バラしたのではなくこの状態で入手した

 新型スープラ=GRスープラの日本初公開で注目された今年の大阪オートメッセ。そのGRスープラが展示されたトヨタブースのすぐ隣の大阪トヨペットブースには、スープラの遠い先祖(?)、1960年代の名車、トヨタ2000GTが飾られていて、多くのファンが足を止めて眺めていた。

 この個体は、トヨタの往年のラリードライバーで、トヨタのワークスチームだったTTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)を率いた、オベ・アンダーソン(※)が、1989年のピレリ・クラシック・マラソンに出場し、約3000km走行したトヨタ2000GTそのものだった。

※オベ・アンダーソンは、KP61(2代目スターレット)CMに「ラリーの神様」というキャッチフレーズで出演。トヨタが2002年にF1に参戦したときは、TMGの代表として、F1チームの代表も務めた

 それにしても、シャシーとボディ、エンジンとミッションがセパレートして展示されているのは珍しい。

 なぜこのような展示になったのか。このトヨタ2000GTを出展した大阪トヨペットの広報宣伝グループ・モータースポーツ担当の加藤義久課長に話を伺ってみた。

「このクルマは、展示のために分解したのではなく、そもそもこの状態で入手したものなのです。前のオーナーさんが、レストアをしようとボディを板金し、スーパーホワイトでオールペンしたところだったのですが、当社のエンジニア、メカニックの教育の一環として、半世紀前の名車を自分たちの手で蘇らせることを目的に、あえて分解された状態の2000GTを探して入手しました」とのこと。

大阪トヨペットのメカニック全員でレストア予定!

 大阪トヨペットといえば、大阪トヨペットグループを母体とするモータースポーツチーム=「OTZモータースポーツ」として、スーパーGTのGT300クラスにも参戦していることでも知られている(マシンはレクサスRC F GT3 ゼッケン60番)。

 そうしたモータースポーツの最前線で、最新の技術を磨く一方で、クルマとしての原点を古いクルマから見直し、走る、止まる、曲がる根本を学び直そうという趣旨で、トヨタ2000GTを教材にした、レストアチャレンジ「プロジェクトR」をスタートさせるというのだ。

クルマ自体は、昨年の年末に我々の手元に届いたばかりで、本格的なレストア作業はこれからスタートです。本体以外パーツは何もないので、まずパーツリストの入手からはじめました。足りない部品は何か。ない部品はどうするのか。欠品パーツを探すのか。自分たちの手でつくるのか。本当にそこからはじめます」

 大阪トヨペットは、50店舗以上も事業所があり、360人のメカニックがいるそう。その360人を何らかのカタチで全員この2000GTのレストアに関わらせるのが、この「プロジェクトR」の方針だ。

 今後は、メカニックの研修センターにこのクルマを持ち込んで、メカニック全員の手で一から組み直し、技術の向上とともに、社員と社員の絆を深めることにも活用される。

「時間はかかるかもしれませんが、完璧にレストアさせて、サーキットも走れるほどクオリティの高い2000GTに仕上げます」と加藤課長もおっしゃっていたので、名車復活の日を楽しみにしていよう。