【マニラ=吉村英輝】オーストラリア政府が、中国による内政干渉に警戒を強めている。

 経済交流の活発化を受け、豪州国内には中国から大勢のビジネスマンや留学生が流入したが、中国共産党がこれらの中国系住民を使い、政治的圧力を豪州に加え続けているためだ。モリソン政権は、中国を念頭に整備した反スパイ法なども使い、厳格な対応を粛々と進めている。

 豪ABC放送(電子版)によれば、豪州政府が8日までに、同国内で事業を拡大しながら、巨額の政治献金を行っていた中国人の黄向墨氏の居住権を剥奪したと伝えた。中国共産党とつながって「内政干渉」を行い、スパイ活動の疑惑があったという。

 黄氏は、2011年に豪州に移住して不動産業などで成功を収め、豪州国内で複数の政党に、少なくとも200万豪ドル(約1億5600万円)を寄付してきたとされる。

 豪州の防諜機関、保安情報機構(ASIO)は15年、黄氏を含む複数の中国人について、中国共産党との関係を指摘したうえ、国会議員らに、これらの人物から資金提供を受けることが「危険」だと警告していた。

 黄氏から献金を受けていた野党・労働党の政治家が、党の方針に反し、南シナ海問題で中国の主張を正当化するような発言していたことも報道で明らかになった。この政治家は、捜査対象になっており盗聴されていることを黄氏に漏らしていたことも分かった。

 報道によれば、黄氏への居住権剥奪の決定は、黄氏が海外出国中の数カ月前に行われ、事実上の「入国拒否」処分となった。黄氏が申請していた豪州の市民権についても、付与しない決定が下された。

 豪州では、中国でのビジネス経験があり、「親中派」ともされたターンブル前首相が、黄氏ら国内の中国人実業家らによる内政干渉疑惑の持ち上がりを受け、対中強硬姿勢に転換。連邦議会は、外国からの政治献金を禁止する改正選挙法を可決させ、外国からのスパイ活動などを阻止するための法律も成立させた。

 後継のモリソン首相も、“ビジネス”を名目にした中国によるスパイ活動の防止に向け、本腰を入れ始めた形だ。

 豪州政府の一連の措置について、黄氏はメディアに対し「偏見に満ちた根拠のない臆測に基づいた措置だ」と批判している。