わなかったら、ほかならぬお客さんにものすごい迷惑をかけるのに。

このタイプがいるのは一般企業の中だけではない。保護者からのクレームをつねにそのまま講師に丸投げする学習塾の経営者や、クレーマーを駆除するどころか、パートさんに押し付けるスーパーマーケットの店主なども、「あなたは誤解している」「私と私の部下に落ち度はない」などの言うべきNOを、言わない・言えないイエスマン上司に含まれる。

権力に弱い、自分の出世にしか興味がない、上司としての能力が低い、理論武装ができない、気迫や覚悟がない――などが、こんなイエスマン課長の特徴だ。

「やっているように見える」ことが重要

【類型3】俺は頑張ってます! 保身タイプの「アリバイ課長」

仕事の成果よりも、「自分がいかに頑張って仕事をしているか」のアリバイ作りに汲々としている課長。部下への指示も、重要性や緊急性は二の次。「うちの部署はこんなに頑張ってますよ〜」という証拠になるものを積み上げることが第一目標になる。

「やっている」かどうかより、「やっているように見える」ことが重要なため、アリバイ課長に率いられた部署の仕事は、形式主義・前例主義に陥りがちだ。例えば、こんな具合――。

・誰が見ても意義の低い会議をやめようとしない。むしろ、「どんな些細な問題もおろそかにせず、こんなに真剣に会議を開いている」ことが立派だと思っている。
・過去からの事業をやめることができず、ただ惰性で続けている。意義は低くても、アリバイ課長にとっては「何かをやっている」という名目が立つ。公共事業などにもありがちな事例。
・何か問題が起きたとき、問題そのものへの対処よりも、まずは調査報告書を作成する。むしろ、問題が終息していないにもかかわらず、報告書ができたことで一仕事終えた気になる。
・どんな報告でも、担当→係長→課長→部長→役員と、1つずつヒエラルキーの段階を上げ、記録を残しておくことにこだわる。

こんな「アリバイ課長」は、何と言っても仕事の本質を見極める能力が欠如している。「日々大過なく、責められることなく過ごす」ことが重要で、責任逃れと、そのための逃げ道づくりに、自分の労力の大半を割く。それに付き合わされる部下こそいい迷惑というものだ。

諦めず、自棄にならず、「方便」を使いこなして進む

 せっかく会議・資料・メールのムダを排除しようとしても、ウチには「マイクロマネージ課長」「イエスマン課長」「アリバイ課長」がいて無理なんですよ――などという人もいそうだ。しかし、そこで諦めてはいけない。自棄になってもいけない。


もちろん、正面突破で「課長、それは違います。こうしましょう!」で事態が改善することはまれだろう。しかしそこは「方便」というものもある。ぶつかるだけが手段ではない。むしろ、ガチンコでぶつかって知力労力精力を消耗することが惜しいくらいのケースもある。

姑息なようだが、「おだてる・パスする・従っているフリをする」といった方法で、ムダ取りの妨害を迂回することは可能だ。そうして、ダメ課長の目の届かないところで、こっそりと、ムダを省く下地作りを進めていく。

血のつながった親子というわけでもなし、「上司と部下」の関係は永遠不変ではない。サラリーマンに異動は付きもの。数年すれば、どちらかが部署をかわる可能性は高い。うまくすれば「できない上司」のボロが出て、勝手に淘汰されていってくれることもある。そうしたら、いよいよ力の発揮のしどころだ。

事象のムダだけでなく、上下関係のムダも、ぜひ、うまくさばいていく知恵を身に付けて、頑張ってほしい。