ノッポさんのゾンビ化も話題。ドラマ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』が問いかけるものは?

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 とある地方都市を舞台に、ゾンビが発生したことで浮き彫りになる人間模様を描いたドラマ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(土曜23:30〜 NHK総合)が話題を呼んでいます。

 主人公のタウン誌ライター・小池みずほ(石橋菜津美)は、高校時代の同級生であるスナック店員・君島柚木(土村芳)と地元建設会社の事務員・近藤美佐江(瀧内公美)のアラサー女子3人で共同生活をしていました。

 しかしそんなある日、突然ゾンビが発生。静かだった町が少しずつゾンビに侵食されていきます。

 別居中の夫・智明(大東俊介)から離婚を迫られ、半ば自暴自棄になっていたみずほは、コンビニでゾンビに襲われ死を受け入れますが、ギリギリのところで「死にたくない」と思い、ゾンビを全力で押しのけます(第1話)。

 智明と不倫していた美佐江は辛うじてラブホテルから脱出するも、駆け込んだコンビニでみずほと鉢合わせ。みずほに問い詰められた智明は逆ギレ、離婚を迫る美佐江にみずほは「離婚は自分のタイミングでする」と感情を爆発させます(第2話)。
 そうしているうちにもゾンビは刻々と増殖を続けますが、パニック要素を極力排除し、人々の変わらない日常を淡々と、時にコミカルに綴るスタイルは、花澤健吾『アイアムアヒーロー』や相原コージ『Z-ゼット-』を彷彿(ほうふつ)させる趣きです。

◆ゾンビに負けないくらい個性的なキャストたち
 ヒロイン・みずほを演じる石橋菜津美は、92年生まれの26歳。FODおよびNetflixで今年配信予定のドラマ『夫のちんぽが入らない』で主演も務めており、今注目の若手女優です。主人公のみずほの複雑な内面を、抑えた表情とモノローグで見事に表現しています。

 他のキャストもユニークです。ミュージシャンで俳優の渡辺大知、往年の大ヒット曲『ボヘミアン』を歌った葛城ユキに加え、三又又三や鈴木拓といったマニアックな芸人もゲスト出演。ほかにも壊れゆく町の様子を記録するYouTuberや、無駄にワイルドなピザ屋など、それぞれのキャラが今後どう入り乱れていくか楽しみです。

 また、ドラマのプロモーションとして、70年から90年まで放送された伝説の子ども向け番組『できるかな』のノッポさんが、ゾンビで29年ぶりに復活したことも話題になりました。

 なお、2月2日(土)17:00から第1話と第2話の再放送があるので、まだ観てない方はぜひこの機会に見ることをオススメします。

◆「生きる意味」を問いかける血の通ったドラマ
 フォーマットからゾンビドラマの切り口で語られがちですが、本作でゾンビはあくまでスパイスにすぎません。むしろタイトル後半にある「人生を見つめ直す」ことのほうが大事なテーマであり、私たちが考えるべきメッセージなのです。

 つかめそうでなかなかつかめない夢、ついつい後回しにしてしまう決断、挫折でくじけてしまった心、わかっていても動き出せないもどかしい自分……それらの思いを抱えてながらかろうじて生きている私たちも、見方を変えればゾンビとそんなに変わらないのではないでしょうか。

 そう考えると、忙しい毎日の中、時としてまるでゾンビのように彷徨(さまよ)う私たちに、「あなたが“執着”するものは何ですか?」「あなたが生きる目的は何ですか?」と、静かに問いかけ、励ましているようにすら思えるのです。

 このドラマは「ゾンビ」という非日常を通じ、登場人物たちだけではなく、見ている私たちの日常や内面深くにある感情をえぐりだす、思い切り血の通ったヒューマンドラマなのです。

<文/中村裕一>

【中村裕一】
Twitter⇒@Yuichitter