嵐会見では質問者の「立ち位置」が大きく注目された

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 1月27日のの活動休止発表会見から2週間が経った。会見では、記者の一人から「多大な功績を残されてきて、『お疲れさまでした』という声も多々あると思う一方で、やっぱり無責任じゃないかという指摘もあると思うんです」という質問が出たことが、大きな注目を集めた。ネットやテレビなどでは“無責任”という言葉が大きくクローズアップされ、そういった質問をすること自体が失礼ではないか、という論調も目立った。

【写真】2020年末の活動休止まで大忙しの嵐

 自他ともに認めるジャニーズファンの日本テレビの青木源太アナもツイッター上で、〈無責任という言葉が会見で出ましたが、それはさすがに違うかと。あの場にいてとても悔しくて悔しくて。〉と呟いた。

 これに対し、東スポWebが2月3日に『嵐の活動休止会見で涙した日テレ・青木アナは“責任放棄”』と題した記事を配信。〈取材する側にいる人間がこういうことを記すのは「報道する側が報道の自由を放棄した」と見られても仕方がない〉〈会見で青木アナが泣きながら質問する場面もあったが、公正中立な立場を求められるアナウンサーが泣いてしまっている時点で、すでに中立な立場ではなくなってしまっている。これでは“アナウンサー失格”と言われても当たり前だろう〉などと報じた。

 すると、今度はネットを中心に、青木アナの言動について「メディアにいる人間としてどうなのか」と批判する声も目立ち始めた。

 同日、青木アナはツイッター上で、記事のリンクを貼った上で〈私の言動で不快な思いをされた方々、申し訳ありませんでした。ご批判やお叱りの言葉をしっかりと受け止めたいと思います。〉と謝罪。「無責任」という質問に批判が飛んだかと思えば、それに疑問を投げ掛けた青木アナが今度は矛先を向けられ、ネット世論は二転三転した。

 ファンであることとメディアにいることは両立できるものか。高校時代から田原俊彦に興味を持ち始め、24年間追い続けた結果、昨年『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)を書き上げるに至った芸能研究家でライターの岡野誠氏が話す。

「取材をする時、対象者についてどのくらいの知識を持っているかは重要です。物事に対する着眼点や分析力は、知識量にある程度比例する。たいして調べもせず、ありきたりな問答で終わる無味乾燥なインタビューや記者会見は往々にしてあります。その中で、ファンであれば、他のマスコミ陣が知らないような情報を持っていたり、長年追い続けてきたりしたからこその分析ができるケースもある。独自の視点を生み出せるため、ファンであることは強みにさえなると思います。

 熱意や愛情の感じられない指摘や物言いは、取材対象者に単なる批判と受け止められる危険性を孕んでいる。逆説的にいえば、『好き』であることで『批評』が成立しやすくなる面もあるかもしれない。ただし、感情が客観的事実を上回ってはいけない。感情があったうえで、膨大な事実を元にした冷静な分析を積み重ねた時、初めて効果的に取材対象者に接することができるようになるのではないでしょうか」(岡野氏・以下同)

 過去の記者会見報道を振り返っても、質問者である記者やアナウンサーの立ち位置がこれほどクローズアップされたケースは珍しい。

「単独インタビューなら1人で何問も質問できるが、会見では1人1問程度しかできない。1対1の取材では聞き手自身が1人で硬軟織り交ぜて、全体のバランスを調整できる。しかし、何人もの記者が出席する会見は全員のチームプレーでバランスを取るしかない。そういう意味で、『無責任』という言葉の含まれた厳しめに思える質問も、青木アナのようなファン目線の優しい問い掛けも、どちらも必要なパーツだったと言える。会場にいる記者のなかには全体のバランスを考えて質問している人もいるはず。全体的に柔らかい質問が目立ちましたが、特定の発言だけを切り取って批判するのはかわいそうだと思います」

 ネット上では、嵐にとってあまり厳しい質問が出なかったことも指摘されている。タレント自身は、批評のない状況をどう考えているのだろうか。

 かつて田原俊彦が、主演ドラマ『教師びんびん物語II』(フジテレビ系)の最終回が『月9』初の視聴率30%超えを達成し、主題歌『ごめんよ涙』もオリコン1位に輝くなどノリに乗っていた1989年当時、こう語っていたという。

〈なかなか言ってくれないんだよね、悪いことっていうのは。だれも悪者になりたくないからさ。聞く耳持たずに我を通しちゃうような人だとなおさらだよね、まわりにとってスターっていうのは怖い存在だから〉(『PLAYBOY』1989年8月号)

 嵐の櫻井翔も、会見翌日の『news zero』(日本テレビ系)で「(無責任じゃないかという指摘もあるという)あのご質問をいただいたおかげで、結果としてきちんと我々の思いの丈が温度を乗せて伝えることができた」と感謝を述べた。

「芸能界の頂点に立った人たちの偽らざる本音だと思います。過度に気を遣われて、当たり障りのない質問ばかりされるのは、実は最も避けたいことではないでしょうか。

 私が初めて田原さんに取材した2009年、当時年に数本しかメディア出演のなかった彼に『ドラマのオファーがあると聞きますが、なぜ出ないんですか?』『テレビに出た時、なぜ感じ悪くするのですか?』『マッチを羨ましく思わないですか?』などと尋ね、一問一答に終わらせないよう、しつこく聞きました。最終的には『12年間ライブを観ているが、最近やらなくなった振り付けがある』とまで指摘しました。

 ライブを毎年観に行ったり、過去の資料を読み込んだりした結果、こちらが本気で向かっていけば、本気で返してくれる人だと確信していたからです。これらの質問に、田原さんはとても真摯に答えてくれました」

 礼賛100%ほど怖いものはない。過度な傾きは何かのきっかけで、一気に真逆に転換するとトップアイドルたちは知っている。

「必ずしも寄り添う質問が善で、厳しい質問が悪ではない。その逆もまたしかりです。メディアは取材対象者を調べ尽くし、敬意を持って、自主規制をせずに聞きたいことを聞く。愛のある批評や礼儀を持ち合わせた上での厳しい質問は、タレント本人たちが最も望んでいることだと思います」