防衛大学校(神奈川県横須賀市)で「指導」と称して繰り返し暴行、いじめを受けたとして、福岡県内の元男子学生(24)が当時の上級生や同級生8人に慰謝料など計1400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が5日、福岡地裁であり、足立正佳裁判長は7人に計95万円の支払いを命じた。

 原告の元学生は1、2年生だった2013年6月から14年5月、上級生らから指導の名目で殴る、蹴るなどの暴行を受け、消毒用アルコールで体に火を付けられたこともあったと主張。様子の一部は撮影され、遺影のように加工した写真を無料通信アプリ「LINE(ライン)」に投稿されている。元学生は14年8月から休学。重度ストレス反応と診断されて15年3月に退校した。

 上級生らは指導の一環だったなどとして、請求棄却を求めていた。

 判決で足立裁判長は、上級生らによる暴行や嫌がらせを認定し「原告を精神的に追い詰め、指導としては適切な範囲を逸脱している」とした。一方、集団的ないじめが原因で体調を崩したとの原告側の主張については、「各被告の嫌がらせ行為に関連性は認められない」として退けた。

 ロッカーを揺らし声を荒らげて指導したとされる上級生1人については「指導の方法として不適切だが、損害賠償を基礎づける違法性は認められない」と述べた。

 原告の男性は、国に対して約2300万円の損害賠償を求めた訴訟を起こしており、年内に判決が言い渡される見通し。

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下級生への嫌がらせ、4年生57%「やった」

 今回の訴訟では防衛大のいじめや暴力に関するアンケート結果も示され、下級生への嫌がらせが横行している実態が明らかになった。原告の男性は判決後に記者会見し「防衛大は自分のような学生を一人も出さないように変わってほしい」と訴えた。

 裁判や家族によると、男性は災害救援に当たる自衛隊の姿を目の当たりにし、自衛官になることを決めた。2013年春に防衛大に入校したが、さまざまな嫌がらせに苦しんだ。上級生は、下級生のミスや不手際を「粗相ポイント」として加算。男性は風俗店で女性と写真を撮影するよう強要され、拒否すると体毛に火を付けられたという。

 男性への暴行問題を受け、防衛大は14年に在校生約1800人にいじめの有無などに関するアンケートを実施した。弁護団が入手し、裁判で示したアンケート結果では、4年生の57%が「粗相ポイント」によるいじめを「やった」と回答。2〜4年生の約半数が「やられた」と答えていた。

 また、弁護団が入手した07年4月〜16年7月の防衛大生の懲戒処分台帳によると、暴力や強要など私的制裁による処分が74件、窃盗や詐欺など刑法犯相当としての処分が135件に上った。合算した処分数は、同時期の防衛大生への懲戒処分全体の約4割に当たる。弁護団は「悪質さの程度が常識を超えている」と批判し、防衛大生に根強い「いじめ体質」を指摘した。

 訴訟では、被告8人のうち7人は現在自衛隊の幹部になっている。男性は「自分にしたようなことを二度と繰り返さないでほしい」と強調した。

=2019/02/06付 西日本新聞朝刊=