今年も旧正月の「春節」に、多くの中国人観光客が訪れた日本。安倍首相を始め、その官民挙げての「大歓迎ぶり」は中国でも好意的に受け取られているとのことですが、「注意が必要」とするのは台湾出身の評論家・黄文雄さん。一体なぜなのでしょうか。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』にその理由を詳しく記しています。

【中国】外国を知っても、中国人は中国を変えられない

● 東京タワー、「春節」カラーにライトアップ! 安倍首相も中国語で「明けましておめでとう」

2月5日は旧正月の新年ですね。新年快楽。皆さんのこの一年の幸福を願います。

さて、この機会に、安倍首相は中国語で新年の挨拶をしたり、東京タワーを赤く点灯して、中国カラーをアピールしたりと、日本政府は中国にすり寄っているようで、中国の気を引くのに一生懸命です。

昨年10月に日中首脳会談が行われ、先日1月28日の施政方針演説では「日中関係は正常化した」と安倍首相は発言。それもこれも、春節を利用した中国人観光客の誘致が主な目的なのでしょう。報道によれば、中国人の大型連休の旅行先人気ナンバーワンはタイで、日本は2位にランクインしているそうです。

経済的に多少の余裕がある中間層が増えたことで、中国人観光客が旅先で使う金額はなかなかのものです。以下、一例として報道を引用しましょう。

中国南部の広東省に住む30代女性の陳さんは今年の春節にあわせ家族4人で日本を訪問。9日間かけ東京や京都、静岡や川崎など7都市を周遊し、「買い物の予算は4万〜5万元(約65万〜約81万円)で、服や化粧品、薬などに使う」という。

● 中国、春節連休スタート 30億人移動、日本は人気2位

菅官房長官も、香港のテレビの単独インタビューで次のようなことを語っています。

菅氏は、中国人観光客が18年に初めて800万人を突破したことを「ありがたいこと」だと話し、増加する中国人観光客に対応するための人材確保の必要性を強調。留学生が卒業した後の在留資格を拡大する意向を示した。

● 菅長官の視線は「中国」に 香港テレビ「異例」インタビューに透けた本気度

河野外相も中国語で新年の挨拶をするなど、頑張っているだけに、中国でも安倍首相の中国語での挨拶は好意的に報道されたようです。

たしかに政治的に中国との関係をある程度正常化するのは必要なことなのでしょう。しかし、日本国民がどれだけ中国を信用しているのか、あるいは日本にとって中国は信用に足るだけの存在なのかということを、もう一度、国民に説明してもらいたいところです。

中国人観光客問題は、すでに皆さんご存知ように数多くあります。ホテルでの傍若無人ぶり、観光地でのゴミのポイ捨て、立ち入り禁止区域への立ち入り、行列への割り込みなどマナーの悪さは枚挙に暇がありません。

それでも、日本政府としては中国人観光客がもたらす経済効果は欲しいということなのでしょうか。厚生省の不正統計問題で、アベノミクスの真価が疑問視されていますが、むしろ世界的には、中国人観光客のリスクが表面化しています。

去年、スウェーデンのホテルで予約より1日早く到着し立ち去ろうとしなかった中国人を、警察が追い出したことで、政府間の対立となった事件は記憶に新しいところです。欧州は、いかに経済効果があっても中国人観光客はお断りというのが正直なところでしょう。

日本人もかなり中国人のマナーの悪さには辟易していながら、政府の思惑とは全く別に、観光地でも商店でも「いらっしゃるお客様には楽しんで頂きたい」と、中国人を排除せずに真摯に対応するあたりが日本人ならではの対応だと思います。

また、中国政府も中国人のマナーの悪さに対して、国内向けに注意喚起をするなど少しだけ努力しました。ネットでも、中国人間で中国人のマナーの悪さについて賛否両論が出たり、外国在住の中国人が中国人観光客の「旅の恥はかきすて」的行為を注意するといった姿もみられました。

私も有楽町で、中国人観光客が信号無視をして危険な状況だったのを見たビジネスマン風の中国人が、観光客に向かって「信号無視をするな!ここは日本だ!」と怒鳴っているのを目撃したことがありました。

このように、中国人がこうして世界に出ていくことによって、彼らの見聞は広がり、自己を見つめなおす機会となっていることも確かです。世界各国の観光地は迷惑千万ですが、中国人観光客が海外に出ていくことで、少しでも自らの愚行を恥じることができたら、それはとても意義のあることだと思います。

こうした人々が、中国国内で道徳的、民主的、普遍的な見方をする人々が声を上げるようになり、だんだんと中国政府とは違う風を中国内に吹かせることができたら、中国政府もいつまでもそれを抑え込むことはできなくなる、という考え方もあります。

これだけ国境が低くなり、人々が世界を知ってしまったら、いくら監視カメラやAIなどを駆使して監視社会をつくっても、彼らの声を抑え込むことはできず、政府のほうが国民に動かされていくようになる。そういうことを期待する向きもあります。

たしかにそのようになれば、素晴らしいことです。ただ、これまで欧米諸国も、中国に資本主義が根付いて人々が豊かになれば、民主化が広がると期待していました。ところが実際には、中国が豊かになることで共産党独裁が強まり、中国は覇権主義をむき出しにしてきました。

豊かになった中国人は自国を変えるのではなく、共産党と結びついてさらなる利権を貪るか、あるいは海外へ逃亡するか、その2つに1つで、中国を変えようという勢力にはなりえませんでした。

旧正月の「春節」は、中国人大移動の季節です。出稼ぎの人々が帰省するため、交通機関は人々の群れで押し合いへし合いとなり、死者がでることもあります。しかし、「春節」が過ぎると、すべてのことが一変します。それが中国の風物詩です。

国内外の観光地に中国人がどっと押し寄せるのは、この「春節」だけです。そして、疾風怒濤のように押し寄せた中国人が去った後は、ゴミの山だけが残ります。

中国人観光客の話になると、最近ではマナー違反が注目されていますが、そもそも中国人観光客が押しよせる国が決まるのは国の意向次第です。「春節」の旅行先は、極めて政治色が強く反映されるのです。台湾に対しても、民進党に所属する人物が市長になった地域には中国人観光客は行ってはいけないと中国政府が指示したこともありました。

台湾ではある中国業者が、中国人観光客のホテル、バス、買い物に至るまですべてを独占して扱うシステムがあります。しかし、中国というのは本当に先が見えない国です。日本のアパホテルが標的にされて、一時、客足が激減したこともありました。少しでも気に入らないことがあると、全員がそれに従って引き上げるのです。

ゼロか全部かのどちらかなのです。日本も中国人観光客目当てにすり寄ってばかりいて「捕らぬ狸の皮算用」をしていると、いつか痛い目を見るかもしれません。

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