「最高権力者が天皇陛下だという勘違い」慰安婦問題で天皇陛下に”謝罪要求”、韓国では天皇=大統領という認識?

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 「天皇陛下が高齢者の手を握り"本当に申し訳なかった"と一言言えば、問題は解決されるだろう」。

 韓国の国会議長である文喜相氏が米ブルームバーグによるインタビューの中で、従軍慰安婦問題について述べた言葉が波紋を広げている。さらに文氏は、問題は解決済みとする日本の姿勢について「それは法的な謝罪だ。問題は被害者がいることだ」と指摘。さらに天皇陛下については「戦争犯罪の主犯の息子」と呼んだとも報じられており、河野太郎外務大臣は10日「韓国政府からもこの件について説明があった。発言には気を付けていただきたいと思う」と苦言を呈している。

■「日本の権力構造について理解している人が少ない」

 韓国政治に詳しい拓殖大学大学院の武貞秀士特任教授は「文国会議長は、もともと盧武鉉政権で秘書室長をやっていた人で非常に進歩的。したがって天皇陛下について、このように間違った認識に基づいて言及しそうな人物であったことは確かだ」とした上で、発言の背景について次のように推測する。

 「日本国憲法に天皇は"国民の統合の象徴"だと書いてあるし、"国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない"ということになっている。しかしこれを知っているのは、日本で4年間くらい大学に通って、日本の仕組みと心を若い時に理解した人だけだろう。韓国では大統領が全てを取り仕切るし、何万というポストすげ替えることもできる。だから韓国の人たちの中には、日本でも権力の中枢にいる人の一声で全ての問題が解決するはずだという考えがあるのだろうし、その最高権力者が天皇陛下だという勘違いがあると思う。私も韓国の大学で教壇に立ったし、友人もたくさんいるが、"天皇陛下の鶴の一声で全ての問題が解決できるのではないか"と思っていたし、"天皇陛下が謝ればいいじゃないかと"平気で言う大学の先生もいる」。

 朝日新聞によると、インタビューに同席した韓国国会の報道官は、文議長が天皇陛下を「戦争犯罪の主犯の息子」と呼んだことについて、「戦争当時の天皇の息子」と述べたと思うと話しているという。これについても武貞氏は、「ブルームバーグが英訳するときに"war crimes"という独特の言葉を付け加えたとは思えない。日本人として戦わされたからだと言われればそれまでだが、韓国の人が連合国の立場に立ったかのような言葉遣いをするのはおかしい」と指摘する。

 「李明博元大統領が竹島に上陸したとき、"日本から抗議がきても大丈夫だ。日本の国際社会への影響力はそれほどでもなくなってきているから"と言った。それまで日本に対して言いたいことがたくさんあったが、喧嘩すれば技術が来なくなる、お金も貸してくれなくなる、という感覚があった。しかし北朝鮮の脅威が低下し、日本がダメでも中国が助けてくれるという自信が出てきた。ロシアとの関係も良くなりつつあるので、日本とアメリカとの関係が悪くなっても安心している」。

■韓国の学校教育とマスコミにも遠因?

 ジャーナリストの崔碩栄氏は「文氏が個人的にそう思っていたのかもしれないけれど、国会議長という立場で外国のメディアに言うのは不適切で軽率だと思う」と話す。

 崔氏によると、韓国国内では文氏の発言そのものよりも、日本側の反発についてフォーカスした報道が多いのだという。実際、朝鮮日報(9日)は「絶対に実現しない文喜相提案だが、日本のやつらをムカつかせブチギレさせるには最高の発言だ」「また謝罪を求めるの?韓国の政治家たちは国の品格というものを考えろ」との読者のコメントを紹介。中央日報(11日)も「韓日両国間の新たな外交争点に広がる兆しだ」と報じているという。

 「韓国で育った経験からすると、教育やマスコミ報道など、直さなくてはいけない問題があると思う。たとえば教科書にも間違った内容が結構入っているし、私が中学・高校生にだった80〜90年代よりもそれは増えている。例えば2010年以降に出た教科書に掲載された、日本統治時代に強制連行された朝鮮人労働者たちだという、身体も服もボロボロになった写真があるが、実は日本人労働者の写真だった。しかしこれが徴用工裁判のニュースでもずっと使われていた。こういうのを見ていると、子どもたちが日本に対して良くない感情を持つようになると思う。韓国にも保守とリベラルがあり、国内政治に関しては互いに検証したり批判したりするが、日本に関しては間違っていても何も言わない」。

 また、一水会の木村三浩氏は「2000年に金大中大統領が"これからの日韓関係は未来志向で行こう"と言って以来、韓国メディアでも天皇陛下のことを「日王」と表現するのをやめていた。文氏の発言は、その時代の名残なのかもしれないし、このパフォーマンスによって、政権の反日的な姿勢に乗ろうという姿勢がありありと見える。政治利用だと思う」と批判した。

■「今は日韓が仲良くなる必要はないのではないか」

 歴史を振り返ってみると、韓国による天皇陛下への謝罪要求はこれまでにも行われてきた。2012年、李明博大統領(当時)が天皇の訪韓に関して「独立運動で亡くなった方々を訪ねて心から謝罪するのであれば来てほしい」と発言。これに対し日本側は発言の撤回を求める決議を国会で採択した。

 また、天皇陛下は1990年に盧泰愚元大統領が来日した際、宮中晩餐会で「我が国によってもたらされた不都合な時期に貴国の人々が味わわれた苦しみを思い、私は痛惜の念を禁じえません」とのお言葉を述べられている。

 武貞氏は、90年の陛下のお言葉について「謝罪そのものだと思う。このままでは、どんな謝罪の言葉を使ったとしても向こうは謝罪と受け止めてくれないのではないかと日本人は思い始めてしまうだろう。政権が変わるたびにこのような要求が出て、そして賠償という形で幾らか包む、という形が続けば、心の痛みなどではなく、政治的な活動、政治利用なのではないかと思ってしまうはずだ」とし、「当面、日本と文在寅政権との関係が良くなる糸口はあまりないから、ひたすら残りの任期を我慢して、次の政権を待つしかないのではないか。長期的に見れば、日本には韓国からの観光客もたくさん来ているし、国民同士の関係はそんなに悪くないので、若い人たちが責任ある立場になる10年、20年先の、お互い許し合うような日韓関係に期待したい」とコメントした。

 崔氏は「2、3年経てば国民の記憶も薄れていくし、学校やマスコミが言わないので、天皇陛下や政治家の発言も忘れている人が多い。そして韓国でいつも言っているのが"心を込めた謝罪が必要だ"ということ。しかしそれは"誠意を見せろ"みたいな話で、謝罪を受ける側が判断すること。だから結局、終わりはない」として「日本との関係についての良いニュースがあまりないので、価値観や考え方が違うのならある程度距離を置くということがあってもいいし、それは別に仲が悪いということではない。韓国の国民も今の雰囲気にうんざりしている人も多いと思うが、今は日韓が仲良くなる必要はないのではないか」と話していた。


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