アンケートには「ひみつをまもります」と(C)共同通信社

写真拡大

 なぜ虐待父に渡したのか――。多くの国民が千葉・野田市教育委員会の処置に不信感を抱いているはずだ。

5歳女児虐待の教訓 「警察・児相・自治体」どう使い分ける

 同市の小学4年生だった栗原心愛さん(10)が自宅で死亡した事件で、市教委の担当者らが父親の栗原勇一郎容疑者(41=傷害容疑で逮捕)に、心愛さんが書いた学校アンケートのコピーを渡していた。

 心愛さんは一昨年11月、学校のアンケートで「お父さんにぼう力を受けています」「先生、どうにかできませんか」とSOSを送っていた。だが、昨年1月、学校と市教委は父親と三者会談を持ち、父親は「暴力はしていない」「訴訟を起こす」と激しく抗議。すると、3日後に市教委の担当課長らが教育長の許可もなく、独断でコピーを渡したのだ。

 娘の「告発」を知った親がさらに、つらく当たるのは容易に想像できる。当事者の担当課長は会見で、栗原の態度に恐怖を感じ、「(渡すことで)安心感があった」と弁明したが、そんな父親なら、なおさら虐待リスクが高いと判断すべきだ。

■「ひみつをまもります」の言葉を信じて告白

 虐待父に屈した担当課長らは罪に問われないのか。

「考えられるのは地方公務員法34条の守秘義務違反です。先日、麻布警察署の巡査部長がデータベースの情報を暴力団関係者に提供して書類送検された事件と同じ立て付けです。野田市の警察が市教委の担当者を捜査するかは微妙ですが、市に1000件近い抗議電話が入っているように、警察に捜査を要請する声が集まれば警察も内偵を始め、検察庁の意見を聞いて送検するかを決めると思われます」(元検事で弁護士の落合洋司氏)

 警察が手をこまねいても、心愛さんの親族や市民団体が刑事告発することが考えられる。その場合、検察が起訴するかの決め手のひとつがアンケートの秘密性だ。

 市教委の担当者は、父親が心愛さんが書いたとされる同意書を持参したため、コピーを渡したと説明したが、アンケートには「ひみつをまもりますので、しょうじきにこたえてください」との断り書きがある。心愛さんはこの言葉を信じて父親の暴力の実態を告白したと考えられるのだ。

 全国紙も社説で市教委側のずさんな対応を批判しているが、同意書がどのような内容であれ、コピーを渡したことが適切な判断だったとは言い難い。

「心愛さんの母親が、父親はアンケート内容を知って虐待を強めたなどと証言すれば情状面での責任が重いと判断され、検察が起訴する公算が高まります。34条の罰則は『1年以下の懲役または50万円以下の罰金』。検察が懲役6カ月程度を求刑するのではないかと思われます」(落合洋司氏)

 決め手は捜査機関への市民の声。第二の心愛さんを出してはならない。