言葉に重みはない(日銀の黒田総裁)/(C)共同通信社

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 日銀は先月の金融政策決定会合で、これまで1.4%としていた2019年度の物価見通しを0.9%と大幅に引き下げた。

景気は停滞し原油下落なのに 値上げラッシュはなぜ起きる

 日銀はデフレ脱却に向け2%の物価上昇実現を目標に掲げているが、さらに遠のいた。昨年後半からの原油安を受けた物価の下振れが要因だ。黒田総裁は、緩和手段に関し「対応策がなくなったということはない」と強調したが、まったく重みはない。言い訳ばかりだから“総裁発言”のインフレが起きている。

「6年近くの異次元金融緩和が消費や投資を喚起しない中、日銀の物価見通しは、自らが打った金融政策の結果の検証という感じではなくなっています。原油価格に一喜一憂して、物価の推移を見守るだけのものになっています」(金融関係者)

 この先、携帯料金の値下げや幼児教育の無償化が見込まれ、物価目標はいっそうお飾りのようになるが、黒田総裁が目標の旗を降ろすことはないとみられる。自らの政策の誤りを認めることになるからだ。

 つまり、引き続き、原油価格の動向を注視し、物価見通しの推移を見守りつつ、目標だけは掲げる状態が続くのである。どうせ形骸化した目標なのだから、掲げたままでも特段、害はないようにも思えるが、とんでもない。

「日銀の物価目標は、値上げを実施する企業にとって、とても心強いメッセージになっています。何せ、国を挙げて“値上げ=いいこと”と血眼になって大キャンペーンを展開してくれているわけです。消費者には心苦しくても、値上げはやりやすい」(経済誌記者)

 春から実施の値上げは久方ぶりが目立つ。塩事業センターの食塩やコカ・コーラボトラーズジャパンの大型ペットボトル飲料は27年ぶり。サントリーのウーロン茶などペットボトル入り飲料は21年ぶり。味の素の家庭用のコンソメと食塩は11年ぶりだ。

「最近の値上げは原料費や物流費を理由にしていますが、原料事情はもっと厳しいときもありました。そのときは据え置いて今、値上げを強行できるひとつの要因は、日銀の物価上昇目標が企業の値上げマインドを下支えしているからです。形骸化している目標数値ですが、中央銀行の目標というのは社会的には大きな意味を持っているのです」(前出の経済誌記者)

 黒田総裁のメンツのために掲げられ続ける物価目標は、懐を直撃される庶民にとっては迷惑千万。日銀は、物価推移を黙々と見守るにとどめ、余計なことはしないでほしい。