トイザらス(Toys “R” Us)が復活に向けた準備を進めている。

この取り組みを支えているのは、トイザらスでチーフマーチャンダイザーを務めていたリチャード・バリー氏率いるトゥルー・キッズ(Tru Kids)だ。同社はトイザらスブランドの権利を所有しており、経営破綻したトイザらスの元幹部らが働いている。トゥルー・キッズという名前がはじめて登場したのは、2018年12月11日付けの裁判所の文書だった。その後、2019年1月22日に同社はニュージャージーで設立された。米DIGIDAYは、バリー氏ほかトゥルー・キッズで働いている人たちにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

トイザらスが再建されるとすれば、これまでのブランド名の下で、小規模なブティック型の店舗体験を提供するというまったく新しいモデルを採用せざるを得ないだろう。かつて大きな店舗と豊富な品揃えで勝負していた大規模小売店にとっては、難しい方向転換だ。オンラインショッピングやオンラインマーケットプレイスが台頭するなか、物理店舗は付加的な存在になっている。したがって、いまはなきブランドが復活を果たそうとするなら、オンラインと実店舗を組み合わせ、いままでにない店舗体験を実現しなければならないだろう。

いま学ぶべき先例



「ブランドのもつノスタルジアを感じさせないような新しい体験を構築する必要がある」というのは、ブランディングエージェンシーのレッド・ピーク・ブランディング(Red Peak Branding)でCEOを務めるスーザン・カンター氏だ。「これまでよりはるかに専門性を高め、商品を選びぬかなければならない。ほかのクールなブランドがいる場所に向かう必要があるのだ」。

カンター氏によれば、トイザらスには学ぶべき先例があるという。それは、150年にわたって経営を続けた末、2015年に閉店した老舗玩具店のFAOシュワルツ(FAO Schwarz)だ。2018年後半に入ると、FAOシュワルツはロックフェラーセンターに再び店を構えたほか、空港で店舗を増やすなど新しい取り組みを行っている。

トゥルー・キッズは、トイザらスに代わって市場を席巻した小売企業とも競争しなければならない。トイザらスの経営破綻後、ウォルマート(Walmart)やターゲット(Target)といった大手小売業者が、玩具市場で自社製品の取り扱いを増やしているのだ。ターゲットは、2018年のホリデーシーズン中に、店舗内の玩具売り場を拡大。500の店舗に合わせて25万平方フィート(約2万3000平方メートル)の売り場を設け、玩具やブランド限定商品を販売した。ウォルマートは同じ時期、玩具売場を「アメリカズ・ベスト・トイ・ストア(America’s Best Toy Store)」という新たなブランド名で展開。品揃えの拡充、ウォルマート限定ブランドの導入、YouTubeのインフルエンサーを使ったマーケティングなどに取り組んだ。

継続的な収益が必要



市場調査会社のNPDグループ(NPD Group)によれば、米国の消費者が2018年に購入した玩具の金額は217億ドル(約2兆3760億円)で、前年より2%減少した。それでも、トイザらスが店舗のレイアウトを見直し、顧客の店舗体験を高め、新しい収益モデルを考え出せば、自力で復活することは可能だと、デジタルマーケティングコンサルタントのジャッジ・グラハム氏はいう。10月にはプライベートブランドの製品を提供する計画が報じられたが、こうした取り組みは復活を後押しするものとなるだろう。

「彼らが復活するには、以前より規模の小さい店舗で、ユニークな製品ラインと、子供たちが来たくなるような店舗体験を提供する必要がある」とグラハム氏はいう。「スティッチ・フィックス(Stitch Fix)のように、何か革新的な取り組みによって継続的な収益モデルを構築できれば、実に素晴らしいことが起こるだろう」。

顧客を店につなぎとめる方法としては、映画の公開に合わせたイベントを開き、その映画に関連した限定商品を発売するといったやり方があるかもしれない。一方、eコマースサイトでは、詳しい製品ガイドや比較ツールを提供することで、店舗体験を再現できる可能性がある。

ほかにもある懸念事項



ただし、こうした取り組みを効率的に行うには、店舗体験に革新をもたらしながら,競争力のある価格設定を行う必要があると、グローバルデータ・リテール(GlobalData Retail)のマネージングディレクター、ネイル・サンダース氏は指摘する。顧客が価格を簡単に比較できるいま、わずか数ドルの差が大きな違いを生み出す可能性があるのだ。

一方、高いブランド認知度を新しい店舗体験やeコマースと組み合わせるだけで、昔ながらの小売モデルを競争の激しい市場で再建できるのか、疑問視する向きもある。フォレスター・リサーチ(Forrester)の小売アナリストで、トイザらスの元社員でもあるスチャリタ・コダリ氏もそのひとりだ。

「人々が(ブランドを)復活させたいと考える理由は、まだ残っているブランド価値をなくなる前に使ってしまいたいからだ」と、コダリ氏はいう。「(ディスカウントショップの)サーキットシティ(Circuit City)は、ブランドの再建を試みたが、大してうまくいかなかった。今回も同じようなことになるのではないかと私は疑っている」。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:ガリレオ)