イギリスで前歴者を24時間監視するGPSタグ導入へ。拘留判決代わりとDV・ストーキング被害者保護のため
性犯罪などを犯した人々に対してGPS足輪を装着させる制度は世界的に見て珍しくありませんが、何千人もの前歴者を対象とした24時間監視可能な新型タグの導入がイギリスとウェールズで今夏から行われると報じられています。すでに現地では1999年からGPSタグが導入されていますが、それは特定の住所にリンクされており、装着者が決められた時間帯(門限)にその場所にいない場合のみ警告を発するというもの。イギリスとウェールズでは約6万人の前歴者が着用しているとされています。

しかし、今後導入予定の新型GPSタグは、どこに行ってもその人の動きを追跡できるように変更されているとのこと。イギリスの司法大臣デイビッド・ガウケ氏は、家庭内暴力やストーキングの被害者をよりよく保護できるようになると述べています。

新型GPSタグでは、立ち入り禁止区域の設定や前科者の社会復帰プログラムへの参加の確認、行動の監視、特定の住所から一定の範囲内への立ち入りを禁止(DVやストーキング被害の場合)といった運用も可能となり、つまり一日中リアルタイムで監視され、行動の制約を受けるわけです。

イギリス当局によると、今後は年間約4000人に対して新型GPSタグを付けるとのことです。ガウケ氏は英国営放送BBCに対して、比較的軽い犯罪に対する拘留判決の代わりとして、あるいはより深刻な重犯罪者を監視するために、この技術を「広範囲の」犯罪に使用できると語っています。

確かに新型GPSタグが導入されれば、刑期の短い服役者は刑務所に入ることなく社会復帰がしやすくなり、DVやストーキングの被害者を加害者の再犯から保護しやすくなるでしょう。

が、反面、GPSを装着された人物は非暴力犯であれ24時間たえず監視され、限られた行動範囲と引き換えに多くのプライバシーを失うことになります。前歴者の人権と被害者の保護をどのように両立させるか、今後も議論が繰り広げられるかもしれません。