テレビ局買収劇を舞台に、「カネ」の問題を新機軸で描くドラマ「新しい王様」(写真提供:©TBS)

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 テレビ局買収を舞台に「おカネとは何か?」を問いかけるドラマ「新しい王様」が話題になっている。
 1月にTBSでSeason1(全8話)が放送され、現在は動画配信サービス・ParaviでSeason2(全9話、毎週木曜)が配信中だ。
 主演の藤原竜也と共演の香川照之らの熱量あふれた芝居と胸に突き刺さるセリフ、さらに2000年代に社会を騒然とさせた外資系ファンドによる敵対的TOB(株式公開買い付け)や 企業買収を彷彿とさせる内容に、当事者の一人だった堀江貴文氏も「やばいくらい面白くて毎日見てしまってる(あ、私は配信で見てますが)」とツイッターでつぶやくほどだ。
 ドラマは、かつて大型買収を仕掛けて世間を騒がせたが、現在は居候生活を送り、所有することに執着しない自由人・アキバ(藤原竜也)を主人公に、カネの力で人を支配し、欲望をみなぎらせる投資ファンドの社長・越中(香川照之)とテレビ局の買収を巡って、虚々実々の駆け引きを繰り広げるストーリー。
 プロデュース・脚本・演出を担当した山口雅俊氏は「特定のモデルはいません。あくまでフィクションです」と断言する。
「よく世間では『おカネが全てじゃない』『おカネよりも大事なものがある』と言うけど、呪文のような空言でまったく響かない。
本当にそうなのか? もしそうならば、誰かが具体的な例で説明するべき。だったら僕が物語として説明できないかと、10年ほど前から構想を練っていた」と作品への並々ならぬ思いを明かす。
◆MBA取得の異色プロデューサー
 山口氏は学生時代に米・コロンビア大学でMBA(経営学修士)を取得し、フジテレビ入社後にドラマプロデューサーの道を歩み、独立して自ら映像企画会社を立ち上げた異色の経歴の持ち主。
 これまでにドラマ「ナニワ金融道」(1996年〜2005年)、「カバチタレ!」(2001年)、「闇金ウシジマくん」(2010年〜16年)シリーズなど、カネをテーマにした作品を世に送り出してきた。
「最初におカネのことをテーマに扱った作品は『ナニワ金融道』。“どんなカネでも、カネはカネだ”といったセリフの力強さ、青木雄二さんの原作がとにかく優れていた。
 しかし、その街金が牧歌的に見えるほど時代は変わり、今度は『闇金ウシジマくん』みたいなのが現れた。『ナニワ金融道』の主人公・灰原は視聴者と同じ目線で悩みながら成長していったが、ウシジマはゴジラみたいにただ前進して破壊するだけ。
 まったくブレない怪物なんだけど、ウシジマに追い込まれる周囲の姿からおカネの力や怖さは描けた」とこれまでの作品を振り返る。
「でも、さらに時代は複雑になった。おカネ以上に情報も独占される時代になり、自覚されない格差も生まれてきた。もはや誰も説明しようとしないし、そういう原作もない。だったら“大人向けの童話”としてオリジナルで作ってみようと。だからタイトルも童話っぽく『新しい王様』にしました」
 社会の変化だけでなく、2007年に放送されて話題となったNHKドラマ「ハゲタカ」への興味も構想の出発点になった。
「放送中の大河ドラマ『いだてん〜オリムピック噺』を作っている訓覇圭さんが制作したドラマですが、ものすごく面白かったので、訓覇さんチームに会いに行ったんです。
 ただ一方で、荘厳に描かれているけど、実際の資本市場のプレイヤーたちはあんなに立派な人たちなのかな。もっと愚かで過激な人たちなんじゃないのかとも感じていたんです。訓覇さんに思わず『僕がもっと笑えて面白い“ハゲタカ”を作りますよ』と宣言してしまった(笑)」
 リアルさで“ハゲタカ超え”を狙った今作では、カネに対するさまざまな価値観をユーモアと皮肉をたっぷり織り込んだ。主人公のアキバと越中以外も、カジノに会社の金をつぎ込んでしまった老舗企業の跡継ぎ社長、有名女優との海外旅行がマスコミに騒がれるIT企業社長など、どこかで見聞きしたようなクセの強いキャラクターばかり。脇役たちのカネを巡る生き様も見どころだ。