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ソフトバンクグループは2月6日、2019年3月期 第3四半期の決算説明会を開催しました。しかし、これまでの決算説明会とは明らかに雰囲気が異なります。登壇したソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏が業績について紹介したのは、冒頭の数分のみ。孫氏は、「売上高や営業利益の数字は、たいした意味がなくなりました」と宣言します。

○孫正義は、カネの亡者か

ソフトバンク創業以来、最大の営業利益(Q1-Q3の連結業績で1兆8,590億円)を記録した今期でしたが、孫氏の関心はすでに別にある様子。「通信事業が独立し、ステージが変わりました。ソフトバンクグループは、事業を持たない純粋な持株会社になったのです」と語る孫氏は、高いところからグループ全体を眺め、細かい業績には一喜一憂しない……そんな余裕を感じさせます。

孫氏は、ソフトバンクグループの未来が「AI群戦略」(※)にあるとしたうえで、「AIの発達で世の中すべての産業が再定義される中で、その主流になりうる企業をおさえている」と熱弁。「事業を始めたばかりのころは、インターネットの入り口(黎明期)でお金が足りなかった。あのときもっと資金があれば、主要なインターネット企業を手にし(筆頭株主となり)、今ごろは世界一の企業になっていたでしょう。でも当時は500億円しかありませんでした。そしていま、AIによるパラダイムシフトで、もう1度チャンスが巡ってきたのです。今回は10兆円の投資資金があり、AIの入り口で主要な企業を片っ端からおさえています」と語りました。

※群戦略=戦略的な持株会社。孫氏が描くAI群戦略とは、AI技術を持つユニコーン企業に、20%〜30%をスイートスポットとして出資し、各社がシナジーを出し合うことを理想としています。

孫氏は、「孫正義は、カネの亡者か。そうではありません。個人で使えるお金は充分あり、もう使い切れないでしょう。残りの人生で、生まれてきた価値を見出したい。それこそ情報革命で人々を幸せにする。創業以来、ずっと口にしてきたことです。ここに残りの人生を賭けます」と決意の表情をのぞかせました。

○ファーウェイ問題、どう見る

孫氏は決算説明会の終了後、質疑応答で記者団の質問に回答していきました。アメリカで、ファーウェイの通信機器を排除する動きがあることについてどう思うか聞かれると、「アメリカと中国の間で貿易や政治的な摩擦が大きくなっています。(貿易では)これまでアメリカがずっと世界一でしたが、中国が急激に伸びてきたために摩擦が起きているんですね。充分にコミュニケーションをはかってお互いの不満をしっかり言い合い、納得いくような妥協点が見つかれば、いずれ収まってくると信じています。かつて、日本とアメリカも大きな貿易摩擦がありました。でもいまは悪い仲じゃない。(国や市場が)急速に伸びるとき、古い枠組みや考え方は一時的に摩擦を起こすものなんです」と答えます。

通信事業を担うソフトバンクが、ファーウェイのインフラ機器を使っていることについては、「ファーウェイの機器をたくさん使っているので、これらを取り替えることになったら資金負担になるのでは、と周囲から聞かれることがあります。通信のコア部分から、情報が漏洩することは理論的にあり得る。ですが、仮にすべて置き換えても50億円くらいのワンタイム費用で済むので、経営の負担にはなりません」との見方を示しました。

○世界の90%のユーザーは手の中に

AIによる自動運転車の展望について聞かれると、「自動運転車をまっ先に買うのは誰か。自動運転車はスーパーコンピューターの塊で、スーパーカーなんかよりはるかに価格が高い。だから、なかなか個人では購入できないでしょう。業務で使うタクシーやライドシェアの企業が買います。世界の90%のユーザーは、ソフトバンクグループ会社のサービスを使うはず」と回答。自動運転の競争は始まったばかりですが、自動運転を活用する企業をすでに多く抱えているソフトバンクグループの強みを改めて強調します。

○いつ社長を引退するの?

今後も社長を続けていくのかという質問に、孫氏は、「19歳のとき、69歳まではやると決めました。その歳になったら、CEOとして残るのか、会長としてCEOに業務を任せるのかを判断したい。投資が中心となったソフトバンクグループでは、365日ずっと業務が忙しいということもなくなってくると思います。次の経営陣にバトンを渡す体制作りの時間もとれるのではないでしょうか」と話します。……が、こうも続けます。「医療も進んでいます。そしてわたしはかなり元気でございます。やる気いっぱい、夢いっぱい。できるだけがんばっていきたい」。一生現役の宣言にも聞こえるこのセリフ。今後も孫氏の活躍に期待したいところです。