白と黒を基調に、シルエットを重視した衣装に注目!/[c]2018 Twentieth Century Fox

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現地時間今月24日(日本時間25日)に受賞結果が発表される第91回アカデミー賞で、作品賞を含む9部門10ノミネートされている鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の最新作『女王陛下のお気に入り』(2月15日公開)。18世紀初頭のイングランドを舞台に、3人の女性たちが繰り広げる熾烈な争いを描き出した宮廷ドラマだ。

18世紀イングランドの宮廷を舞台にした女たちの熾烈なバトルを描く/[c]2018 Twentieth Century Fox

虚弱で気まぐれな主人公アン女王を演じるオリヴィア・コールマンをはじめ、女王の幼なじみで親友のレディ・サラ役のレイチェル・ワイズ、そして貴族への返り咲きを狙う召使・アビゲイル役を演じたエマ・ストーンの3人がそろってアカデミー賞の演技部門で候補入りを果たす快挙を成し遂げた本作。3人の見事な演技合戦も見どころのひとつだが、やはり歴史劇というジャンルに欠かすことのできない衣装デザインにも注目してほしい。

本作で衣裳デザインを担当したのは大御所サンディ・パウエル。これまで『恋におちたシェイクスピア』(98)、『アビエイター』(04)、『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(09)で計3度のアカデミー賞衣装デザイン賞を手にしている彼女は、今年は本作と『メリー・ポピンズ リターンズ』(18)の2作でダブルノミネート。これで14回目のノミネートを獲得し、現役のデザイナーでは最多を誇る。またどちらかで受賞を果たせば、コリーン・アトウッドとミレーナ・カノネロに並び現役デザイナー最多タイの受賞数となる。

先月都内で行われた本作の試写会イベントに登壇した映画評論家の町山智浩氏は、衣装について「画期的な時代考証無視の自由自在な衣裳デザインですばらしい」と熱を込めて絶賛。その言葉通り、本作で登場するのは従来の歴史劇のイメージを覆す衣裳ばかり。絢爛豪華な周囲の美術品と対照的に、異質な雰囲気を漂わせる白と黒の衣裳。そして当時は使われていなかった革やデニムといった現代的な素材の数々。

特別映像の中で、ランティモス監督は衣裳について「色を限定したらおもしろくなると思いついた」と述べ「シルエットが機能するなら、現代の素材でもなんでも試した」と、独特の世界観を築き上げる強いこだわりを語っている。またランティモス監督の要望に柔軟に応えたパウエルも、これまで彼女が衣装デザインを担当してきた他の歴史劇では用いられてこなかったような本作のアイデアを「型破りで突飛で、異例のイギリス歴史劇」と形容するほど。

パウエルは「ヨルゴスは、いかにも衣裳を着て歩き回っているようなのは望んでいなかった。 リアルで自然なものを求めていたの。彼は私に本当に多様なイメージを見せてくれました。その中で特に覚えているのは、イングマール・ベルイマンの『叫びとささやき』。 それが、映画がどのようになるのかをつかむ、最大の手がかりでした」と、インスピレーション源を教えてくれた。

さらに「私がしたことは、実際の裁断と衣服の構造はできる限り歴史的に正確にしつつ、実際の生地は伝統的でないものにする、ということでした」と続けるパウエル。「王室用にはシルクとサテンが使われるのが当時は普通でしたが、私たちはコットン、デニムを使用し、私が住んでいるブリクストンのアフリカ系プリント生地さえ使いました」と驚きの告白。

そんなパウエルが手掛けた劇中衣装の数々が、TOHOシネマズ六本木にて展示されている。しかもすべてオリヴィア、エマ、レイチェルの3人が撮影で着用した本物の衣装だ。実際に目の前で見てみることで、スクリーン上ではなかなか気付けなかった細部へのこだわりなども発見できるはずだ。映画本編を観る前でも観た後でも、ランティモス監督とパウエル、2人の天才が生みだしたもう一つの“傑作”を目に焼き付けてみてはいかがだろうか。(Movie Walker・文/久保田 和馬)