「ブス」なんて言葉は、この世から消えてよし。 CHAI流・自分の愛し方

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”かわいくない人なんていない”ということを「NEOかわいい」と表現し、「コンプレックスはアートなり」というコンセプトを掲げる4人組のバンド、CHAI。

突き抜けた世界観の楽曲やMVは、くるりの岸田繁氏や、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文氏などが絶賛。昨年の「フジロックフェスティバル」では超満員の観客を沸かせ、さらにロサンゼルスやニューヨークで冠ツアーを完売させるなど、今もっとも勢いのあるバンドのひとつだ。

ルックスに対するコンプレックスを「個性」として捉えるスタンスに老若男女の支持を増やしているが、彼女たち曰く「学生時代は下を向いていた」。生まれ変わるきっかけは何だったのだろうか?

撮影/横山マサト 取材・文/石角友香
▲左から、ユウキ(Ba/Cho)、カナ(Vo/Gt)、マナ(Vo/Key)、ユナ(Dr/Cho)。

目立ちたくなかった学生時代

みなさんは、もともと学生時代に出会った4人なんですよね。
マナ そうです。私と双子のカナと、ユナが同じ高校の軽音楽部で。その後出会ったユウキをスカウトしてCHAIになったんだよね。
学生時代はまだ、今のように「コンプレックスはアートなり」と楽しむスタンスではなかったそうですね。
ユナ 学生時代はほんとに目立ちたくなかったし、エラが張ってるのがコンプレックスで隠してたし、うつむき加減で下ばっかり見てた。
マナ うん。クラスでいう中心メンバー、いわゆる“目立つ女の子”のグループには絶対入らない人たちだったから。
目立つ女の子のグループじゃないってことに、モヤモヤを感じていたということですか?
マナ その子たちはその子たちでいいし、そこに「頑張って入ろう」って思うこともなかったんだけど、どうしてか「あの子たちは私よりかわいいから…」って気持ちになっちゃうんだよね。「かわいい」がそこにしか存在しないことに、すごい違和感があった。なんであの子たち以外は、みんな「ブス」になっちゃうんだろう?って。
▲メンバーに聞く、マナ(下写真・1番右)の良いところは…「気遣いができる、CHAIの中心!」「今の髪型めっちゃいいよね」「前髪伸ばしたの、正解!」「ショートパンツが似合うよね〜」

「ブス」は価値観の勝手な押し付けだ

CHAIの皆さんは「ブス」という言葉をどのように捉えていますか。
マナ そもそも「ブス」っていうものが存在しないと思う。
その心は?
ユウキ 主に見た目のことをブスって言うじゃん。で、なんだろうな…。CHAIが思う「かわいい」は、その人だけが持っている「その人らしさ」だと思うから、かわいいに正解はなくて、ハズレもない。全員が「かわいい」と思うの。100人いたら100種類の「かわいい」があるから、逆に言えば「ブスの正解」もないでしょって思っちゃう。
「性格がブス」っていうのも存在しないと思いますか?
カナ 「性格が悪い」っていう瞬間はあると思うよ。でもブスっていう言葉はそれとは違うよね。言葉自体が暴言っていうか、人をけなす言葉でしかないから、そんな言葉はなくなればいいと思う。
マナ・ユウキ・ユナ うん。
カナ 「ブス」って言われて傷付いた女の子はこの世に何人いるんだろう、って思う。なんでそんなこと言うの? って、昔からふつふつとした怒りしかないから。実際に言われたことあるけど、ほんとに傷つく。性格が悪い子はいるかもしれないけど、ブスはいないと思う。
ユウキ 「ブス」って、人に対して自分の勝手な価値観を押し付けるだけで、言われてうれしくもなければ、言って良いこともない。誰の得にもならない。
▲メンバーに聞く、カナ(写真右から2番目)の良いところは…「落ち着きが素敵♡」「音楽の天才!」「引き出しが多くて、センスがいい」「一重が似合ってて、眉毛が最高にかわいい」
最近、「ちょうどいいブス」という言葉がSNSなどで波紋を呼んでいましたが。
ユウキ なにそれ?
カナ ほんとはブスなんて言われるのは嫌なのに、それを自分で受け入れるための言葉なのかなあ。
ユウキ 「私はちょうどいいんだ」って納得できる、みたいなことかもしれない。そうだとしたらその気持ちはちょっと分かるけど、でも「そんなふうに思わないで」って言いたいな、CHAIは。
ユナ 自分のことを下げなくていいよね。
「自分なんかが自信を持ったら、叩かれるんじゃないか?」って怯えているというか。皆さんは実際に、自分に自信を持ってみて悪かったことってありますか?
マナ 全くない。
ユウキ まず自分が変わるから、人がなんだかんだ言うことにいちいち砕けないし、左右されなくなる。強くなるよね。自分が自分の味方になれば、「ブス」なんて言葉は攻撃だと思わなくなるんだと思う。
▲メンバーに聞く、ユウキ(写真・上)の良いところは…「不思議なオーラがたまらない!」「神秘的な魅力がある」「服が何でも似合っちゃう!」「自分の言葉を持ってる!」「運動神経もいい!」

ほめられて「ありがとう」と答えたら、自分を肯定できた

変われたきっかけが、皆さんにとってはCHAIの結成だったんですね。
マナ そう。「私たち、すごいコンプレックスが多いね」って言い合えてから。
海外ツアーも増えて、CHAIの皆さんの「コンプレックスはアートなり」という主張が伝わっている実感はありますか?
マナ 伝わっているなと思う。海外のライブMCで、「私は鼻が低い」「目が小さい」とか英語で言うんだけど、なんとなくみんな分かってくれるから、みんな同じ悩みがあるんだなって知った。
ユウキ ちゃんとコンプレックスは持ってて、それを肯定してるっていうのも伝わってて。
海外の女の子は、どんな風に映りましたか?
マナ 特にアジアに行って思ったけど、強いね(笑)。日本の女性も強いなって思うことはあるけど、それ以上に強くて、びっくりだった。とにかく主張の強さ。例えば並んでる列があったら、追い抜かすのが当たり前。力強く立ってないと抜かされる(笑)。
ユウキ 自分主体で生きてる感じ。「自分です!」「私の順番です!」って。
カナ 私たちもどこか引っ込み思案っていうか、ちょっとシャイなところがあるのは「日本人っぽい」のかなとは思う。
皆さん、いろんなコンプレックスを乗り越えて、解放されてるように見えるんですが、それでも自分は引っ込み思案だなって思うことはあるんですか?
マナ 全然あるよね?
ユナ まだ普通に悩むしね。むしろ悩みは増える(笑)。
それは外見的なことでも?
ユウキ 外見もそうだし、中身でもそうだし。生まれてくる悩みを、進行形でポジティブに変えていってるって感じ。
▲メンバーに聞く、ユナ(写真・1番左)の良いところは…「いつも同じテンションでいてくれる、太陽みたいな人」「人を笑顔にする天才!」「話のうまさが芸人並み」「ラジオとかやってほしい!」
どうやってポジティブに変えられるようになったんでしょうか。
マナ 私たち4人が出会ってから自然とそう変わっていったよね。普段からお互いをほめ合うようにしたりとか。そう、そこからかな。

朝起きたら鏡に向かって、「私はかわいい。私は今日もできる!」って、自分を褒めて。仕事で憧れの人に会う日は、「私の周りにはキラキラが飛んでる!」と思って玄関を出る。「私はキラキラしてるんだ!」っていうイメージで外に出ることで自信を持った自分になれる。
カナ 私もCHAIに出会ってから変わったな。考え方とか好きな音楽も似てて。服装も趣味もなんとなく一緒だったから、4人で「これがかわいいよね」「こうなりたいよね」っていうのを言い合ううちに、だんだん自分に自信が持てるようになって。

今でもコンプレックスはあるけど、前ほどはない。私が言われたかったことをユウキがCHAIの歌詞にしてくれるから、演奏しててすごい自信になるし、CHAIに救われてる感じがするな。
皆さん、CHAIという場所を得てポジティブになれたと。普段、学校や職場での自分に悩んでいる人も、そういう糸口を見つけることは可能だと思いますか?
マナ できる。CHAIができたんだから、できるよ(笑)。
例えばどういうアクションから始めればいいと思いますか?
ユウキ まずは人のことを素直にほめれるようになったらいいのかな。自分と相手は違うんだっていうことをちゃんと理解したら、相手の魅力に嫉妬ではなく、「素敵だね」「いいね」って言葉が出ると思うし、素直に出れば、相手も返してくれるから。
マナ 日本って、あんまり人のことをほめないじゃん? ほめたとしても嫉妬が混じっちゃうというか、本心から言ってない感じがあるから、答えも「そんなことないよ〜」になっちゃうみたいな。

でもCHAIのみんなにほめられたときは、「ありがとう」って返せて、その会話の投げ合いにはなんの嫉妬もしがらみもない。それって素晴らしいことだなと思ったし、「ありがとう」って言えたことで、自分のコンプレックスを魅力として初めて飲み込めた。だからCHAIの歌詞は、すごくちっちゃいほめ合いから生まれたりしているよ。

ファンの変化を感じるのはすごくうれしい

ファンの人のポジティブな変化を感じたりもしますか?
マナ ファンの方はCHAIの伝えたいことを感じてくれていると思う。絵を描く高校生の女の子が、「今までピンク色を使えなかったけど、それは男の子に“ブス”って言われたからだった。でもCHAIに出会って、ピンク色で絵を描けるようになった」とか、そういうの知ると「良かったな」と思う。
ユウキ ツイッターでも見たよね。お母さんがツイッターでつぶやいていたんだけど、娘さんが男の子に「おまえはブスだ」って言われたときに「違う、私は“NEOかわいい”だもん」って言い返してて、お母さんもうれしく思った、みたいな。ちゃんとちっちゃい子に伝わっていて、うれしかった。
うれしいですね。ところでこの1年ほどで、いろんな経験をしてきたと思いますが、どんな経験が今回のアルバム『PUNK』に活きていると思いますか?
▲『PUNK』のリードトラック「CHOOSE GO!」。
マナ 去年は初めての海外リリースがあったり、ツアーで回ったりして、愛をいっぱいもらって。どの人に会っても「君たちはスペシャルだ」ってほめてもらえることが何より自信になった。自分たちでも自信はあったつもりだけど、やっぱりどこかで揺らぐこともあるから、「私たちの考えでいこう」って思える2018年だった。

その最後が「Superorganism(日本人の野口オロノがボーカルを務める多国籍バンド)」とのイギリスツアーで、そこで“PUNK”って言葉が自分の中に生まれたんだけど。ボーカルのオロノちゃんがすごい人間らしくて、暴言吐きたいときは吐くし、機嫌悪いときは悪いし、元気なときはすっごい元気だし、その姿に刺激を受けて。わがままだし人間らしいし、パンクだなって思って。私たちもパンクに生きようと思ってアルバムタイトルも『PUNK』になりました。
オロノさんはライブで「オロノ“ちゃん”って言うな!」って怒ってたみたいですね。
ユナ 言ってた(笑)。
マナ “社長”か“オロノさん”って言え、って(笑)。すごく愛らしいし素直なんだよね。「なんで私がこんな曲を歌ってんの」とか怒ってて、「それ自分の曲でしょ?」ってツッコミたいんだけど(笑)。でも、その気持ちってパンクだなと。なりたい方向になる、それを想像して進むのって、パンクだと思います。
このアルバムはサウンドもアレンジも成長したという印象がありますが、自分ではどんな部分が成長したと思いますか?
ユウキ 今、このアルバムをライブで見せるための練習をやっていて、自分たちで考えたのにめっちゃ難しくて。でも難しいと思えるってことは前より進化してるし、進化したものを作ったからこそ難しいと思えるわけで。
マナ 自ら成長を作り出して、実際に成長してると思う。「私たちすごいね!」って話してます(笑)。
CHAI(チャイ)
双子のマナ(Vo/Key)、カナ(Vo/Gt)、ユウキ(Ba/Cho)、ユナ(Dr/Cho)の4人組「NEO-ニュー・エキサイト・オンナバンド」。2017年4月リリースの2ndEP収録曲「sayonara complex」のMVがくるり岸田氏、ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤氏ら数々のアーティストから絶賛。FUJI ROCK FESTIVALでのROOKIE A GO-GO(新人ステージ)は前代未聞の過密状態に。同年、1stアルバム「PINK」をリリース。以後、2度目のアメリカツアーなどを経験。2018年、経済誌「Forbes Japan」の【世界を変える「30歳未満の30人の日本人」】にも選出。

作品情報

オリジナルアルバム『PUNK』
2019年2月13日発売
2,400円+tax(CD)

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、CHAIのサイン入りポラロイドを3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2019年2月13日(水)12:00〜2月19日(火)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/2月21日(木)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから2月21日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき2019年2月24日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
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