“227億円”損害発生時点から払うのが常識(C)日刊ゲンダイ

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 厚労省「毎月勤労統計」の不正調査の一件。過少給付だった雇用保険などが今後、追加給付される見通しだが、給付額に「延滞金」が含まれていないことが、日刊ゲンダイの取材で分かった。国は、国民が税金を滞納すると問答無用に高額の延滞金を課すのに、自らの“滞納”はおとがめナシ。二枚舌の極みである。厚労省にワケを聞くと、世間では通用しない屁理屈が返ってきた。

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 不正調査は2004年から始まり、15年にもわたって、約567億円、2000万人分の雇用保険や労災保険などが少なく支払われていた。

 厚労省は、本来支払われるべき額との差額を追加給付するが、差額が現在の価値に見合うよう「加算額」を加える。15年も時間が経過し、お金の価値も変わっているから調整するのだ。「基準は検討中です」(労働基準局労災管理課)という。

 では、本来払われるべき時期にもらえなかったことによって生じる遅延損害はどうか――。受給者が国にお金を貸していたようなものだから、当然、金利(延滞金)が発生している。厚労省は「追加給付に、金利や延滞金は入っていません」(労災管理課)と答えたが、ちょっと待った。

 住民税の滞納や大企業の下請け代金遅延には、年14・6%の延滞金が課せられる。未払い賃金だって、企業は年6%(当該社員が会社に在籍)〜14・6%(同退職)を加えた賃金を払う。今回過少給付だった雇用保険や労災保険も賃金のようなものだ。国が遅れて払う場合だけ、延滞金が免れるのは納得がいかない。

■損害発生時から払うのが常識

 厚労省に理由を聞くと、とんでもない答えが返ってきた。

「(延滞金を支払うという)法令上の規定がない」(職業安定局雇用保険課)、「新しく公表された集計や再計算に基づいて、現時点で、支給すべき金額が出てきた。遅延損害が生じているとは考えていない」(労災管理課)。

 いやいや、問題が顕在化したのは今だが、未払いによって受給者が被った損害は15年前から始まっているのだ。労働問題に詳しい中川亮弁護士が言う。

「国も想定していなかった事態なので、規定がないのでしょう。一般法に従えば、本来もらえるべき時点から、遅延損害が発生していることになります。民事なので年5%です。常識的には支払うのが普通でしょうね。今回の過少給付は、国民にまったく非はなく、すべて国の不手際です。国は遅延損害金も含めて支払うべきです」

 総額567億円の過少給付について、15年間で毎年、均等に発生したと仮定し試算すると、年5%の遅延損害金は227億円にもなる。少なくない額で、批判も予想されるが、政府を挙げて自分たちの報酬を削ってでも支払うべきだ。