広がるマスコミ被害、メディア批判の必要性
2006年01月03日17時50分 / 提供:PJ
犯罪被害者への救済策などを盛り込んだ犯罪被害者等基本計画が昨年12月27日に閣議決定された。この基本計画策定をめぐって、この計画本来の趣旨である犯罪被害者の損害回復・経済的支援や精神的・身体的被害の回復・防止といったことが報道の主要な論点となることは無かった。被害者名の発表が実名でなされるのか否かという点だけが、大々的に報道されるという奇妙な事態に発展した。これは典型的かつ重大な「マスコミ被害」である。
犯罪被害者等基本計画でも「マスコミ被害」広がる
なぜ「マスコミ被害」なのか。大きく分けて2点ある。第一に、この基本計画の主要な論点や内容を、マスコミが市民に対して公正に伝えなかったことが挙げられる。この基本計画の論点は、犯罪被害者への、1)損害回復・経済的支援、2)精神的・身体的被害の回復・防止、3)刑事手続きへの関与拡充、4)支援のための体制整備、5)国民の理解増進と協力の確保、などである。これら主要論点を、マスコミ自身に直接影響ある警察による犯罪被害者の匿名・実名発表といった点にすり替えられてしまった。
第二は、マスコミが市民一般の権利である「取材・報道の自由」を制限してしまったことである。被害者名の発表で、実名・匿名の判断を警察に委ねることはマスコミのみならず市民一般も容認できない。取材・報道の自由は、民主主義・自由主義社会に生まれた市民一般の生来的な権利である。集団的過熱報道(メディアスクラム)といった「マスコミ被害」の重大さを無視してきたマスコミによって、市民一般が有する取材・報道の自由や、国民の知る権利までもが制限されてしまったのだ。
マスコミの定義:心ない、非常識、もしくは市民感覚を欠いた、報道する職業人
新聞社やテレビ局には正義感に燃え、公共心のある記者やカメラマンといったジャーナリストが多くいる。彼ら、彼女らはここでいう「マスコミ」ではない。「マスコミ」とはマスメディア企業などに属する心ない、非常識、もしくは市民感覚を欠き、「報道」と称するすることを職業とした人々を指す。テレビカメラなどに向かって「わたしは」という責任ある一人称は避け、「われわれ報道陣は」、「われわれ市民は」などと叫んでいる人々を想像していただければ、だいたいご理解いただけると思う。
辞書によれば、「マスコミ」とはもともと、マスコミュニケーションの略であったが、転じて、マスメディアの意にも用いられるようになった。そして、今日的には記者、報道関係者、ジャーナリストといった意味でも使われてしまっている。筆者はこれまで「マスコミ被害」を「報道被害」と記してきたが、報道よる被害というよりも、社会的な実際問題は「マスコミ」による被害であるため、「マスコミ被害」という用語を使うことにした。
マスコミは「社会の木鐸」でない、市民社会と対立する「第四の権力」だ
一般市民が寄稿するPJニュース・オピニオンではこれまで、「マスコミ被害」の実態をレポートしてきた。それが思わぬ反響を呼び、主要なコンテンツになりつつある。これはある意味で皮肉なことである。つまり、マスコミが「社会の木鐸」や「ウォッチドッグ」といった本来的な機能を失い、パブリックから隔絶した「第四の権力」と変わり果ててしまったことを裏付けているからだ。
日本の新聞・放送業の業界団体である日本新聞協会と日本民間放送連盟はこれまで、「マスコミ被害」について自主的な改善策を打ち出してきたが、残念ながら具体的な成果は得られていない。むしろ、「マスコミ被害」は業界内の自助努力では済まされぬ問題に発展してしまった。その結果が、昨年12月末に決まった犯罪被害者等基本計画での警察による犯罪被害者の匿名・実名判断である。
ここでは「警察を信じるか、マスコミを信じるか」が問われたといわれるが、本質的には市民社会に対峙する、国家権力とマスコミ権力とを天秤にかけた信頼度についての審判だったのだろう。そして、国家権力に軍配が上がってしまった。
去年、戦後60年を迎えた。政府や政治家、省庁や官僚に対する戦争責任について問う報道は数多くあった。それはそれでいい。しかし、ついに戦前・戦中の大政翼賛広報機関と化した現存する大手マスメディアが、自らの戦争責任について言及することはなかった。
マスコミとパブリックの隔絶、メディア批判の必要性
新聞協会と民放連は、犯罪被害者等基本計画に対する共同声明では「警察に都合の悪いことが隠される恐れもある。私たちは、正確で客観的な取材、検証、報道で、国民の知る権利に応えるという使命を果たすため・・・」などと強調した。こんなことは言わずもがな、この場でわざわざ繰り返し主張することでもない。
市民社会から問われているのは、彼らが掲げる使命を、いかに愚直に遂行しているか、ということなのだ。マスメディア界はその自助努力でチェック・アンド・バランスが可能だと再三にわたって主張してきた。だが、昨今の頻発する不祥事からしても、もはやそれも空論、いや欺瞞(ぎまん)であることが判明してしまった。
PJニュース・オピニオンの今年は、市井の人のパブリックな視座から、権力化したマスメディアを監視しつつ、マスコミ被害に関する報道や、メデイア・クリティーク(批判)に力点を置いていきたい。【了】
■関連記事
パブリック・ジャーナリスト宣言
犯罪被害者等基本計画でも「マスコミ被害」広がる
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第二は、マスコミが市民一般の権利である「取材・報道の自由」を制限してしまったことである。被害者名の発表で、実名・匿名の判断を警察に委ねることはマスコミのみならず市民一般も容認できない。取材・報道の自由は、民主主義・自由主義社会に生まれた市民一般の生来的な権利である。集団的過熱報道(メディアスクラム)といった「マスコミ被害」の重大さを無視してきたマスコミによって、市民一般が有する取材・報道の自由や、国民の知る権利までもが制限されてしまったのだ。
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新聞社やテレビ局には正義感に燃え、公共心のある記者やカメラマンといったジャーナリストが多くいる。彼ら、彼女らはここでいう「マスコミ」ではない。「マスコミ」とはマスメディア企業などに属する心ない、非常識、もしくは市民感覚を欠き、「報道」と称するすることを職業とした人々を指す。テレビカメラなどに向かって「わたしは」という責任ある一人称は避け、「われわれ報道陣は」、「われわれ市民は」などと叫んでいる人々を想像していただければ、だいたいご理解いただけると思う。
辞書によれば、「マスコミ」とはもともと、マスコミュニケーションの略であったが、転じて、マスメディアの意にも用いられるようになった。そして、今日的には記者、報道関係者、ジャーナリストといった意味でも使われてしまっている。筆者はこれまで「マスコミ被害」を「報道被害」と記してきたが、報道よる被害というよりも、社会的な実際問題は「マスコミ」による被害であるため、「マスコミ被害」という用語を使うことにした。
マスコミは「社会の木鐸」でない、市民社会と対立する「第四の権力」だ
一般市民が寄稿するPJニュース・オピニオンではこれまで、「マスコミ被害」の実態をレポートしてきた。それが思わぬ反響を呼び、主要なコンテンツになりつつある。これはある意味で皮肉なことである。つまり、マスコミが「社会の木鐸」や「ウォッチドッグ」といった本来的な機能を失い、パブリックから隔絶した「第四の権力」と変わり果ててしまったことを裏付けているからだ。
日本の新聞・放送業の業界団体である日本新聞協会と日本民間放送連盟はこれまで、「マスコミ被害」について自主的な改善策を打ち出してきたが、残念ながら具体的な成果は得られていない。むしろ、「マスコミ被害」は業界内の自助努力では済まされぬ問題に発展してしまった。その結果が、昨年12月末に決まった犯罪被害者等基本計画での警察による犯罪被害者の匿名・実名判断である。
ここでは「警察を信じるか、マスコミを信じるか」が問われたといわれるが、本質的には市民社会に対峙する、国家権力とマスコミ権力とを天秤にかけた信頼度についての審判だったのだろう。そして、国家権力に軍配が上がってしまった。
去年、戦後60年を迎えた。政府や政治家、省庁や官僚に対する戦争責任について問う報道は数多くあった。それはそれでいい。しかし、ついに戦前・戦中の大政翼賛広報機関と化した現存する大手マスメディアが、自らの戦争責任について言及することはなかった。
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市民社会から問われているのは、彼らが掲げる使命を、いかに愚直に遂行しているか、ということなのだ。マスメディア界はその自助努力でチェック・アンド・バランスが可能だと再三にわたって主張してきた。だが、昨今の頻発する不祥事からしても、もはやそれも空論、いや欺瞞(ぎまん)であることが判明してしまった。
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 小田 光康
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