SNSに触れて、知らない自分にも出会えた――リスタートを切った稲垣吾郎の新たな発見

草なぎ剛、香取慎吾らと『新しい地図』を立ち上げてから約1年半。稲垣吾郎に新しい環境になってからの変化を尋ねると、「SNSを始めたのが一番大きいですね」と語る。

稲垣はTwitterとブログを更新しているが、これまで触れてこなかったSNSを自身で更新するようになってから発見も多いという。そのなかでも、ファンの声がリアルタイムで届くようになったのは、彼にとってとても大きなことだ。

ある種、“雲の上の存在”のようなイメージを抱いていたが、インタビューでは、自分の思いを素直に伝えてくれ、Twitter上での草なぎと香取のやりとりについて「まあ、うわべの交流ですけどね(笑)」と冗談を交えるなど、親しみ深さを感じる人であった。

2月15日から公開される主演映画『半世界』でも、これまで彼に抱いていたイメージが一変するような、“泥臭い”稲垣吾郎を見ることができる。

撮影/祭貴義道 取材・文/馬場英美 制作/iD inc.

新しいスタート。不安もあったが前向きな気持ちが強かった

映画『半世界』で稲垣さんが演じられたのは、山中の炭焼き窯で備長炭を作っている男・高村 紘。稲垣さんには勝手に都会的なイメージを抱いていたので、とても意外な配役に思いました。
僕自身もすごく驚きました(笑)。たしかに僕はこれまで特殊な役というか、敵役やナルシスティックな役を演じることが多かったので、紘のような市井に生きている男を演じるのは初めてでした。
紘は生まれてから一度も地元を出たことがない人間で、どちらかというと地味なキャラクターだと思いますが、どのような印象を抱きましたか?
不完全なところも含めて、とても人間味があると思います。自分の魅力に気づいていない男でもあって、自分に対して無関心という意味でも初めて演じるタイプでした。

繰り返しになってしまいますけど、僕は自意識の強い人間を演じることが多かったので、自分でも新鮮でした。
そういう意味では、稲垣さんにとって、この作品は挑戦だった?
自分を変えてくれる新しい作品になる予感はありました。俳優はつねに体験したことのない現場や、演じたことのない役や作品を追い求めているものなので、このうえない作品に出会えた気がしました。

かつ、このお話をいただいたのが、『新しい地図』を立ち上げてすぐのときだったので、感慨深いものはありましたね。
本作で描かれる“ある地点に差し掛かったときの葛藤や不安、その先にある希望”が、『新しい地図』を立ち上げたときの思いと共鳴するところがあったのでしょうか?
ありましたね。お芝居というのは、演じている本人が透けて見えてくるものだし、映画を見てくださる方がそういう目で見てしまうのも当然のことだと思います。

ただ、自分の職業は変わっていないわけで、転職される方のほうがもっと大変なんじゃないかと思います。まあ、激動の2、3年ではありましたけどね(笑)。
新しいスタートに向けて、不安はなかったのでしょうか?
もちろん、なくはなかったです。でも、なるようになるかなと(笑)。

今まではグループに対してどう貢献するかを一番に考えてやってきたけど、新しい環境に行けば、新しい自分を表現できるのではないかという思いもあって。それは俳優としてはすごくいいことなんじゃないかと感じたんですよね。
とても前向きな気持ちだったということですね。
僕の性格的なところもあると思いますけど、前向きな気持ちのほうが強かったです。それでもたくさんの方に心配していただいたり、声をかけていただいたりして。それがなければ今の僕はいないと思うので、本当に感謝しています。

年齢にこだわらない気持ちはずっと変わらない

そのタイミングで『半世界』という作品と出会い、ご自身の中で変化はありましたか?
知らない世界が多すぎたなと思いました。ちょっとファンタジーの世界にいすぎたというか(笑)、世間を知っているようで知らなかったんだなと実感しました。
というのは?
今回の撮影は三重県の南伊勢でのオールロケで、現地に1ヶ月ほど滞在したのですが、そこで地元の方と触れ合ったりするのも僕にとっては初めての経験で。その土地に生き続けている人との出会い、そして演じた役を含めて、こういう世界もあるんだなと思いました。

僕が生きている芸能界というのは、ある意味、特殊な世界。だからこそ、紘のような市井の人たちの気持ちが理解できていないと、それを表現する資格はないなと。そういうことに気づけたのは、この作品のおかげだと思います。
監督の阪本順治さんは、撮影に入る前に必ず役者とふたりきりで話をするのを習慣にされているそうですが、今回もそのような機会はあったのでしょうか?
ありました。撮影に入る前というよりも、この企画をスタートさせる前にお会いしました。ふたりっきりでお話させていただいたんですが、そのときは『半世界』だけでなく、ほかの候補作品もあって。
ほかの候補も?
はい。ラブストーリーの企画もありました(笑)。でも、監督の中では最初から『半世界』でいきたいという思いがあったようで。たぶん監督は『半世界』の世界に僕がちゃんとハマれるかどうかを、その場で見て判断したかったんじゃないかと思います。
阪本監督は2013年に公開された映画『人類資金』で香取慎吾さんとも組まれていましたが、香取さんと、阪本さんのお話をされたりはしましたか?
以前から香取くんはよく阪本監督の話をしていました。彼は共演者や監督、スタッフとプライベートでそこまで仲良くするタイプではないのですが、阪本監督だけは別みたいで。ふたりでお酒を飲んだりする話も聞いていたので、めずらしいなと思っていました(笑)。

それは阪本監督が優しさに満ちあふれていて、不器用だけどウソがない方だからなのかなと。現場でも感じましたし、僕の中で阪本監督は、香取くんの父親のようなイメージがありました。
「40歳目前、あきらめるのは早すぎて、焦るには遅すぎる」という本作のキャッチコピー。稲垣さんは高村と同じ39歳のとき、どのような思いを抱えられていましたか?
僕は40歳を迎えるにあたって、そんなに心を動かされることはなかったですね。考える余裕もないぐらいに忙しかったというのもありますが、37、38歳ぐらいになると、ある程度覚悟ができるというか、気持ちの準備はできていた気がします。

もちろん、40歳が分岐点という考え方はわかりますが、僕自身はあまり年齢にはこだわってなくて。

今、僕は45歳ですけど、年齢にこだわらないという気持ちはずっと変わらないですね。ただ、プロフィールなんかで45歳と文字にされると、自分もそういう年齢になったんだと思うことはあります(笑)。

Twitterだからこそ、草なぎ剛と香取慎吾に伝えられることも

草なぎ剛さん、香取慎吾さんと一緒に『新しい地図』を立ち上げられてから、何か変わったことはありますか?
やはりSNSを始めたのが一番大きいですね。こうやってウェブ媒体の取材も受けられるようになりましたし、何より自分たちから発信できるようになったのはよかったなと。

応援してくださる方の声もリアルに届くし、それはネットの世界のスゴいところだと思います。
ファンの方の声が直接届くことで、意外な発見もあったのでは?
ありますね。ファンの方から見る自分で、新しい自分を知ったりとか、自分はこういうことを求められているんだなと思ったり。僕以上に僕のことをわかってくれている方が多いので、その発見はすごく面白いです。
たしかにSNSを始められる前の稲垣さんは、どこか神格化されたところがあったように感じたのですが、本当はすごく自然体の方なんだという驚きがありました。
神格化ですか?(笑)僕としては何も変わってないんですけどね。でも、こういう仕事の場合、少しぐらいベールに包まれている部分も必要なのかもとは思います。

とくにこれまでは守られている部分も多かったし、おっしゃるとおり神格化されていたのかもしれませんね(笑)。でも今はSNSを含めて、いいさじ加減で自分を表現できている気がします。
SNSで草なぎさん、香取さんとの交流が見られるのも、ファンとしてはうれしいと思います。
まあ、うわべの交流ですけどね(笑)。…というのは冗談ですが、Twitterだからこそ言えることもありますよね。実際、電話とかはほとんどしないですし、男同士というのもあって、直接話すのには照れもあるので。

でも、Twitterだと素直に祝福したりできるし、恥ずかしくないのでそこは本音でやっています。

載せるなら綺麗なものを。SNS更新のこだわり

Twitterやブログを更新するのは、スマホからですか? パソコンからですか?
すべてスマートフォンです。僕はパソコンをほとんど使わないので。
稲垣さんといえばワイン通で知られていますが、ワインを片手にTwitterやブログを書くこともあるのでしょうか?
ほとんどないですね。基本的には午前中に書くことが多いです。朝は脳が活性化しているので、SNSを更新するのも台本を覚えるのも朝ですね。

それにお酒を飲みながらSNSをやると失敗することもあるじゃないですか。それが怖いので、気をつけています(笑)。
稲垣さんのブログは、美しいお花の写真がとても印象的です。写真を撮るのがお上手だなといつも思うのですが、これまでにもやられていたのですか?
やってないです。でも、せっかく載せるなら、なるべく綺麗なものがいいかなと。
お花の写真というのにもこだわりが?
ブログをやっているわりに、あまり載せる写真がないんですよね(笑)。この年齢で自撮りをしすぎるのもおかしいし、草なぎくんのようにペットを飼っているわけでもないので、僕が載せるなら花だなと思って。

あとは毎週新しい花にしているのに、自分ひとりで見ているのはもったいないなと。僕のブログを読んでくれる人が花の写真を見て喜んでくれたり、元気になってもらえるんだったらうれしいなと思ってやっています。
言葉遣いもすごく丁寧で美しいですね。
なるべく自分のリアルな言葉しか伝えたくないし、自分が使わない言葉を無理して使ってもしょうがないかなとは思っています。

でも、SNSというのは自分を応援してくださっている方だけじゃなく、ほかの方も見られるので、そこは大人として気を遣っている部分はありますね。しかも、テレビと違って文章として言葉が残るので、短い文章の中でどう伝えるかは考えています。
改めてSNSを初めてよかったことを教えてください。
今までの僕はあまり人に興味がないところがあったのですが、SNSをやるようになって人への興味が高まってきた気がします。今のところはすごく楽しくやらせてもらっているので、これからも続けていきたいと思います。
稲垣吾郎(いながき・ごろう)
1973年12月8日生まれ。東京都出身。O型。1991年にデビュー。主なドラマ出演作品に、2004年からの『金田一耕助』シリーズ、2006年の『不機嫌な果実』(ともにフジテレビ系)など。映画出演作品は、2004年の『笑の大学』、初の悪役に挑み高い評価を得た2010年の『十三人の刺客』、オムニバス映画『クソ野郎と美しき世界』など。『No.9 ―不滅の旋律―』に主演するなど舞台でも活躍中。主演映画『ばるぼら』も公開を控えている。

出演作品

映画『半世界』
2019年2月15日(金)ロードショー
監督:阪本順治
出演:稲垣吾郎 長谷川博己 池脇千鶴 渋川清彦 ほか
http://hansekai.jp/
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