『君の名前で僕を呼んで』の原作者アンドレ・アシマン

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 世界中で大ヒットした映画『君の名前で僕を呼んで』の原作者アンドレ・アシマンが、2月8日(現地時間)、ニューヨークのJCCマンハッタンのイベント開催されたQ&Aで、映画化に至るまでの過程や製作時のエピソードについて語った。

 1983年、北イタリアの別荘で家族とひと夏を過ごすことになった17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は、考古学を教える大学教授の父が招待した年上の大学院生オリヴァー(アーミー・ハマー)と出会う。共に過ごす中、エリオはオリヴァーに恋心を抱くようになり、やがてその思いは通じるが、夏の終わりが近づくにつれてオリヴァーが避暑地を去る日が近くなる。ルカ・グァダニーノが監督を務めた。

 原作者のアンドレは、監督は必ずしも原作に従う必要はないと語る。「彼ら(製作陣)は、約5年かけて今作の監督を決めたんだ。その間、俳優が変わる度に監督も何度も変わったよ。脚本も何度か改稿されたんだ。製作陣には最初に『映画化を想定して書いたわけではないから、自分たちがやりたいように手掛けてくれれば良いよ。僕は口出しはしないから』と伝えたよ。僕の仕事は原作を仕上げることで、それはもう終わっているからね。実際に、映画には原作と異なる部分が結構あるんだ。例えば原作では、浜辺の近くに家(別荘)がある設定だった。けれど、製作陣から『浜辺にある別荘をたくさん探したが、見つからなかった。見つかっても、撮影を許可してくれない場所ばかりだった』と言われ、結局、全く周りに水(海や湖)のない場所での撮影になったんだ。でも、結果的にうまくいったと思っているよ。『やりたいようにやってくれ』と言ったのが功を奏したと思っているんだ」

 また、原作にはローマを舞台にする章もあったという。「二人(エリオとオリヴァー)が3日間ローマに行く設定だったのだけど、グァダニーノ監督は『ローマでのシーンを短くする』と言ってきたんだ。僕は『問題ないよ、そうしてくれ』と答えると、彼はさらに『実はかなり、ローマの箇所を削ることになるんだ』と付け加えてきてね。僕が『やりたいようにやってくれよ!』と返すと、再び申し訳なさそうに『実は……ローマの設定を全てカットすることを決めたんだ』と言ったんだ。僕は『問題ないから、謝るのはやめてくれ!』と言ったよ」

 劇中、使用されているクラシック音楽は、自身の小説の多くでも頻繁に使っているアンドレ。「クラシック音楽を使用すると、何かシリアスで特別な領域に入っていることを読者に知らせることができるんだ。それに、クラシック音楽は全く異なった世界に誘ってくれる。僕自身は、小説でクラシック音楽が流れる設定にすることで、読者を刺激しているんだ。よく僕の小説にロックの楽曲を入れれば良いんじゃないかという人がいるのだけど、僕はクラシック音楽の方がより好きだね。ロックも嫌いではないけれど、ロックだとストーリーよりも観客を強く刺激することはないと思っているんだ」とこだわりを明かした。

 『君の名前で僕を呼んで』の続編については「実は原作では、エリオとオリヴァーが別れてから、15年後、20年後も描いているんだ。続編で数年後を描くなら、それは(原作の)前日譚(たん)とも言えるね。だからある意味、続編(Sequel)でもなければ、前日譚(Prequel)でもなく、In-betweenquel(そういう言葉はない)と勝手に呼んでいるよ。新作では、3人の男(エリオ、オリヴァー、そしてエリオの父親)がどうなったか、彼らがいかなる選択をしたかが描かれているんだ」と明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)