読売の「初めて」報道で、iPodテレビ局が困惑
2006年01月01日12時07分 / 提供:PJ
2005年10月25日にPJが書いた「iPodがテレビに変わる日」で取材したPodTVが、読売新聞による「初めて」報道でユーザーの信頼を失いかけている。
PodTVを運営するメディアエンジンは05年10月17日、「世界初のiPod向け専門テレビ局」と報道発表。4日後の10月21日からは平日の毎日、オリジナルコンテンツの映像配信している。そのリリースは、ライブドア・ニュースだけでなく、CNET JapanやZD Net Japan、INTERNET Watch、japan.internet.comなど、多くのニュースサイトやIT専門サイトでも報道され、PodTVが「世界初のiPod向け専門テレビ局」ということは、疑いようもない事実となっていた。
しかし、11月1日に大和証券グループ本社が大和証券メディアネットワークスと共同でリリースした「日本初ビデオポッドキャスティングによる証券映像ニュース配信の開始について」をニュースソースにしたと思われる記事が、そのリリースから1カ月以上も経った05年12月5日付の読売新聞朝刊に掲載された。「iPod向け TV番組配信 大和証券」というその新聞記事に、「iPodは(05年)10月に発売された新機種で動画が見られるようになったが、iPod向けにテレビ番組を毎日配信するのは初めて。」と記されており、「世界初」のPodTVを運営するメディアエンジンにはユーザーなどからの問い合わせが相次いでいるという。
メディアエンジンは12月10日付で自社サイトに「12月5日付読売新聞の報道についての弊社見解」というリリースを掲載した。それには「読売新聞の報道は誤り、もしくは著しい説明不足であると考えています。」と書かれている。読売新聞の「初めて」報道でどんな問題が生じたのか、渦中のメディアエンジン内田社長に聞いた。
読売新聞A記者とメディアエンジン内田社長のやりとり
−読売新聞の今回の報道はどのように知ったのでしょうか。
「知り合いの制作会社の人間から聞かされたのが最初です。『内田のやっている新規事業について間違った記事が出ているよ』という事でした。その時は、読売がミスをするはずないと思っていました。うまい表現で逃げながら記事を書くのはよくあることなので。しかし、その後もユーザーなどから問い合わせが続き、新聞を手にして驚きました」
−問題の記事を見て、どうしましたか。
「これはなんとかしなければと思い、夜中になっていましたが、12月6日未明直ぐに読売新聞に電話をしました」
2005年12月6日時点での、読売新聞と内田さんのやりとりをまとめると以下のようになる。
■12月6日午前0時8分:記事を確認。深夜なので、代表で案内があった社会部に電話。担当から折り返し連絡させるとのこと。
■12月6日午前1時50分:経済部A記者から電話。誤った報道でクレームが出ていて困っている、と伝える。調べて折り返しする、と約束。経済部の電話番号を教えてもらう。
■12月6日:連絡なし
■12月7日:連絡なし
■12月8日午後5時29分:経済部に催促の電話。A記者が他の電話に出ているため、折り返しするとのこと。報道が誤っていて困っているので早く折り返して欲しい旨を伝える。
■12月8日午後6時30分ごろ:A記者から電話あり。読売の記事は間違っていない、と返答。
−読売のA記者の言う「読売の記事は間違っていない」とはどういうことでしょうか。
「『テレビ番組とは(電波などを使って)放送された番組』という主張でした。では、『PodTVの"世界初"は間違っているのか?』と聞くと、『それも間違っていない』という返事でした。『どちらが正しいのか?』と聞くと、記者は答えに窮していました。しかも、A記者は自らがこの記事を書いたわけではなく、書いた記者はアップルや大和証券にも取材して記事を書いた、というのです。なぜ書いていない記者がわざわざ説明する必要があるのでしょうか?」
−「テレビ番組」の定義に相違があるということですね。
「"テレビ放送"や"放送番組"という事だったら私も納得できるのですが、記事は"テレビ番組"となっています。これは明らかに間違いであると私は思います。弊社の信用を揺るがす、重大な事件だと思いました」
−ニュースソースと思われる大和証券のリリースには「日本初ビデオポッドキャスティングによる証券映像ニュース配信」とありますが、これは内田さんから見ると、間違っているのでしょうか。
「大和証券のリリースは、"証券映像ニュース"と限定して書いてありますので、間違いないと思います」
−では、やはり読売新聞の記者による報道に誤りがある、と。
「限られた紙面の中で多くの事実を伝えなければいけない新聞の難しさは私にも分かります。しかし、間違っていないと開き直られてしまうと、これは大変な事になります。一旦記事になってしまえば、それが縮刷版になり、データベースとして後々まで『事実』として残ってしまいます。それだけはやめて欲しい、というのが私の願いです」
−自社サイトで見解をリリースされたわけですが、今後さらに何か対応は考えておられますか。
「こちらの報道被害をなんとか回復して欲しい、と読売新聞側には伝えました。しかし、『報道被害だって?』と鼻で笑われてしまいました。今は向こうから返事を待っている段階ですが、誠実な対応をしてもらえるとはとても思えません」
ネットのニュースサイトの報道は、信頼できる報道にはならない!?
PodTVが世界初のiPod専門テレビ局である、という報道は読売新聞も含めた一般紙には掲載されなかった。しかし、リリースの翌日にはネット上の多くのニュースサイトを中心に報道されているのだ。どれもネットの世界では多くのアクセスがあるポータルサイトに記事を配信しているニュースサイトであり、IT関連の専門記事を書く記者が書いている記事は、専門的な情報にも配慮されている。
一方、読売新聞の記事はというと、ネットでは中部発のIT社会のニュースとして掲載されている。その読売紙面では、アップルとソニーの音楽プレーヤーについての大きな記事の下に掲載された小さな記事だが、何故この時期に?という疑問を持たずにはいられない。発表リリースから1カ月も経てば、「初めて」の報道をするための事実関係の調査も容易にできたはずだ。記者はアップルや大和証券にも取材して記事を書いたらしいが、ネットで検索すればPodTVの存在は容易に分かったろうし、その認識があれば、記事の書き方に工夫があってもよかったはずだ。
一連の流れを総合すると、読売の記事は、その記者が大新聞の影響力を深慮せずに、やっつけ仕事感覚で出てきたような気がしてならない。それはA記者が「報道被害」を鼻で笑う姿勢からもうかがい知ることができる。大新聞社からするとちっぽけな事態かもしれないが、資金力も影響力もなく、必死にがんばっているベンチャー企業にとっては重大問題である。
大和証券グループ本社広報部に11月1日付のプレスリリースにつきPJが確認したところ、「弊社では、PodTVが『世界初のiPod向け専門テレビ局』と報道されていたことにつきましては認識した上で、ビデオポッドキャスティングによる”証券映像ニュース”の配信については、弊社のサービスが日本初である旨のリリースを公表致しました」とコメントした。
今回の記事について、読売新聞東京本社広報部はPJに対し「ご指摘の記事に誤りはないと考えており、当社としてコメントすることはありません」とコメントした。【了】
PodTVを運営するメディアエンジンは05年10月17日、「世界初のiPod向け専門テレビ局」と報道発表。4日後の10月21日からは平日の毎日、オリジナルコンテンツの映像配信している。そのリリースは、ライブドア・ニュースだけでなく、CNET JapanやZD Net Japan、INTERNET Watch、japan.internet.comなど、多くのニュースサイトやIT専門サイトでも報道され、PodTVが「世界初のiPod向け専門テレビ局」ということは、疑いようもない事実となっていた。
しかし、11月1日に大和証券グループ本社が大和証券メディアネットワークスと共同でリリースした「日本初ビデオポッドキャスティングによる証券映像ニュース配信の開始について」をニュースソースにしたと思われる記事が、そのリリースから1カ月以上も経った05年12月5日付の読売新聞朝刊に掲載された。「iPod向け TV番組配信 大和証券」というその新聞記事に、「iPodは(05年)10月に発売された新機種で動画が見られるようになったが、iPod向けにテレビ番組を毎日配信するのは初めて。」と記されており、「世界初」のPodTVを運営するメディアエンジンにはユーザーなどからの問い合わせが相次いでいるという。
メディアエンジンは12月10日付で自社サイトに「12月5日付読売新聞の報道についての弊社見解」というリリースを掲載した。それには「読売新聞の報道は誤り、もしくは著しい説明不足であると考えています。」と書かれている。読売新聞の「初めて」報道でどんな問題が生じたのか、渦中のメディアエンジン内田社長に聞いた。
読売新聞A記者とメディアエンジン内田社長のやりとり
−読売新聞の今回の報道はどのように知ったのでしょうか。
「知り合いの制作会社の人間から聞かされたのが最初です。『内田のやっている新規事業について間違った記事が出ているよ』という事でした。その時は、読売がミスをするはずないと思っていました。うまい表現で逃げながら記事を書くのはよくあることなので。しかし、その後もユーザーなどから問い合わせが続き、新聞を手にして驚きました」
−問題の記事を見て、どうしましたか。
「これはなんとかしなければと思い、夜中になっていましたが、12月6日未明直ぐに読売新聞に電話をしました」
2005年12月6日時点での、読売新聞と内田さんのやりとりをまとめると以下のようになる。
■12月6日午前0時8分:記事を確認。深夜なので、代表で案内があった社会部に電話。担当から折り返し連絡させるとのこと。
■12月6日午前1時50分:経済部A記者から電話。誤った報道でクレームが出ていて困っている、と伝える。調べて折り返しする、と約束。経済部の電話番号を教えてもらう。
■12月6日:連絡なし
■12月7日:連絡なし
■12月8日午後5時29分:経済部に催促の電話。A記者が他の電話に出ているため、折り返しするとのこと。報道が誤っていて困っているので早く折り返して欲しい旨を伝える。
■12月8日午後6時30分ごろ:A記者から電話あり。読売の記事は間違っていない、と返答。
−読売のA記者の言う「読売の記事は間違っていない」とはどういうことでしょうか。
「『テレビ番組とは(電波などを使って)放送された番組』という主張でした。では、『PodTVの"世界初"は間違っているのか?』と聞くと、『それも間違っていない』という返事でした。『どちらが正しいのか?』と聞くと、記者は答えに窮していました。しかも、A記者は自らがこの記事を書いたわけではなく、書いた記者はアップルや大和証券にも取材して記事を書いた、というのです。なぜ書いていない記者がわざわざ説明する必要があるのでしょうか?」
−「テレビ番組」の定義に相違があるということですね。
「"テレビ放送"や"放送番組"という事だったら私も納得できるのですが、記事は"テレビ番組"となっています。これは明らかに間違いであると私は思います。弊社の信用を揺るがす、重大な事件だと思いました」
−ニュースソースと思われる大和証券のリリースには「日本初ビデオポッドキャスティングによる証券映像ニュース配信」とありますが、これは内田さんから見ると、間違っているのでしょうか。
「大和証券のリリースは、"証券映像ニュース"と限定して書いてありますので、間違いないと思います」
−では、やはり読売新聞の記者による報道に誤りがある、と。
「限られた紙面の中で多くの事実を伝えなければいけない新聞の難しさは私にも分かります。しかし、間違っていないと開き直られてしまうと、これは大変な事になります。一旦記事になってしまえば、それが縮刷版になり、データベースとして後々まで『事実』として残ってしまいます。それだけはやめて欲しい、というのが私の願いです」
−自社サイトで見解をリリースされたわけですが、今後さらに何か対応は考えておられますか。
「こちらの報道被害をなんとか回復して欲しい、と読売新聞側には伝えました。しかし、『報道被害だって?』と鼻で笑われてしまいました。今は向こうから返事を待っている段階ですが、誠実な対応をしてもらえるとはとても思えません」
ネットのニュースサイトの報道は、信頼できる報道にはならない!?
PodTVが世界初のiPod専門テレビ局である、という報道は読売新聞も含めた一般紙には掲載されなかった。しかし、リリースの翌日にはネット上の多くのニュースサイトを中心に報道されているのだ。どれもネットの世界では多くのアクセスがあるポータルサイトに記事を配信しているニュースサイトであり、IT関連の専門記事を書く記者が書いている記事は、専門的な情報にも配慮されている。
一方、読売新聞の記事はというと、ネットでは中部発のIT社会のニュースとして掲載されている。その読売紙面では、アップルとソニーの音楽プレーヤーについての大きな記事の下に掲載された小さな記事だが、何故この時期に?という疑問を持たずにはいられない。発表リリースから1カ月も経てば、「初めて」の報道をするための事実関係の調査も容易にできたはずだ。記者はアップルや大和証券にも取材して記事を書いたらしいが、ネットで検索すればPodTVの存在は容易に分かったろうし、その認識があれば、記事の書き方に工夫があってもよかったはずだ。
一連の流れを総合すると、読売の記事は、その記者が大新聞の影響力を深慮せずに、やっつけ仕事感覚で出てきたような気がしてならない。それはA記者が「報道被害」を鼻で笑う姿勢からもうかがい知ることができる。大新聞社からするとちっぽけな事態かもしれないが、資金力も影響力もなく、必死にがんばっているベンチャー企業にとっては重大問題である。
大和証券グループ本社広報部に11月1日付のプレスリリースにつきPJが確認したところ、「弊社では、PodTVが『世界初のiPod向け専門テレビ局』と報道されていたことにつきましては認識した上で、ビデオポッドキャスティングによる”証券映像ニュース”の配信については、弊社のサービスが日本初である旨のリリースを公表致しました」とコメントした。
今回の記事について、読売新聞東京本社広報部はPJに対し「ご指摘の記事に誤りはないと考えており、当社としてコメントすることはありません」とコメントした。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 國分 裕之
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